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スポーツウォッチにはさまざまな形とサイズがある。しっかりした作りのダイバーズウォッチや昔ながらのレーシングクロノグラフも確かに魅力的かもしれないが、私にとっては、GMTの魅力に敵うものはない。好例は、ダイバーズウォッチのような作りで、世界中のどこにいても場違いな印象を持たれないもの。その性格、シンプルにして強力な機能、そしてあなたが向かう先に適応する地に足のついた能力を持つGMTには特別な魅力があるに違いないのだ。
2017年3月、バーゼルワールドでチューダーはブラックベイGMTを発表。このモデルは、ブラックベイ ダイバーズのデザイン様式をベースにしたハンサムなステンレス製トラベルウォッチで、もちろんGMT機能も付いている。チューダーの兄弟ブランドであるロレックスによって確立されたペプシカラーのベゼルに続き、ブラックベイのGMTはチューダーにとって新機軸となる。ブラックベイの系譜とトラベルウォッチ不朽の名作であるロレックス GMTマスターIIとの共通点から、ひと目見てそれとわかるモデルになっているのだ。
完璧なデザイン性と新ムーブメントがもたらすGMTの機能性に裏打ちされた強力な価値の訴求を武器に、ブラックベイGMTは活動的な旅行者のための真のスポーツウォッチとして仕上げられている。
歴史をおさらい
チューダーの過去を紐解くと、このブランドはブラックベイGMTの原型と考えられるモデルを生み出したことはない。確かに、過去にGMT機構を搭載した数モデルを製造した記録はあり、例えばヘリテージ クロノグラフはスマートな12時間ベゼルを与えられたが、ブラックベイGMTは製品ラインから完全に切り離されたモデルであり、チューダーの特定のモデルやリファレンスの血統を継いでいないのだ。
少し視野を拡げてみると、長兄ロレックスが製造したGMTマスター IIが見つかるのみ。Ref.16760として1983年に発売された GMTマスターIIは、1950年代にパンアメリカン航空のパイロット向けに開発された初代GMTマスターの後継として熱狂的な旅行者向けに企画された。
GMTマスターIIのためにジャンピングアワー機構を備えた新ムーブメントをロレックスは新開発。したがって、別のタイムゾーンに移動すると、リューズ操作で現地時間を1時間単位で両方向調整することが可能であった。これには、真夜中の飛行に備え日付を進めたり、戻したりする機能も含まれており、ムーブメントを停止して分針、秒針の位置を乱したりすることなく調整することができたのだ。
頻繁に空を旅するなら、この機能は不可欠。
Ref.6542として発売以来、GMTマスターには熱狂的ファンが「ペプシ」ベゼルと呼称する青と赤のバイカラーの24時間ベゼルが配された。また、赤と黒を配色した「コーク」も発売された。バイカラーベゼルは目的地のタイムゾーンでの昼夜を区別するのに役立ち、そしてベゼルの配色こそがGMTマスターとGMTマスター IIを区別するデザイン上の目印となったのだ。
ロレックスが青と赤のセラクロムベゼル(セラミックベゼルインサートのための一連の技術名)を量産化するまでの間、少しの間休止があったものの、ペプシはバーゼルワールド2014にて、ホワイトゴールドケースのRef.116719として復活を遂げた。
2018年初め、ロレックスはブラックベイ GMTと無関係とはとてもいえないスティールモデルのペプシ GMTマスターII( Ref.126710BLRO)を同じステージで披露した。ステンレススティールケースとジュブリーブレスレットに青/赤ベゼルをまとい、ロレックスは先代 Ref.16710を2007年頃に製造終了して以来、ペプシを復活させたのだ。
ある時計の歴史にスポットライトを当てて、全く別の時計について説明しようなんてバカげているとは思うが、(見事なほどに)同じ機能を持つだけにとどまらず、ロレックス GMTマスターシリーズの外観を誰もが分かる形で受け継ぎつつブラックベイGMTをデザインするに至ったのは非常に注目に値します。
