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Hands-On オメガ スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールを実機レビュー

ヴィンテージピースのような雰囲気とモダンな作りが違和感なく同居した、ファン垂涎の新型Cal.321を搭載したスピードマスターの魅力に迫る。

 2020年に発表されたオメガの新作の中で、最も注目を集めたモデルは何か。先日発表されたばかりのスピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデルであろうか。SNSなどでも相当盛り上がっていたし、今も、いつ買えるのかと気になっている人は、数多くいるに違いない。確かに、魅力的なモデルの1つであることに間違いないだろう。

 しかし、新作の中で個人的に最も気になるモデルとなったのは、年明け間もない1月に発表されたスピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールだった。本作は、長らくその復活が切望されていたオメガのアイコニックなクロノグラフムーブメント、Cal.321の再生産版を搭載したモデルである。

 Cal.321の再生産が発表されたのは2019年のことで、このムーブメントが初めて搭載されたのはスピードマスター ムーンウォッチ 321 プラチナだ。モデル名からも想像できるかと思うが、この時計はケースにプラチナを採用した特別なモデルで、価格も638万円(税抜)。非常に高額なスペシャルピースとなっていた。正直なところ、この時計は一般的なモデルではない。それゆえ「SSケースで出してくれたら良いのに」と感じていたのは筆者だけではないだろう。そんな時計好きの声に応える形で発表されたのが、まさにCal.321を搭載したSSケースモデル、スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールというわけである。
 発表自体は早かったものの、その後はコロナ禍の混乱もあって一向に販売される様子がなかった。そんな気になる新作が、いよいよ日本でも入荷が開始スタートしたのだ。

もっと早くに出会いたかった。

 時計を見て最初に抱いた感想が、これだ。なぜ、こう思ったのかを記しておきたい。
 インスタグラムのライブ配信などで、何度か話をさせていただいたのだが、筆者は今年、“オメガ 1957 トリロジー” スピードマスター 60周年リミテッド エディション(311.10.39.30.01.001。以降、オメガ 1957 トリロジーとする)を購入した。

 購入を決めた理由はいくつかあるが、もっとも大きなポイントとなったのはサイズである。スピードマスターにはいくつかのタイプがあるが、一部の特殊なモデルを除くと、サイズは概ね手巻きクロノグラフを搭載したものは42mm、自社製の自動巻きコーアクシャルムーブメントを搭載したものでは41.5mmか44.25mmとなっている。スピードマスターの中でも40mm以下のモデルが欲しかったため、この条件で探すと、エボーシュベースの自動巻きクロノグラフタイプか、あるいは一部の特殊な手巻きモデルに選択肢は限定された。

 その中で、40mm以下のスピードマスターという筆者の好みにマッチしたのが、38.6mmサイズの“オメガ 1957 トリロジー”だったというわけだ。一方、新作のスピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールは39.7mm。筆者好みのアンダー40mmだ。

筆者所有の“オメガ 1957 トリロジー” スピードマスター 60周年リミテッド エディション。

 オメガ 1957 トリロジーはもちろん、非常に気に入ってはいるのだが、全く不満がないわけではない。あえて言えば、ムーブメントである。オメガ 1957 トリロジーが搭載するのは、スピードマスターにおいて定番の手巻きクロノグラフとして知られるCal.1861。1997年から登場した信頼性の高いムーブメントではあるが、約48時間とパワーリザーブがやや短いところが気になっていた。使っていてすごく気になるというレベルではないのだが、スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールが搭載するCal.321は少しだけパワーリザーブが長く、約55時間となっている。劇的に伸びているわけではないが、個人的にはパワーリザーブは長いほうが好みだ。

復刻版のCal.321。

Cal.1863。Cal.1861のトランスパレントバック仕様だ。

 また、筆者はムーブメントマニアというわけではないのだが、スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールが搭載するムーブメントは極めて見応えのあるものだった。筆者が所有するオメガ 1957 トリロジーはソリッドバックケースなので、裏蓋側からムーブメントを見ることができない。そこで、今回は比較のために、手巻きプロフェッショナルのトランスパレントバック仕様(厳密にいうと搭載するのは、Cal.1861をシースルー仕様にして仕上げを施したCal.1863)もお借りした。

 並べて見ると、Cal.321はセドナゴールドメッキが施されており、落ち着いたゴールドカラーはヴィンテージのCal.321を思わせるような印象を与える。どちらがいいかは人それぞれの好みによるだろうが、雰囲気のあるCal.321はなかなかに目を楽しませてくれる。

