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VINTAGE WATCHES 復刻版とオリジナルについて

本物そっくりのものはあるのだろうか?

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本稿は2022年4月に執筆された本国版の翻訳です。

HODINKEEのオフィスではここ数週間、時計業界の“新作発表シーズン”を消化することが話題になっている。ヴィンテージチームとして、我々の意見は期待に沿うものであるため、議論したり姿勢を整えるよりも、観察したり聞いたりすることのほうが多くなっている。そしてこのヴィンテージ記事で、我々の考えをお伝えしたい。幸運なことに、HODINKEEスタッフのほかのコーナーの意見は我々の大好きな方向へと傾いている。

 ジャック(・フォースター)が今年のショーのトップピックのひとつとして選んだヴァシュロン・コンスタンタン 222の復刻版は、我々にとってもうれしいニュースだった。ほぼそのままヴィンテージウォッチを復刻したこの時計を“スライスしたパン以来の素晴らしい発明品(とても優れているもの)”と銘打っても、我々から批判を浴びることはないだろう。ダニー(・ミルトン)は、より控えめかつ古典的で初期のサントスをモダンにアレンジした最新のカルティエ サントス デュモンに感銘を受けていた。そしてもちろん兄貴分のエクスプローラーIIから明確なインスピレーションを得たチューダー ブラックベイ プロは、巷(ちまた)で、さらにはオフィスでも話題になっている。

 仕方がないが、それでいい。時計の歴史のなかで最も偉大なデザイン時代である“ヴィンテージ”の数十年について語ることは、いつの時代も評価されることだろう。しかし(これは予想できたはずだ)、オリジナルに勝るものはない。最近復刻された本物のヴィンテージウォッチを以下からご覧あれ。


オメガ レイルマスター
By Rich Fordon

 レイルマスターは、“スピードマスター”、“シーマスター300”から成る3兄弟として、オメガが1957年に発売した野心的かつ象徴的なモデルだ。2014年のエリック・クー(Eric Ku)氏とのTalking Watchesをチェックして以来、私がずっと夢中になっている時計だ。クー氏が説明しているように、“これはミルガウス/エクスプローラーをオメガが解釈したものです。オメガは非常に重要な時計ブランドであり、これは彼らの重要で象徴的なスポーツツールモデルのひとつです”。これ以上ないほど同意する。ところでRef.2914-1のこの個体は、TWのクー氏が披露したものよりも優れている。

A screenshot of Talking Watches With Eric Ku on HODINKEE

エリック・クー氏とTalking Watches(ベンの最高の黄色いセーターが特徴だ)。

 多くの出版物やコレクターは、このレイルマスターをロレックスのエクスプローラー Ref.1016の代替モデルとして紹介し、そして誤解している。これは非常に表面的な比較である。クー氏によるTalking Watchesの引用で正しく言及されているように、レイルマスターはエクスプローラーとミルガウスのあいだに位置している。直径38mmのケースは非常にがっしりとしていて、手首に巻くと今風だ。レイルマスターにはヴィンテージロレックスにはない重厚感があった。2914 レイルマスターはもちろんのこと、1957年製のRef.2914-1が市場に出回る頻度は、初期の1016 エクスプローラーよりもはるかに低いため、コレクターがこの直接的な2択を迫られることはないだろう。

OMEGA's 1957 "Trilogy" Limited Edition Set

オメガの1957 “トリロジー”限定セット。

 記事の主題である復刻に戻ろう。2017年、“トリロジー”の60周年を記念して、OMEGAは1957年製スピードマスターシーマスター300レイルマスターを極めて忠実に復刻した。オメガが2017年の限定モデルを製造するために、レイルマスターの特定の個体を参考にしたとすれば、それはここにあるモデルだったかもしれない。夜光のトーンはほとんど同じようにクリーミーで不思議なほど美しい。唯一の違いは、このパティーナが5年前のオメガの工場で配合されたものではなく、70年間かけて獲得されたものであるということだ。

 私にとって“ヘリテージの”復刻版が効果的なのは、オリジナル版が1904年製のカルティエ サントス デュモンのような装着性に欠けている場合と、ジャガー・ルクルト ディープシー アラームのような金銭的な入手性・希少性に欠けている場合だ。これはそのどちらにも当てはまらない。レイルマスターのがっしりとした感じは2022年の日常的な時計としての実用性をもたらしており、このような初期モデルの市場価格は、同様のエクスプローラー、スピードマスター、サブマリーナーを手に入れるのに必要な金額を考えると妥当だ。続けよう。

A vintage Omega Railmaster

 確かに2017年の“トリロジー”レイルマスターは、ある意味まったく同じ時計だが、そうではない。同じ“トリロジー”の復刻以降、スピードマスター Ref.2915-1の価格は市場とともに大幅に上昇しており、オリジナルと完璧に同じものは存在せず、さらにオリジナルとまったく同じようにつくられたものさえも存在しないという理解を示している。当時の魅力と本物を復刻することは誰にもできない。