製品レベルでのロレックスとチューダーの両社の歴史と、近年のロレックスとは完全に切り離された存在であるブラックベイ シリーズの開発の経緯から見ても、ブラックベイGMTの登場を予想した人は皆無に近いのではないかと私は考えています。
さらに、その存在はサブマリーナとさらに重要なGMTマスター IIの廉価版として地位を担うことを使命としたロレックスからの信任投票に他ならないと考えられるのです。
GMT-その機能とは
美的観点がこの時計を取り巻く議論の的となっているのと同じくらい(この話題にも切り込みましょう)、ブラックベイ GMTとGMTマスター IIの近似性だけでなく、より広範なGMTウォッチ界隈の立ち位置という点で、私は機能性が大きな側面を担っていると考えている。
広い意味で、近年のGMTウォッチは一般に、24時間独立型とローカルジャンピングアワー型の2つの型に分類が可能だ。
この分類が意味するところは、事実上ムーブメントの生産が根底にあり、24時間独立型GMTはほぼほとんどをETA社と、広く流通している2893-2(このムーブメントのジェネリックとしてセリタ社製も存在します)が独占しているということ。タイムゾーンの時刻を確認するには、24時間針を文字盤の24時間スケールか回転ベゼルに合わせて時刻合わせをする。私はこのタイプを「Caller GMT」を呼んでいる。確かに、自国に居ながら、別のタイムゾーンの現地時間を確認するのに便利であるが、活動的に現地を往来するような人が3針すべてを現地時間に合わせるとなると煩雑である。
もうひとつの雄であるローカルジャンピングアワー機構はより複雑だが、実際のタイムゾーン間の移動に柔軟に対応できる。 24時間針と共に、ローカルジャンピングアワーGMT機能を持つ時計は、メインの(ローカル)時針をいずれかの方向に1時間刻みでジャンプして、目的地のタイムゾーンに移行が可能だ。 深夜零時を境に差し引きが生じると、日付も更新される。 この方式により、タイムキーピング(時針をジャンプする操作中にムーブメントが止まらない)と、24時間針で管理されているタイムゾーンの両方を保持できる。
このため、この方式を「Flyer GMT」と呼ぶことにする。タイムゾーンを変更する場合、実用的にして簡単だ。 そして、ブラックベイGMTなどが持つ24時間ベゼルを操作してみれば、別次元の利便性を体験できるだろう。
このスタイルのGMT表示は長い時を経て
今の姿に至っており、旅行に特化した
幅広い用途に臨機応変に対応できるのだ。
問題はETAを含め、どのメーカーも私が知る限り、ローカルジャンピングアワーのGMT機構付きムーブメントを製造していないことだ。したがって、ブラックベイ GMTのような時計を作る場合、既存キャリバーに大幅な改造を加えるか(オメガはシーマスター Ref.2234.50やめちゃくちゃクールな2538.20“グレート・ホワイト”に載せたCal.1128でそれを見事にやってのけたが、製造終了して長いこと経つ)、または自作するしかない。
チューダーはMT5652を開発する後者の道を選び、GMTマスター IIと同一の機能を持つブラックベイ GMTを作り出したのだ。みなさん、ここまでの話についてこれているだろうか?
GMTウォッチの名機を実際に触れたことのない方のために、どうやって操作すれば良いか説明したい。
まず、リューズのねじ込みを開放し一段目を引き出す。その位置で、現地時間を合わせることができる。1時間単位で短針をジャンプさせて現地時間を合わせ、必要とあれば日付も変更する。時刻合わせそのものを行う場合は、もう一段リューズを引けば、GMT針も含めたすべての針を調整することが可能だ。ベゼルを回転させてGMT針を参照したいタイムゾーンにセットし、それから分針を調整し、リューズを一段押し込んで最後に現地時間を調整するというのが一連の手順となる。
さて、今度は2つめのタイムゾーンを表示するためにべゼルを回転させて、ローカルタイムとホームタイムに対する時差を反映させる。今回は、NYC(ニューヨーク)の時刻を読むには時差が-4時間なので、時計回りにベゼルを8クリック進めて12時位置に「20」を表示させます。これでニューヨークの時間がベゼルから読み取れるようになる(詳細はビデオをご覧ください)。