 これは手巻きのスピードマスター全般にいえることだが、大きなリューズも見るべきポイントだろう。本作は、リューズガードをケースの構造が兼ねた、いわゆる“プロフェッショナルケース”ではないため、リューズがつまみやすい。手巻きムーブメントゆえ、定期的に主ゼンマイを巻き上げる必要があるが、程良い大きさのリューズは指でしっかりとつまみやすく、ストレスなく巻くことができる。

 そして、スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールで最も気になったのは、先ほども少し触れたケース、そして、そのケースに合わせるブレスレットとバックルである。

 直径39.7mmのケースは、オメガ曰く「1965年にアメリカ初の宇宙遊泳で着用されたモデルと同じ、第3世代のスタイルからインスピレーションを得たもの」だという。これは、ファンの間で“ストレートラグ”と呼ばれる当時のスタイルを再現したもので、スピードマスターのセカンドモデルやサードモデルに見られたディテールだ。

 そんなケースに合わせるブレスレットとバックルも、やはり当時採用されていたものがデザインの源泉になっている。言及されているわけではないし、ラグ幅も異なるので全く同じではないが、これはスピードマスター アポロ11号 50周年記念 リミテッド エディションに見られたものと、ほぼ同じデザインとなっている。

 元となったブレスレットは、1950年代から1960年代に発売されていたもので、スピードマスターを始め、レイルマスター、シーマスターなどにも使われていた。見た目が戦車のキャタピラに似ていることから、ファンの間では通称“キャタピラブレス”と呼ばれており、今では手に入らない希少なヴィンテージブレスレットとして根強い人気を得ている。
 もちろんバックルも当時のものからインスパイアされたもので、Ωマークの先端が飛び出したクラスプ、そしてブレスレットのデザインに合わせて両サイドのステップ部分がポリッシュ仕上げになっている。

 一方で、作りはしっかりとモダナイズされている。コマは板巻きや中空ではなく無垢の削り出し、コマの調整もピンではなく、ネジで行うタイプで堅牢性の高い仕様となっている。定番のプロフェッショナルなどに見られる、サイズ調整が簡単に行えるスライド式のアジャスターは搭載されていないが、その分バックルの大きさも控えめで、全体のバランスはいい。

 今、市場ではヴィンテージのスピードマスターが非常に高い人気を得ているが、こうしたヴィンテージピースにインスパイアされたディテールの再現は、確実にファンのニーズを掴むものである。こうしたニーズにちゃんと応えたプロダクトを用意してくれるオメガの姿勢は、いちファンとして素直に嬉しい。

 ちなみに、ヴィンテージのスピードマスターの特徴については、「Reference Points オメガ スピードマスター 歴代モデルを徹底解説」で、その詳細を知ることができるので、こちらの記事も合わせてチェックしてみて欲しい。

 本作は、デザインこそヴィンテージのスピードマスターにインスパイアされたものだが、ブレスレットやバックルなどと同様、ディテールは現代的にアップデートされている。

 インデックスは適度なフォティーナカラー(オメガ 1957 トリロジーよりは控えめ)となっているが、光を受けるとはっきりとグリーンに発光。プロフェッショナルと同じように、暗所でも高い視認性をもたらしてくれる。

 また、盛り上がった風防は一見、プロフェッショナルではおなじみに強化プラスチックガラスのようにも見えるが、本作で採用されているのは内側に無反射処理を施した強化サファイアガラスで、傷が付きにくく耐久性に優れた仕様となっている。また、風防の中央部分には、おなじみのΩマークが小さく施されているのも確認できる。

発光前。

発光後。

 前述の“もっと早くに出会いたかった”という言葉が全てを物語るのだが、先にスピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールを購入できる機会に恵まれていたら、おそらくこちらを購入しただろう。そう思わせるほど、本作は非常に魅力的なモデルであった。

 筆者同様、多くのファンが本作に熱い視線を注いでいるようで、市場で見るチャンスはまだ少ないかもしれない。しかし、ひと目見れば、本作が極めて魅力的な1本であることが、きっとすぐに理解いただけると思っている。

オメガ スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール Ref.311.30.40.30.01.001:ケース径39.7mm、 SSケース、シースルーケースバック。ムーブメント:Cal.321、1万8000振動/時、手巻き、パワーリザーブ55時間、水平クラッチ、コラムホイール制御、オーバーコイルを備えるヒゲゼンマイ、セドナゴールドでメッキ加工したプレートとブリッジ。機能:時、分、秒表示、クロノグラフ。5気圧防水。月で初めて着用された「ST 105.003 」のケースに基づく設計、ホワイトエナメルの数字を配した「Dot Over 90」セラミックベゼル。価格:151万円(税抜)

スペックの詳細は、オメガ スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティールのIntroducing記事をご覧ください。

詳細はオメガ公式サイトへ。