ホイヤー カレラ “ダート45”
By Saori Omura

 オリジナルと復刻モデル。現代の技術をバックボーンとして構築した現代の復刻版を選択することには、一定のロジックがある。それらは通常、耐久性と精度が向上しているということ。また、時計の世界への自然な入り口でもある。好奇心は一番の味方だ。それが何なのか、どうやってそうなったのか、ますます興味が湧いてくる。そしてそのデザインについて、また現代に至るまでの進化について、より深く知ることになる。オリジナルの素晴らしさが理解できるようになるのは、そのときだ。やや“不完全”なバージョンなのに、何かとても魅力的なものが秘められ、なぜそれがあなたを引きつけるのかよくわからない。ただそれこそがヴィンテージウォッチなのだ。

A vintage Heuer Carrera Dato 45

 今週のオリジナルと復刻版比較での私のお気に入りは、1960年代のホイヤー カレラ “ダート45” Ref.3147Nだ。ご存じかもしれないが、2021年に発表したHODINKEEのタグ・ホイヤー カレラ“ダート”リミテッドエディションのモデルとなったオリジナルだ。大胆な角張ったラグを持つスティール製ケース、アシンメトリーな3レジスターを持つ漆黒の文字盤、9時位置という珍しいデイト窓表示など、オリジナルデザインの主要なDNAがすべて詰め込まれているのが現代バージョンだ。こちらはオリジナルの45分積算計から30分積算計へと変更され(したがって“ダート45”ではなく“ダート”)、自社製ムーブメントヘトアップデートされた。確かにそれはクールで今の時代にぴったりなデイリーウォッチだが、オリジナルのRef.3147Nを1度目にすれば、オリジナルのよさがさらにわかると思うし、特別限定版にこのリファレンスを選んだ理由もわかると思う。

A vintage Heuer Carrera Dato 45

 このカレラがホイヤーのカタログに登場した1966年に話を戻そう。1960年代は、スポーツウォッチというカテゴリーが本格的に形成され始めた年である。ダイバーズウォッチ、クロノグラフ、そして頑丈な“アドベンチャーウォッチ”の人気は、旅行や探検の人気が高まるにつれて高まっていった。ミッドセンチュリーデザインのシンプルさを表現し、機能性と美しさを兼ね備えたカレラである。クリーンなラインと単色の配色は、まさに機能性を前面に押し出したものであった。しかし同時にさまざまな環境でも万能に着用できるよう、ちょうどいいスポーティさとビジネス性を兼ね備えていた。技術的に言えば、それは回転式の日付ディスクを備えた最初のクロノグラフウォッチでもあったが、今日の基準ではいたって普通のことのように思えるだろう。そして9時位置の日付は、普通でないことを恐れない姿勢が加わっているのがいい。そしてこのヴィンテージウォッチに私を魅了するディテールがひとつある。それは時間の経過でしか得られない本物のパティーナだ。これには思わず手に取って、手首につけたくなるような暖かさがある。その感情的な結びつきが、いつまでも私をオリジナルに引きつけるのだ。


ラドー キャプテンクック
By Sean Egan

 今週は、あまりの素晴らしさに復刻や再版が求められた時計を紹介しよう。例えば、ラドーがオーバーポールを発表したように、このヴィンテージのキャプテンクックをHODINKEE ヴィンテージの金庫から取り出すのは、今がまさに適切なタイミングだと思うのだ。2017年にラドーがヴィンテージダイバーの復刻を発表したとき、多くの人を驚かせた。当時のブランドはセラミックと薄いクォーツムーブメントを使用していることで知られており、ラドーが1960年代ダイバーズを完全復刻して発表するとは誰も予想していなかった。最新の自動巻きムーブメントやセラミック製ベゼルなど、いくつかの重要なアップデートが含まれている。しかし彼らが残したものはヴィンテージのサイズ、ダイヤルに向かって傾斜するベゼル(通常のダイバーズウォッチとは逆)、そして私のお気に入りの機能であるフローティングアンカーのロゴなど、はるかに興味深いものである。

Rado's new Captain Cook Over-Pole Limited Edition

 限定のオーバーポールは、ヴィンテージモデルをさらに忠実に再現し、手巻きムーブメントへと回帰させた。しかし今回はサイン入りムーブメントを披露するために、ダブルシーホースが刻印された裏蓋をやめてシースルーバックとした。オーバーポールのヴィンテージの例はライスブレスレットや、(驚いたことに)ゴールドプレートにシルバー文字盤など、いくつかの異なる方法で提供された。私に言わせれば、キャプテンクック/オーバーポールシリーズの次の復刻版はこれであるべきだ。ヴィンテージエディションだけで十分という人は、トロピカルダイヤルが魅力なキャプテンクックをチェックして欲しい。

A vintage Rado Captain Cook

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