この記事はHodinkee Magazine Vol.12(US版)に掲載されています。
HODINKEE MagazineのVol.10(US版)が刊行されたとき、我々は伝統的なReference Pointsを掲載した。そのときテーマはロイヤル オークであった。その記事の動画を公開する際、我々は少々説明を加えた。ロイヤル オークは単なるひとつのリファレンスではなく、時計製造の歴史そのものなのだと。Vol.12(US版)が発売された今、同じ方法でReference Pointsの新たな作品をリリースするときが来た。新たなテーマはオメガのシーマスター 300である。
この記事の題材を考えたとき、私たちの頭のなかにはほとんど即座に、時計界で最も有名な名前、いや、ペットネームのひとつであるシーマスターが浮かんだ。以前、我々はスピードマスターのReference Points記事をまとめたが、シーマスターはそれとはまったく別物だ。RO(ロイヤル オーク)と同様、シーマスターはそれ自体がリファレンスというよりも、ひとつの時計の世界を定義する存在となっている。そこで我々はシーマスターの特定の個体、特定のリファレンスを、ほかのものと区別することを目指した。ロレックス デイトナに関しても、前編はポール・ニューマン・デイトナ、そして後編では “非ニューマン”モデルを取り上げたふたつのReference Pointsの記事で、似たようなことをしたのを思い出すかもしれない。
Vol.12(US版)でオメガ シーマスター 300を取り上げたのは、ダイバーズウォッチとツールウォッチの歴史において非常に重要な存在であり、その背景には断片的ながら素晴らしい物語が潜んでいるからだ。スピードマスターとレイルマスターを含む1957年の3部作から生まれたシーマスター 300は、まったく新しいモデルではなく、むしろ1948年以来、より日常的なフィールドウォッチ/ワークウォッチとして存在していた既存のシーマスターシリーズの延長線上にあった(その名はダイバーズウォッチであることを声高に叫んでいるにもかかわらず)。
シーマスター 300は、1957年の発売から生産停止となる1970年代まで、ミッドセンチュリー期の生涯をまっとうした。そのあいだ、民間用と軍用の両方に時計を提供し、わずかながらもデザインと機能性には重要なバリエーションが存在した。2014年、オメガは “300”系を復活させ、経年加工とさまざまなヴィンテージ風の美観を加えつつ、ベゼルインサートにリキッドメタルなどモダンな雰囲気を加えた懐古趣味的なパッケージを完成させた。1970年から2014年にかけて、“ボンド シーマスター”として知られるようになったシーマスター ダイバー 300Mが誕生したが、これは伝統的なシーマスター 300とは異なる点に留意されたい。
2010年代に復活を遂げたこのリファレンスは、2021年現在、2度目の現代的デザインに生まれ変わっている。このリファレンスは、アルミニウム製ベゼルインサートと新デザインのサンドイッチダイヤルを備えている。オメガは今年、シーマスター誕生75周年を記念して、現在販売されているすべてのシーマスターにブルーのモデルを追加した。これは若干のアップデートが行われたモデルレンジの、現在の旗手である。“サマーブルー”シーマスター 300は、グラデーションブルーのダイヤル、クローズドケースバック、そして新しいセラミックベゼルのブルーの色合いが特徴だ。
コレクションの観点からは、ヴィンテージの300系が時計コレクターに注目されていることは否定できないが、鮮やかな色彩のワイルドなプレシャスメタルケース×ストーンダイヤルから、ダニエル・クレイグが劇中で着用するボンドウォッチまで、現代のバージョンは独自の道を切り拓いている。このReference Pointsの動画では、シーマスター 300の全モデルを可能な限り集めてみた。ジェームズ・ステイシー、リッチ・フォードン、そして私がHODINKEE本社で一堂に会し、そのすべてを紹介した(フォードンには、この記事をサポートし、ここに掲載されているすべての時計を調達してくれたことに、この場を借りて感謝の意を捧げたい)。
1957年から今日まで、40年以上の時を経て、シーマスター 300はダイバーズウォッチの歴史において重要な地位を占めるに至った。オメガ シーマスター 300に関するVol.12(US版)のReference Points記事の番外編ともいうべきこの動画を、ぜひお楽しみいただきたい。
Reference Pointsの全文、オメガ シーマスター 300の全文は、HODINKEE Magazine(US版)の最新号Vol.12をご覧ください。H Shopでも購入可能です。
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