さらに、簡単な計算でGMTの針を文字盤上のアワーマーカーに対する24時間表示に換算することにより、3番目のタイムゾーンを読むことも可能だ。このスタイルのGMT表示は長い時を経て今の姿に至っており、旅行に特化した広範な用途に、臨機応変に対応できる。
ブラックベイ GMT
GMT機能はさておき、ブラックベイ GMTは紛れもなくチューダー ブラックベイらしい時計である。ケースはサテン仕上げとポリッシュ仕上げが巧みに施されたステンレススティール製で、直径41mm、厚み15mm、ラグからラグまでの全長は50mmに達する。多くのユーザーが好ましいと感じるよりも少し厚めのケース幅を持ちながら、大きすぎず小さすぎない、針に糸を通すような絶妙なサイジングを実現している。
15mmの厚みはサファイアクリスタルの膨らみによるもので、ケース/ベゼル面はやや薄く仕上げられている。私の手首に乗せたとき、ケースのエッジがやや高いことに気づいたが、質的に金属とは異なるクリスタル面に達する程の高さではなかった。
ケース形状は分厚い質感だが、ポリッシュされた側面からラグにかけての面取りによって重厚感が和らいでいる。大きなねじ込み式リューズと幅広のベゼルエッジの組み合わせは、最も手の触れる部分における操作性の良さを提供している。実際、大きなリューズのおかげで手首から外さずにローカルタイムの時刻合わせをすることができた。
ケースは美しく仕上げられているものの、GMT特有のどこでも使えるツールウォッチ的な魅力は損なわれていない。さらに、ブラックベイGMTは兄弟機から200mの防水性能を受け継いでおり、ホテルのプールでひと泳ぎするのにも、空港での長時間のトランジット中にちょっとしたダイビングに使用するにも躊躇する必要はないのだ。
ブラックベイ(先代のETAムーブメント搭載モデル)もダイバーズ専用のペラゴスの両方でダイビングした経験から、チューダーのダイバーズほど気楽に着けられる時計は滅多にないと思っている。
両方向回転24時間ベゼルはGMTマスターと設計思想は似て非なるものである。アルミニウム製のベゼルはRef.16710に見られるような明瞭さはなく、現行ロレックスのセラクロム製ベゼルのようなキラキラ感とは真逆の質感。代わりにブラックベイ GMTは、本シリーズお馴染みのカラーパレットから彩度が暗いネイビーブルーとバーガンディレッドの組み合わせが選択された。
艶消し仕上げにするために、アルミニウムインサートを使用したことは端的に言って素晴らしい。なぜなら、キラキラ感を抑えられただけでなく、全体の雰囲気をツールウォッチ的なものに仕上げ、セラミック製のベゼルよりも経年変化が楽しめるからだ(傷の付いたベゼルは美しい)。
もちろん、これについては異論があるだろうが、私は落ち着いた色の選択、マットな仕上げ、使用感が出せることすべてが素晴らしいと感じている。
本機には、通常のブラックベイの様式のとおり、GMTのダイヤルはマットなブラック、大きなアプライドマーカー、視認性の高い先端がスノーフレーク形の針(赤いGMT針も同じく)、そしてバランスの取れたフォント文字が組み合わされている。
3時位置にはシンプルで上品な視認性の高い白地に黒文字のデイトウィンドウを配置。GMTウォッチにはデイトが必要だが、3時位置は適切な配置場所と思える。特に、サイクロップレンズを採用しなかったことに賛辞を送りたい。
十分な蓄光料と視認性の高さを備えたブラックベイのダイヤルは非常にハンサムで、バランスに優れ、針やアプライドマーカーの周りを白金系金属で仕上げた細部もまた素晴らしい。
繰り返しになるが、私はブラックベイGMTの外観をとても気に入っている。現行のGMTマスターⅡよりも落ち着いていることに加え、ブラックベイ シリーズのデザインコードを引き継いでいることもその理由である。
ムーブメント
