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March 06, 2021
In-Depth F.P.ジュルヌ 最新のクロノメーター・レゾナンスを徹底解説 2020年新作

In-Depth F.P.ジュルヌ 最新のクロノメーター・レゾナンスを徹底解説 2020年新作

20周年記念のクロノメーター・レゾナンスは、これまでで最も進んだ技術を駆使している。


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F.P.ジュルヌ(F.P. Journe)による最初のクロノメーター・レゾナンスは、今から20年前に22本の限定版としてデビューし、それ以来、多くの異なるバリエーションが登場したが、それらは全て基本的に同じムーブメントを採用していた。このシリーズは昨年いったん途絶えたが、その最後のモデルをカバーしている間、我々のスティーブン・プルビレント(Stephen Pulvirent)は次にはどんなものが現れれるのかと思いを巡らしていた。

 今、その謎が解けた。今年、クロノメーター・レゾナンスの20周年にあたり、F.P.ジュルヌは、時計の技術的な複雑さを大幅に高めると同時に、クロノメトリーに対する非常に貴族的なアプローチをこれまで以上に洗練させた新作をリリースした。
 この新しいバージョンは、ローズゴールドの新しいムーブメント、Cal.1520が搭載されている。(ローズゴールド製ムーブはF.P.ジュルヌの特徴である。一般的には、スイス製ムーブメントは最もプロレタリア的なものから貴族的なものにいたるまで、ロジウムメッキの真鍮を使用するか、またはあまり一般的ではないが、ジャーマンシルバーを使用している)。2つのテンプがお互いに共振して振動する特徴的なダブルバランスホイールデザインに加えて、ムーブメントは現在、2つではなく単一の主ゼンマイ香箱と、パワーフローをそれぞれ独立した輪列に誘導するディファレンシャルギア、そしてジュルヌのもう1つの特徴といえる複雑機構である1秒周期のルモントワール・デガリテ(remontoir d’egalité)を、2つの輪列のそれぞれに1つずつ備えている。


レゾナンス(共振原理)の探求

 レゾナンスウォッチを作ることは非常に困難な仕事であり、時計製造の歴史のほとんどを通じ、それは主に実験として行われてきた。物理的に非常に近い2つの発振器が、同じ固有振動数で同期して鼓動し始める効果を最初に検証した一人であるブレゲ(Breguet)は、2つの振り子を備えたダブル振り子時計だけでなく、2つのテンプを備えた時計でも共振が観察されることに目を疑った。しかし、度重なる試験と実験の後、彼は「これはバカげているように見えるが、千回以上もの実験でそれが証明された」と記している。

ブレゲの、輪列を2つ備えたレゾナンス懐中時計のムーブメント。 1814年8月に、ロンドンのガルシアス氏に5000フランで最初に販売された。2012年にはクリスティーズで439万9000スイスフラン(約4億8000万円)で競売にかけられた。

 共振現象は、クリスチャン・ホイヘンス(Christiaan Huygens)によって最初に観察された。最初の実用的な振り子時計の開発と、うずまき状のヒゲゼンマイの適用は、彼の業績である。(1657年、彼は、この開発の功績をイギリス人、ロバート・フック(Robert Hooke)と共有する)。有名なフランスの時計師、アンティード・ジャンヴィエ(Antide Janvier)(1751〜1835)もレゾナンス時計を製作した。
 共振原理を採用した時計の理論的基礎は比較的単純である。2つの発振器が共鳴している場合、2つの発振器間のリズミカルなエネルギー交換のおかげで、それぞれが他の発振器で発生する振幅速度の偏差を修正する傾向がある。ここで唯一つ注意すべき点は、共振効果を発生させるためには、発振器がお互いに非常に近い振動数を維持するように調整する必要があるということである。ブレゲは、彼の懐中時計では、各テンプを1日20秒以内の偏差に調整する必要があり、そうしないと、共振が発生せず、テンプが互いの振動数と合致しないということに気付いた。

アンティード・ジャンヴィエのダブル振り子時計。ジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアム所蔵。

