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September 28, 2020
September 28, 2020
Hands-On HYT H1.0 ブラック

Hands-On HYT H1.0 ブラック

時の流れを読み解く。

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HYTは2012年から、腕時計のメカニックやデザインに液体を取り入れることに並々ならぬ力を注いできた。彼らの代表作であるH1.0(エイチ・ワン・ゼロ)は、黒い液体を「スーパールミノバC7」の色を用いて時間を表示するもので、それを、温度補正器、ホウケイ酸ガラス製キャピラリーチューブを駆使した非常に複雑なムーブメントが支え、従来の機械式時計の輪列、レバー脱進機、そしてテンプが時計の精度と動力伝達を担っている。

 高級時計メーカーの中には、印象的で新しい時間の伝え方をする時計を自由に作り上げるメーカーも存在する。デザインは純粋に機能的である必要はなく、もっといえば、意味をなす必要すらないのだ。時刻表示は、デザイナーたちがこれでいいのだと思うやり方で表されれば良い。時計の存在理由は、シンプルで、答えはそんなものである。

 H1.0は、トゥールビヨンやジャンピングセコンドのような過去の技術革新を取り入れるようなやり方をしない。その代わりに同社は、クロックが液体を動力としていたイデオロギー的な時刻表示に立ち戻り、近未来的な時計を生み出している。哲学的に理解するには難しいマシンだが、いったんその時計と705万円(税抜)という値札に近づいてみさえすれば、その醍醐味が分かり始めるのだ。見てみよう。

 「メカニカルアート」は、もともと芸術品として設計された時計ではなく、どちらかといえばただ時間を見るために作られた腕時計を表現するときの、頼れる言葉だ。しかしH1.0は違うのだ。見る側が「なぜ?」や「どのように?」という質問をしないわけにはいかないように作られたものだ。アーサー・C・クラーク(20世紀を代表するイギリスのSF作家)が、サイエンスフィクションを執筆した世界で展開された有名な「法則」がひとつある。「十分に発達したテクノロジーは、マジックと見分けがつかない」という言葉だ。H1.0にはまさにこの言葉が当てはまる。その意味で、これは私がこれまで装着したことのある腕時計の中でも、最も芸術作品に近いといっていいものだと思える。

 では実際にどのように機能するのだろうか。高度な技術は置いておいて、その核心を暴いていこう。イメージしやすくするためにゼンマイ、テンプ、脱進機が、仮に発明されなかったと考えていただきたい。HYTは、従来の時計製造技術のいくつかを使用してはいるが、ここではテクノロジーが存在しなかったとしておきたい。もし我々が、古代の水時計に、何百年にわたってデザイン改良を施して彼らの論理的結論に従うとしたら、なにがしかの液体と、時を表示する目盛りを使った、腕に着けられるほど小さなものに行き着くかも知れない。それにはほぼすべての初期文明で見られる古代の時計のように、重力を動力として使う代わりに、重力の影響を実際に克服するための設計がなされる必要があるだろう。

 そしてそれは、液体に圧力をかけ、その速度を制御することで実現するのだ。これがH1.0を含め、すべてのHYTの時計の基本的な機能である。ただし彼らは、水圧システムと併せてもっと伝統的な時間計測のやり方を組み入れることで、蒸気機関よりのデザイン・ランゲージを生み出している。HYTは、厳密にいえば圧力をかけているわけでもなく、時間表示付きで側面に配置したチューブを巡るひと続きの2色の液体を、制御した速度で「送り出し」て、分の経過を刻む従来の機械ムーブメントと連携させているのである。

 他の機械式時計と同様にゼンマイを巻くが、そのやり方も所有者に楽しみをもたらしている。リューズを引き出して回し、透明の液体が黒い液体を侵食するようにキャピラリー内を動くのを見守るのだ。両方の液体は絶対に混じることはない。半透明のチューブの中で液体の巧妙な動きが、明るいグリーンの背景に引き立ち、この腕時計に完璧にマッチするSF感を加えている。

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 黒い液体と透明の液体が出会う境目が時間を示し、時間が進んでいく速度は他のどの時計とも同じだ。先述の通り、これは魔法と見分けがつかないぐらいである。48.8mmのケースの中には、液体表示のための広々とした空間があり、20.8mmのドーム状のサファイアは、液体表示のための非常に良いフレームになっている。スモークグレーのPVD仕上げSS製ケースはサファイアクリスタルに包まれおり、なんと50mもの防水性能をもたらしている。繰り返しになるが、このHYTを代弁することは、ほぼ意味のない全くの自己満足であるものの、この腕時計は、技術的な偉業を成し遂げている。

 どっしりしたサイズにも関わらず、着け心地はいい感じだ。ケースサイドと、手首に着けた感触は、スントやガーミンに非常に似ているが、スントがそれを、夢のあるエレクトロニクスではなく、鉛で満たしたのだと想像していただきたい。トップ部は重く、手首上では高さがあるが、クリスタルの質感が力強さも生み出している。これは、非常に複雑で高価な機械を保護する役目を負っているからである。
 時刻は、SSケースの側面に表示されるので非常に読みにくいが、インデックスに数字表示の無いドレスウォッチに慣れた方なら、なんということはないだろう。私の場合、まず、液体のメカニズムが側面の時間表示部分と一致して見える位置に腕を傾け、そのあと時刻を読み取る通常のポジションへと戻して分の表示を見る。しかし、この一連の儀式を行って時刻を知ることに不便を感じないのだ。この時間計測ツールは、そのすべてが一大スペクタクルであり、通常の腕時計と同じように時間を読むのでは、いずれにしろこの時計にマッチするようには思えないからだ。

H1.0のさらなる詳細はHYT公式サイトをご覧ください。