MT5652はチューダーの基幹ムーブメントの一員で、GMT機構はモジュールのような追加機構ではなく、専用機として開発されたため、ブラックベイGMTは同シリーズのダイバーズと同じ厚みに抑えることを実現した。COSC認定クロノメーターと70時間パワーリザーブに加え、4Hzで振動し、両方向巻上げ機構にシリコンヒゲゼンマイを備えている。27石、直径31.8mmのMT5652は価格に対して強力なバリューを提供しているといえる。この価格帯の自社製ムーブメントでこの内容は稀有であるだけでなく、チューダーは量産能力があっても実際に生産されることが稀なGMT機能を提供しているのだ。
ブレスレットとストラップ
さて、ブラックベイの他のモデルと同様、GMTは3つのブレスレットから選択可能。リベットタイプのスティールブレスレット、“Terra Di Siena(ローマ)”の愛称の茶系レザーストラップ、チューダーご自慢のブラック地に赤いストライプが入ったファブリックストラップの3種類だ。
私が注目するのはレビューで使用したスティールブレスレットだが、購入時に3本の中から選ぶことができる。バーゼルワールドで私はレザーストラップをトライして、その柔らかさと快適さを実感したが、分厚いフォールディングバックルの形状が私の骨張った腕には快適とはいえなかった。対照的に、ブラックベイの通常モデルを私はファブリックストラップで着用したが、こちらは完璧なフィット感だった。数ドルでも安く入手したい人は、ファブリックモデルが堅実な選択肢かと思う。
ブレスレットの作りは非常に良く、エンドリンクも堅牢で、好みの分かれるところではあるが、各リンクの端には細工が施されていて、ブレスレット全体には弛みも見られない。
私はとりわけスポーツウォッチの重厚さがあまり好きではないが、その点、ブラックベイGMTのブレスレットは非常によくできていて、堅牢でシンプルな3段階調節が可能なクラスプを備えている。さすがに1週間着け続けたところ重くは感じたが、それも私が自分の時計をすべてNATOストラップかレザーベルトに付け替えていることを割り引いて考える必要があると思う。
チューダーがこの分野のゲームチェンジャーだと思うのは、チタン製ペラゴスに搭載される自動調整スプリングクラスプの存在だ。これは私が考える最良のクラスプ機構で、他モデルへの応用を期待しているもの。
もしあなたがこれらの3つで迷っていて、近くに正規代理店があるなら、ブレスレットを着けてみてから、残りのストラップを試してみることだ。ちょっとした冒険は誰も傷つけないので、トライしてみよう。
On The Wrist
ブラックベイGMTは他のブラックベイと同じような着け心地だ。良い意味で「少し」でっぷりとしているものの、磨かれた側面と特徴的な四角いフォルムが実によく映える。私が「少し」と表現するのは、チューダーがブラックベイGMTで初めて採用したケース形状の些細な変更点をそれとなく伝えたいからである。その変更点とは、ケース裏側の手首の肌に当たる鋭利な部分を、傾斜を作ることで取り払ったことだ(下の画像を参照)。
私はETAムーブメント搭載モデルとMTムーブメント搭載モデルの両方をブラックベイで触れてきたが、GMTモデルが唯一エルゴノミクス(人間工学)面で進化のあったモデルといえそうだ。ETAムーブ搭載のブラックベイはケースのエッジが痛々しいほどシャープだったのを数年前のレビューで感じたので、これはケース形状に著しい改善がなされて間違いなくブラックベイGMTの装着性を高めていると思う。
補足すると、新しいブラックベイ フィフティエイトにはこのエッジ部の傾斜がないので、この仕様はGMT特有といえる(現在のところ)。
先述のケースのエッジは別として、ブラックベイ GMTのブレスレットは少し重いと感じたが、これは間違いなく私のブレスレットに対する基本的なスタンスに起因するものだ。もしあなたがブレスレット付きスポーツウォッチが好きなら、ブラックベイGMTが特段重い時計とは感じられないと思う。快適性は良好だし、クラスプで長さの微調整が可能なことからフィッティングに問題を抱えることもないだろう。
手首での存在感は、文字盤の視認性の良さ、蓄光料の発光、触らずにはいられないベゼルなど他のブラックベイのモデルと同様。私は手首に着けたブラックベイGMTが本当に素晴らしいと思った。既にかなりの本数のブラックベイが出回っていることを考えると、皆さんの中にもどう感じるかお分かりの方が多いのではないだろうか?