 これは全てかなり厄介なものであり、時計の技工の歴史の中でも、最も骨の折れる非常に難しい時計づくりの一つである。純粋に機械的なシステムから、精度の最後の一滴をどうやって絞り出すかという問題は、何世紀にもわたって時計師の最大の関心事であったが、クォーツ時計の登場により、クロノメトリーは機械式の時計師ではなく物理学者やデジタルエンジニアの関心事となった。どんな種類のレゾナンス時計にせよ、そして特に腕時計でそれを作ることは難しいため、ブレゲの後、それをあえて試みる時計師はほとんどおらず、今日まで、ブレゲが彼の時計で使ったのと同じ原理に依存してレゾナンス時計を作る時計メーカーは、F.P.ジュルヌが唯一である。

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F.P.ジュルヌ クロノメーター・レゾナンス

 ジュルヌのレゾナンスウォッチの最初のバージョンは2000年にデビューし、それ以来、多くのバリエーションが登場した。2000シリーズはスースクリプションシリーズであり、最初の実際のコレクションは2001年にリリースされた。それ以降の主なリリースには、ルテニウムダイヤルと18KRGのムーブメントを備えたプラチナケースモデル、デジタル24時間表示の2010年版、そして2019年には12時間と24時間のアナログ文字盤を備えたモデルが登場した。

デジタル24時間文字盤付き2010年のF.P.ジュルヌ クロノメーター・レゾナンス。12時位置に巻き上げと設定を行うリューズ、4時位置に秒針を再設定するためのリューズがある。

 F.P.ジュルヌは2000年代初頭に最初のレゾナンスウォッチをリリースしたが、彼の共振現象への関心は長年にわたるもので、1983年には早くもブレゲの原理に基づいたレゾナンスウォッチの作成を試みていた。

F.P.ジュルヌによる、2つの輪列を持つレゾナンスウォッチ用ムーブメントプレートのプロトタイプ、1983年。

 レゾナンスウォッチのムーブメントの基本となる機構は、2000年以降、技術的に大きく変わっていないが、それにはもっともな理由がある。つまり、共振効果を確実に生み出すことができるムーブメントを作成することは非常に困難であり、またさらには、2つのテンプの速度を調整して共振効果が発生するように合わせるにはさらにかなりの労力が必要とされるからだ。
 2000年代以降、他にもレゾナンスウォッチが製造されたが、これらは一般に、F.P.ジュルヌが言うところの「アコースティック」エネルギーを伝えるのではなく、2つのヒゲゼンマイ間の直接的な機械式連動に依存している。  

F.P.ジュルヌ Cal.1499.3。

 オリジナルのムーブメント構成は、F.P.ジュルヌ Cal.1499.3に見ることができる。ムーブメントの最上部、巻き真の隣には、2つのゼンマイを巻く丸穴車(クラウンホイール)があり、香箱の石は、丸穴車の両側にある。この時点で、ムーブメントは完全に別々の2つの輪列に分かれ、それぞれがガンギ車、レバー、各輪列のテンプで構成される。注目すべき要素の1つは、右側のテンプ受けのラック(土台)システムで、これにより、2つのテンプ間の距離を高精度で調整できる。ブレゲの懐中時計と同様、2つのテンプを調整して、共振効果が発生するように振幅速度を非常に近付けるためである。ブレゲの時計では最大でも20秒差以内だったが、レゾナンス クロノメーターの小さい方のテンプは、日差5秒以内の振幅速度で作動する必要がある。

 レゾナンスウォッチを作ることは非常に難しいが、基本原理は単純であり、F.P.ジュルヌが開発した腕時計におけるブレゲの共振原理の実装には、改善すべき点は何も残されていないないようである。ただし、F.P.ジュルヌはそのままにしておくことに満足せず、2020年版のクロノメーター・レゾナンスでは、複雑さがさらに増しただけでなく、精度の追求にも磨きがかかっている。


ルモントワールとディファレンシャルを搭載した2020 クロノメーター・レゾナンス

 一見しただけでは、2020年版を以前のバージョンと見間違えてしまう可能性がある。以前の全てのクロノメーター・レゾナンス ウォッチと基本的に同じ文字盤構成だからである。ただし、今回は2つの時間を表示する文字盤の間に一風変わった外観をしたメカニズムがあり、またリューズの位置もわずかに異なっている。
 2時位置にあるリューズを使用して巻き上げと時刻合わせができる。引き出すと、2つの文字盤をそれぞれ設定でき、反時計回りに回すと左側の時刻が設定され、時計回りに回すと右側の時刻が設定される。下方にあるリューズを同時に引くと、2つの秒針がリセットされる。クロノメーター・レゾナンスの以前のバージョンでは、巻き上げと時刻設定のリューズは12時の位置にあったので、新しいバージョンでは人間工学的な改善がなされているといえる。

