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Photos by James Stacey
ライカは先週、ドイツ・ウェッツラーにて毎年恒例のイベント、セレブレーション・オブ・フォトグラフィーを開催した。オスカー・バルナックアワードの授与でクライマックスを迎えるこのイベントは、ブランドの国際的なプレミアイベントであると同時に、特別な製品発表の場でもある。
昨年の伝説的なフィルムカメラ、M6の最新復刻モデルの発表に続き、ライカは今年のイベントで2018年6月に発表されたL1、L2以来となる同ブランドの時計ラインナップの大きな進化を発表した。しばらく遅れたが、Lシリーズが店頭に並ぶのは昨年になってからだった(その後、モデル名はZM 1とZM 2に名称が変更されている。詳しい記事はこちら)。初期の限定2モデルで成功を収めた1年後、ライカは時計の世界を拡充させる準備を整え、新しいZM 11を介してそれを実行したのだ。
ZM 11は、ZM 1と2で確立された型を破壊するモデルだ。チタンまたはスティール製の2種類から選べるZM 11は、41mmサイズのライカのスポーツウォッチである。文字盤はブラック/レッド(ローンチエディション)、コーヒーブラック(ゴールドトーンのアクセントを加えたブラウングラデーション)、ミッドナイトブルー(ホワイトメタルのアクセント)の3種類から選べる。
厚さは13mm、ラグからラグまでの長さは45.3mm、防水性は100m、風防は強化AR処理されたデュアルドーム型を採用。さらにブレスレット、テキスタイルストラップ、ラバーストラップの3種類(すべてチタンまたはSS製)から選ぶことが可能なのだが、すべてのストラップオプションには“ライカイージーチェンジ”と呼ばれる、新しいプッシュボタン式クイックチェンジシステムを装備している。
デザインスピリットはモダンで洗練され、間違いなくApple Watch以降のそれを思わせる。初期のアイクポッドに近いが、もっとドイツ的な雰囲気だ。フーデッドラグが、滑らかに角張ったラウンドケースに流れるようにデザインされ、そこにシンプルなリューズでフィニッシュしている。ベゼルは装飾されておらず、また最小限に文字要素を抑えてインデックスや針を最大限活用し、大きな文字盤を縁取る。3つのダイヤルすべてにディープな水平線デザインを与え、その溝のなかに2色目のカラーを取り入れている。これはローンチエディションが最も顕著で、ブラック文字盤のラインがさりげなくも刺激的なレッドのアクセントで埋め尽くされていた。
日付表示は3時位置に設定されているため、判読性は極めてシャープだ。針やインデックスには複数の仕上げを施しているため、マクロレンズで覗いてもそこには光と戯れる光景があり、かなり高級感がある。サテン仕上げの文字盤を囲むように、見返しリングには小さなミニッツトラックがあり、ZM 1、2のやや伝統的な文字盤よりもはるかにスポーティでユースフルな文字盤に仕上がっている。
SS製ブレスレットが付いていたからかもしれないが、ZM 11はブラックやブラウンよりもブルーのほうが断然好みだった。3つともまとまり感があり、とてもきれいに作られているが、ブルーダイヤルとシルバートーンのアクセントが僕の手首にいちばんなじんでいた。
ブレスレットと言えば、それはZM 11の魅力的で最も印象的なパーツである。鎧のような短いリンクがうまく連動し、プッシュボタン式の隠れたクラスプへとつながる、完璧に一体化したデザインだ。直感的に操作できる、かなりカメラ的なイージーチェンジシステムとマッチしたこのブレスレットはライカらしさをうまくデザインしたもので、ライカというブランドそのものを体感できるものだった。
装着してみると、(薄いベゼルと比べて)文字盤の大きさに比例して想像以上に大きく見えたが、カーブを描いたラグとフラットな裏蓋が、ZM 11をしっかり固定するのに役立っている。SS製のブレスレットモデルは少し重く感じたが、どのモデルもSS製で78g、チタン製で61g(ケースのみ)と、どちらのバージョンも特に負担になる重さではない。僕はチタンが好きなのでより軽い金属のほうに余分なお金を使うだろうが、SSの見た目と感触は素晴らしかった。
