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Hands-On ラドー キャプテンクック ブロンズ

ブロンズのキャプテンクックは、ユーザーからのお墨付きを得られるだろうか?

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最初にラドーがキャプテンクックを作ったのは1962年のことで、他社の一流ダイバーズウォッチと遜色のない正当な時計が生まれた。そのデザインは、2017年にラドー ハイパークローム キャプテンクック限定版として生まれ変わり、うちのジェイソン・ヒートン(Jason Heaton)を夢中にさせた。昨年私は、すっかり成熟したラドー キャプテンクック オートマティックを取り上げたが、このカテゴリーの一般的なものよりもやや個性的で好感触であった。

 そして今回注目したのは、キャプテンクック ブロンズ オートマティックである。

 キャプテンクックの次なるモデルとしてブロンズを出してくるのは、現代の腕時計のライフサイクルによくあるやり方を踏襲しているといえる。スティール製でこれまでのところ非常に成功しているこのモデルを、リフレッシュさせる方法には限りがある。そんな中、ブロンズケースを選択したというのは至って理に適っている。しかし本機が愛好家の興味を刺激し得るのは、ケース素材だけの要因ではない。

 ラドーは昔から、セラミックを使いこなすことに力を入れてきた。それは同ブランドのコア・アイデンティティの一部となっている。したがって、ベゼルの新色も多様だ。本機を視覚的にユニークにしているのは、ブロンズ、石の時代に終わりを告げた合金、そして新たな可能性を拓くセラミックなど、素材同士が相互に織り成す効果である。スペースシャトルは、素材に使われたセラミックタイルの出現によって安全な大気圏再突入が可能になったが、ゆくゆくは、準軌道飛行の実現もそれにより可能になる。

 今回のブロンズシリーズには3色が用意される。明るいグリーン、深いブルー、そし前回のモデルに使われたのと同じグレーだ。これらの色合いはすべて自然界を表しているが、それが非常に成功している。結局は、これこそがまさにラドーの得意とする領域なのだ。

 これは私には、この時計を精神的な意味でファッションウォッチの方向に寄せた最初のモデルに見える。どちらかといえばモダンなラドーであり、1962年の時計を引用した昨年のモデルとは異なる。この時計を求める市場は確かにあるのだし、そもそも純粋主義に陥るのもつまらない。時計を素材や色で楽しむ余地は大いにある。基本的に、これらのバリエーションが加われば、この時計に興味を持つ人々の幅が広がるわけだ。ブロンズに加えて、これまで通り316Lステンレススティールも製造されるのだから。
 そして、ブロンズモデルの裏蓋は316L SS製ではない。裏蓋は、ブロンズでもなくチタンだ。実のところ、裏蓋以外のアクセントには全てゴールド色またはブロンズ色が使われている。12時位置にあるラドーの小さなアンカーのロゴですら、ブロンズのような色を帯びている。

 本機の隠し機能は、その小さなアンカーが旋回することだ。ネタバレしてしまって申し訳ないのだが、初見のときに、私は文字盤の何かが変わっていると思いながら時計を眺め続けていた。とても困惑し、若干イライラした気分にさえなった。何かが違うのだが、それが何であるか分からなかった。そしてとうとう、アンカーが時刻を直に指していて、それがチクタクと動いていることに気づいたのだ。これは斬新なディテールであり、キャプテンクックをさらに面白いものにしている。

 ボックスクリスタルはサファイア製で、多くのヴィンテージウォッチで見られるように、それによってチャプターリングにプリントされたハッシュマークが歪んで見える。ジェイソン・ヒートンが最初のキャプテンクックに関する記事で指摘したように、本機はディテールによって作られている時計だ。
 ヒートンは自宅で執筆の際、ガタゴトするダブルホース型アクアラング、ラバースーツ、エアマスクを装着したところを空想したそうだ。しかしこのブロンズモデルの場合、着古したジーンズに履き古したブーツ、そして無地のセーターが合う気がする。これは300mの完璧な防水性能がありながら、視覚的には我々がラドーならではと感じる雰囲気をより醸している。そして本機の購入を検討する方々の90%にとって、追い求めるものはその審美的魅力となるのだろう。

 本機は視覚的に強い個性をもちながらも、実際にそれを支えるスペックも持ち合わせている。ラドーの内部にあるETA CO7は、なかなのものだ。ティソ、ハミルトン、サーチナなどの数多くの時計に使用され、その頑丈さと信頼性は証明されている。80時間のパワーリザーブは、この部門ではトップクラスだ。サファイア製ボックスクリスタルには、反射防止コーティングが二重に施されている。そしてブロンズ製のねじ込み式リューズも付いている。

 本格的なツールウォッチというよりもスタイリッシュな主張がやや強いと感じるかもしれないが、本機がダイバーズウォッチの領域で勝負し得ることを、そのスペックが示している。だからこそ私は、このモデルは、色や素材における現代のラドーの経験値と、1960年代のラドーがオリジナルのキャプテンクックで成し遂げようとしていたものとの、ベストな部分が融合していると考えるのだ。つまり、最適なスイートスポットに到達したということだ。

 42㎜のケースは手首にぴったりとはまる。ラグが短いため、一般的な太さの腕に42㎜ケースが上手く収まるのだ。本機にはレザーストラップが付いており、これもまた、デザインの過程で実用よりもスタイルに重点を置いているといえる点だ。しかしスペックに思いを馳せれば、両者の絶妙なバランスへの拘りが嬉しい誤算となる。高い防水性能と自動巻きムーブメントを備えていることを考えれば、特にケースが厚すぎるともいえない。装着しやすく、袖口にすっと滑り込む。そしてレザーストラップというものは、概して快適だ。

 本機に使用されているブロンズは、アルミニウムブロンズだ。標準的なブロンズは銅と錫で作られるが、これはアルミニウムと銅からできてきる。時計に使う場合の両者の違いはといえば、どちらもテクニカル的には「高性能」であるが、標準的なブロンズは変色して非常に目立つ緑青が出る(卵液や塩水やアンモニアを使って退色の速度を速めるニッチな業界で聞いてみれば分かる)。しかしそれらのトリックは、キャプテンクックに使われている銅とアルミニウムのブロンズでは(同じようには)機能しない。耐食性に富んでおり、酸化アルミニウムの膜によって密閉されるからだ。つまり、ブロンズは比較的クリーンなまま保たれることになる。ブロンズに拘る方々の中には、これを好ましいと考える方もいれば、残念と感じる方もおられることだろう。

 我々にとって、このキャプテンクックは、ブロンズ製ダイバーズウォッチの世界への適切な入り口となる。316L(そして904L)ステンレススティールを神聖視している私としては、このトレンドに心を奪われることはない。しかしこのキャプテンクックは、カテゴリーにおいて説得力ある選択肢である。なんといっても、海で着用する場合には海水につけたときの防食性があることから、SSよりも銅×アルミニウムのブロンズの方が好ましい。私としては、キャプテンクックのブロンズはスタイルを主張するものとして分類するが、事実情報を見れば、これは水上でも水中でも同じように機能するものだといえる。

ラドー  キャプテンクック ブロンズは42㎜で、ブロンズにつきものの緑青が出ない、銅とアルミニウムのブロンズ製だ。ベゼルはセラミック製で、グリーン、ブルー、グレーの3色がある。文字盤はベゼルと同色のサンレイ仕上げ。レザー製のストラップ付き。300m防水。ラドー取扱店およびオンラインで4月より発売。価格はいずれの配色も29万円(税込)。ラドー キャプテンクック ブロンズについて詳しくお知りになりたい方はラドー公式サイトへ。