 しかし、文字盤中央にある機械装置は、これまでのクロノメーター・レゾナンスでは使用されたことがないもので、オリジナルのムーブメントと新しい2020年のムーブメントとを比較すると、変更が行われた部分が明らかとなる。

Cal.1520を搭載した2020年版クロノメーター・ レゾナンス。

 まず、丸穴車の位置が変更されていることが分かる。現在は、2つのテンプと同じ位置ではなく、およそ2時位置に配置されている。これは現在、42時間のパワーリザーブ、そしてより端的に言えば最も注目すべき28時間の「エフィシェンシー」を備えた単一の主ゼンマイ香箱があることを反映している。主ゼンマイ香箱の位置は、12時位置に1つの非常に大きな石で示されている。従来バージョンのCal.1499.3と同様に、2つの独立した輪列が存在し、単一の主ゼンマイ香箱からのエネルギーはディファレンシャルギアによって分割される。ディファレンシャルは、文字盤の中央に見える不思議な装置である。1つの香箱からのエネルギーは、別​​々の輪列それぞれに伝えられた後、ルモントワール・デガリテによって制御される。

F.P.ジュルヌのトゥールビヨン no. 1、1991年。6時位置にルモントワール・デガリテが見える。

 共振効果と同様、ルモントワール・デガリテはF.P.ジュルヌが数十年にわたって魅了されたものである。彼の名前をもつ会社が存在するはるか以前の1991年に、彼は既にそれをトゥールビヨンに取り入れた。この装置は特筆すべき歴史をもっている。時計用の重錘式ルモントワールは、1595年頃にスイスの時計職人ヨスト・ビュルギ(Jost Burgi)によって発明された(彼はまた、今日、対数と呼ばれるものについての先駆的な仕事をしている)。そして、スプリング式のルモントワールは、マリン・クロノメーターで有名なジョン・ハリソン(John Harrison)によって発明された。彼は、航海用時計H2のためにこれを発明し、H4用にさらに改良を行った。これが最初に成功したマリン・クロノメーターであることは言うまでもない。

ディファレンシャルギア、文字盤側から見ることができる。

 ルモントワール・デガリテの目的は、ゼンマイが解けると徐々にエネルギーがテンプに伝達される量が減少し、テンプの振幅が低下すると速度の安定性が低下し始めるという事実に対処することである。これは、最新の合金製主ゼンマイから得られるはるかに平坦なトルク曲線の恩恵を受ける現代の腕時計では、特に実用的な問題とはなっていない。そしてもちろん、毎日着用する時計の自動巻きメカニズムは、主ゼンマイの振幅が特に影響を受けるほど解けることはないので、それ自体がいわばルモントワール・デガリテのような役割を果たしているとも言える。とはいえ、この機構の複雑さは愛好家を魅了し続けており、実際に新しいクロノメーター・レゾナンスでは実用的なメリットもある。

2つの輪列。

 レゾナンスウォッチの基本的な問題の1つは、2つのテンプが非同期になる可能性を減らすため、テンプの振幅をできるだけ一定に保つ必要があるということである。それぞれの輪列には独自の1秒周期のルモントワール・デガリテがあり、それぞれ3時と9時の位置に見ることができる。ルモントワール・デガリテは本質的に2番目の補助ゼンマイであり、主ゼンマイによって定期的に巻き上げられる。主ゼンマイがルモントワールのゼンマイを巻き戻すのに十分なエネルギーをもっている限り、テンプに供給されるトルクは、主ゼンマイが解けるにつれて低下することなく、一定に保たれることになる。時計にもよるが、ルモントワールは数分から数秒の範囲の間隔で巻き戻される。F.P.ジュルヌは1秒周期のルモントワールを使用することが多く、今回のクロノメーター・レゾナンスではこれが2つ使用されている。