本稿の画像の大半は、サンフランシスコとロサンゼルスへの旅行からのものだが(自宅のあるバンクーバーからタイムゾーンの変更はなし)、その前の旅行ではブラックベイGMTのジャンピングアワーによるタイムゾーン変更を操作することができた。もし私のように頻繁に旅する人なら、この機能は便利すぎてきっと怠けてしまうことだろう。私のトラベルウォッチはロレックス エクスプローラⅡ(Ref.16570)なので、ブラックベイGMTは同一の機能を提供してくれるが、24時間回転ベゼルの存在はさらに先に進んでいます。飛行機が着陸すると、リューズを緩め、短針を新しいタイムゾーンに合わせて、列をなして飛行機から降りるのだ。
私はブラックベイGMTのようなトラベルウォッチの哲学が好きなのと同じように、カジュアルでありながら柔軟性に富んだスタイルがより好ましいと感じている。
GMTマスターⅡと異なり、ブラックベイGMTには自由放任主義の精神があります。もちろんドレスウォッチではないが、ロンドンでの会議を終えてジュネーブで夕食会に出席する際、ブラックベイGMTが全く場違いな時計と捉えられることはないだろう。その控えめな配色とやんちゃな魅力、さまざまなストラップへ換装できることからブラックベイGMTはテーラードスーツよりはむしろジャケットのような存在なのであり、そこに私は心地良さを感じるのだ。
競合モデル
ここまで読み進めてきた方々は、時計オタクに相応しい頭の体操をこなしているだろう。そう、ブラックベイGMTはその機能性だけで、他の品質面をすべて計算外にしても機械式時計として多大な価値を提供するからだ。直接対決できる時計は存在しないに等しいのだ。
さて、詳しく比較するために、機能群と価格面、2つの観点を紹介しよう。機能群は、ジャンピングローカルアワーによるGMT機能と24時間回転ベゼルによる調整機能。価格面では、この時計は42万円だということ。正直なところ、これと戦う相手は幸運を祈るしかないだろう。
同じ特徴を持つ、大まかに価格の近い時計から見ていこう。
ロレックス GMTマスターⅡ Ref.126710BLRO
生産終了した(また、それによって評価が高まった)Ref.16710の方が、競合としては強力なものの、2018年のバーゼルワールドで発表された新型GMTマスターⅡは間違いなく機能面で比較対象となる。このロレックスの新作は美しく、セラミック製ベゼルを持ち、ダイヤルのROLEXロゴが主張している。確かに(そして当然)GMT界隈ではアイコニックな存在ではありますが、価格も2倍を大きく上回り、入手も困難だ。とはいえ、ロレックスはチューダーと同じ機能を提供し、ブラックベイGMTについて議論するときに必ず引き合いに出されるのがRef.126710であることから、それ自体注目に値することといえる。
95万円 Rolex.com
オメガ シーマスター プラネットオーシャン 600m GMT
オメガ シーマスター プラネットオーシャン600m GMTは大きな時計を好む人や、オメガのダイバーズウォッチの美学に魅了される人々に訴求するパッケージを持つ興味深い時計だ。直径43.5mmに、かなり厚い17mmのケースを持つこのプラネットオーシャンGMTは、機能面では同じ(より先進的で先端技術志向のコーアクシャル クロノメーター ムーブメントを搭載)で、GMTマスターと外観が似ていないことによる利点もある。とはいえ、ブラックベイGMTは本機と比べて価格が半分程度なのとブラックベイ全般のサイズの方が一般向けであることから、この勝負には負けると思う。
80万円 omegawatches.com
今度は大まかに近い価格帯の時計だと、どの程度の機能が得られるかという観点で2本見てみたい。
ブレモン MB-Ⅲ GMT
ブレモンは硬派なGMTモデルをいくつかリリースしているが、冒頭でご紹介したように、そのどれもがローカルジャンプアワーを備えていないETA-2893-2をムーブメントに搭載している。購入の決め手となるのは、真のGMT機能が必要か否かだ。もし、タイムゾーンを跨いだ電話会議や応答待ちのやり取りが大半なら、独立した24時間針は最適である。つまりブレモンは、ベゼルとケース構造が複雑なため3割ほどブラックベイGMTより高額で、チューダーはよりパワーリザーブの長い自社製ムーブメントを搭載している一方で、少しケースが小さい(43mm:41mm)のだ。
60万円 bremont.com
タグ ・ホイヤー アクアレーサー キャリバー7 GMT