3本のストラップのいずれにおいても、ZM 11は同ブランドのこれまでの腕時計よりもかなりスポーティに感じられ、バランスのとれたプロポーション、比較的短い長さ、一体化したラグによる統制のおかげで、よりカジュアルな雰囲気と非常に快適な装着感がマッチしている。
今回、ZM 11にはスイス製の自動巻きムーブメントを搭載しているため、ZM 1と2からの様式的な逸脱は機械的な性質の逸脱とも合致している。ZM 1と2(当時はL 1とL 2)の最初の発表に続いてリリースされたこれらの時計には、エンジニアリング会社であるレーマン・プレシジョン社(Lehmann Präzision GmbH)とのコラボレーションによる独自のムーブメントを誇らしげに搭載している。
より大規模な生産範囲と、販売ネットワークが大幅に拡大されると予想したため、ZM 11をより大量に生産できるムーブメントを必要としたライカは、ル・ロックルに拠点を置くスイスのクロノード社に依頼をした。その結果、35石、約60時間パワーリザーブを備えた、2万8800振動/時の自動巻きムーブメント、ライカLA-3001が完成した。これはクイックチェンジデイト機構を備え、日差-4秒~+6秒の精度を示す。
シースルーバックをとおして見えるLA-3001は素晴らしい外観を持つ。ブラスト仕上げとサテン仕上げをミックスしており、ZM 1と2のムーブメントの仕上げに合ったインダストリアルな雰囲気を醸し出す。予想どおり、より多くのユニットに対する需要の高まりに対応できるしっかりとした自動巻きムーブメントを望むなら、スイスは有能なソリューションの供給源であり続ける。
範囲について言えば、これはZM 11の登場が“ライカウォッチ”というアイデアの成功を示すように、物語のなかで最も興味深い要素のひとつかもしれない。毎年のZM 1、2の年間生産本数は少なく(報道によると1000本以下)、そのうちの約3分の1は、ライカを所有したことのない消費者に販売されている。これは驚くべきことかつ魅力的なことで、このラインが立ち上げられたときの成功の想定と食い違っていることに気づいた。
間違いなくZM 1と2は素晴らしいハイエンドカメラを製造するブランドによる、素晴らしいハイエンドウォッチだと思うが、ライカを体験したことのない購入者がこの時計に興味を持つとは思っていなかった。ライカはZM 11を11月から、世界中にある約100の小売店舗のうち3分の1の店舗で販売する。その後、2024年1月から全店舗へと展開していく予定だという。
価格はストラップに付いたSS製が6775ドル(日本円で約101万5000円)からで、フルチタン製のローンチエディションが8150ドル(日本円で約122万1000円)だ。高級な価格帯ではあるが、ドイツ製の(そして複雑機構の)ZM 2が定価1万4000ドル(日本円で約209万9000円)で発売されていることを忘れてはならない。
ライカの時計という概念を押し広げたものとして、ZM 11は、ZM 1やZM 2といった製品とは一線を画していることは確かだが、この時計はよりライカの作品に近いとも感じる。デザインはすっきりとしていて邪魔にならないので、ブレスレット一体型のスポーツウォッチという飽和状態にある世界のなかでも際立った存在感を放っている。
スイス製ムーブメントに裏打ちされた魅力的なデザインと、ライカの細部へのこだわりを備えたZM 11はブランドのウォッチメイキングにおける第2章として意図的かつ具体的で、よく実現していると思う。また比較的手ごろな価格帯に設定されたことで、この新しいコレクションの新規ユーザーは広がるだろう。
ZM 1と2がライカの時計製造におけるコンセプトとして成功した。ZM 11は、ネックストラップやカメラバッグを必要とせずにライカを体験できる、快適で現代的、そして考え抜かれたデザインのプラットフォームによって、その範囲を広げるための入門機であると感じる。
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