 主ゼンマイがルモントワールを動かすのに十分なエネルギーをもっている限り、エネルギーの供給は一定であると述べてきたが、ルモントワールはテンプへのパワーフローにあるので、ルモントワールのゼンマイが巻き戻せなくなった場合でも、これを備えた時計は動き続けることが可能だ。これが、クロノメーター・レゾナンスの総稼働時間は48時間であるが、「効率的な稼働時間」は28±2時間である理由である。約28時間後、主ゼンマイは、ルモントワールのゼンマイを巻き戻すのに十分なトルクを失うことになる。しかしながら、これは、毎日着用され、同時に毎日巻かれる時計において実際的な問題とはならないのは確かである。

 2020 クロノメーター・レゾナンスはかなり複雑であるにもかかわらず、驚くほどコンパクトな時計である。ジュルヌの愛好家は覚えておられるだろうが、概して、その複雑さに関わりなく、エレガントにバランスが取れ、同時に着けやすい時計を作ることがF.P. ジュルヌの目標であり続けるのである。オリジナルのクロノメーター・レゾナンスのコレクションが廃止されたとき、この時計は40mmのケースで、厚さはわずか9mmだった。本機のサイズもほぼ同じ大きさである。直径40mmまたは42mmのプラチナまたはレッドゴールドケースが用意されている。厚みはわずかに11mmである。

 最初のジュルヌのレゾナンスウォッチが出たとき、私は非常に懐疑的だった。ホメオパシー的にほんのわずかな量のエネルギーが時計のテンプの振動によって伝達されるという考えはばかげているように思え、私は2000年代初め、オンラインディスカッションフォーラムで頻繁にその見解を表明していた。何人かの友人がそれらを所有するようになり、また時計愛好家のイベントでも見かけるようになったが、実際、そのテンプはうまく同期しているようだった。しかし、私は頑固にもその影響は現実的ではあり得ないと確信したままだった。
 その後、2014年に偶然にもジョージ・ダニエルズ(George Daniels)の『アート・オブ・ブルゲ』で、ブレゲのレゾナンスウォッチに関する記事を読む機会があり、赤面したのだが、F.P.ジュルヌは間違いなくブレゲの足跡をたどり、同じ結果を得たことが分かった。そして、当時、私が米国版の編集長を務めていた雑誌『Revolution』で、これまでの見解を撤回することになったのである。

 それ以来、私はクロノメーター・レゾナンスの時計にたまらなく魅力を感じている。クロノメトリーに染まったオタクとして、私は、現代の材料科学と高精度の製造技術が、過去数十年、数百年の間、偉大な時計メーカーが夢見ることしかできなかったような精度を達成したことを十分理解している。しかし、シリコンとLIGAで製造された脱進機コンポーネントではなく、時計製造で最も伝統的な素材で作られたクロノメトリーを追い求めることには、いつの時代にも素晴らしい何かがある。
 ムーブメントの高級な手仕上げと共に、新しいクロノメーター・レゾナンスの高いレベルの時計づくりは、その歴史の中で最も優れた過去の努力とのつながりを維持している。そして意思とスキルのあるほんのひと握りの時計メーカーが巧妙なテクニックやソリューションを行使するのではなく、発明と努力により新たな分野を開拓できることを示している。

F.P.ジュルヌ クロノメーター・レゾナンス 2020、Cal.1520:ケース、プラチナまたは18Kローズゴールド、40mmまたは42mm、厚さ、11mm。ムーブメント、F.P.ジュルヌ自社製Cal.1520;34.20mm x 7.97mm、厚さ、7.97mm。1秒周期のルモントワール・デガリテを備えた2つの独立した輪列;ディファレンシャルギア付きシングル主ゼンマイ香箱。12時間および24時間表示、パワーリザーブ表示。42時間パワーリザーブ、ルモントワール作動でフル巻き上げ状態から約28時間の稼働時間。手巻き、時刻設定用リューズ、秒再設定用リューズ;振動数、2万1600 振動/時、62石。価格、18Kローズゴールド 1216万8000円(予価);プラチナ 1260万円(予価)。限定版ではないが、かなり限られた生産数; F.P.ジュルヌブティックで2020年6月に販売予定。新しいCal.1520搭載のクロノメーター・レゾナンスの詳細はF.P.ジュルヌ公式サイトへ。