ブレモンと同じくETA2893-2を搭載する43mmのタグ・ホイヤー アクアレーサーは、ペプシカラーのベゼルを持ち、30万円を切る価格でブラックベイGMTの好敵手となり得る。3時位置のデイトウィンドウ、300m防水、ステンレススティールブレスレットを備えるアクアレーサーGMTは、チューダーが旅のために提供する機能と同等ではなく、少し大きいものの外観に優れ、独立したGMT針を持つ。上述したブレモンよりも安価ではあるが、程度の差こそあれほとんど違いはなく、つまるところジャンピングアワー付きGMTを買うか、ETAベース(10万円から探せます)のなるべくいいものを購入するかのふたつにひとつなのだ。
29万円 tagheuer.com
もしあなたがETAベースのGMTをお探しなら、ヘリオス シーフォースGMTも候補となるだろう。最も安価で、見栄えもよく、腕に巻いた感触も素晴らしいうえ、ブレモンやタグ・ホイヤーと肩を並べる出来だと思う。
少し話がそれましたが、皆さんは私の主張をご理解し始めているだろう。GMTウォッチは、サイズ、文字盤、デザインがほぼ無限にあるものの、最も信頼性の高いGMT機構(つまりジャンピングアワーのこと)となると、選択肢はそれほど多くなく、チューダーはさらに70万円以下の価格レンジに爆弾を落としたようなものなのである。実際のところ、ロレックスの魅力とGMTマスターⅡの系譜であるということは別として、ブラックベイGMT(愛称”ダイエットペプシ”)は多くの人にとって魅力的なパッケージングとなっている。
最終的な結論
私は最近編集者の集まり「One Watch Options」でこの時計を選んだ。もちろんRef.16710が理想であるのは否定しないが(私は薄くてエレガントなケースが比較的好み)、これらのGMTマスターⅡは既に生産終了していたり、非常に高価なことから、文字通りブラックベイ GMTの小売価格の何倍ものコストがかかる。
では、ブラックベイGMTは完璧かというとそうでもないのですが、良い線をいっています。私の好みからするとやや厚みがあるものの、1日で慣れてしまう程度だった。NATOストラップを試すチャンスがなかったが、サイズ感の近いセイコーSKX007の例を考えると、きっと完璧に似合うと思う。
また、根拠があるわけではないが、ブラックベイ フィフティーエイトのGMT版がリリースされたら、それこそクレイジーな程良いと思う(邪推しないで欲しい、後ほどコメント欄やインスタでお会いしよう!)。
美しいものを見つけるために世界中を旅しても、
それを理解する美しい心がなければ、
それは見つからないだろう。
– -ラルフ・W・エマーソン私は旅するのが好きで、遠く離れた場所を頻繁に旅することができる仕事に就いている。私は旅支度に思いを巡らしたり、計画を立てたり、細かいことを考えたり、旅先での負担を軽減するような、進化し続けるアイテムやTIPSを集めるのが大好きなのだ。
もちろん時計も大好きなので、旅の理想のお供としてGMTウォッチを身に着けるのは自然の成り行きだ。空港のラウンジや機内の狭い通路を通って自分の席に戻るときに、誰かが傷だらけのGMTウォッチをしているのを見かけると興奮してしまう。こういう時計は後生大事に扱われるよりも、危険をも共にして、付いてしまった傷は見聞を拡げた勲章みたいなものといえるのだ。
ブラックベイGMTは堅牢なスポーツウォッチであり、完璧なトラベルウォッチだ。リリースに至るまでの経緯で、2018年にGMTマスターⅡに非常によく似た時計を作り得たのは、ロレックスからの無言の承認があってこそだというのは非常に興味深いこと。サブマリーナーとは別に、ブラックベイとペラゴスという独立したダイバーズウオッチを製造してきた過去数年間のチューダーの商品展開に根拠を求めるなら、この話はとりわけ重要だ。
ただ、ブラックベイGMTの存在はラインナップをやや曖昧なものにしたとも感じる。それはチューダーがロレックスの最高のレシピを吟味して実際に作ったからだと思うのだ。ブラックベイGMTはロレックス からの厚い信任を受けながら、同時に、より手頃な価格で質の高い時計を提供したいという時計業界の想いを前面に出している。
ラルフ・W・エマーソンはかく語りき。
「美しいものを求めて旅をしてもそれを見て美しいと思う心がなければ、見つからないだろう」
彼は、旅全般について語りましたが、私は美しい時計を携えることにも同じことが言えるだろうと信じている。靴や鞄、服、携帯電話など持ち歩くものはすべて次第にくたびれていくものだ。しかし、チューダー ブラックベイGMTのような時計は一生分の旅行と冒険にたやすく付き合ってくれる。別のタイムゾーンを表示するだけの時計に幻想を抱いているかって? もちろんだ。しかし、その自覚のうちに、GMTがシンプル化してくれることに私は深く感謝し、尽きることのない喜びと紛れもないロマンを感じる。
旅行、そして冒険から災難まで、世界を探索するうえで遭遇する苦しみも含め、堅牢なGMTは疑いもなくツールとしての役割を果たしてくれるのだ。
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