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Hands-On H.モーザー その名にふさわしいパイオニア・センターセコンド メガ・クール

バカンスのために作られた熱いネーミングの時計を、バカンスに連れて行く。


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4月に「H.モーザー パイオニアの新コレクション メガ・クールにセンターセコンドとトゥールビヨンの2モデルが登場」という記事を書いた。ブランドのカタログに掲載された、夏にぴったりの時計だ。その時は春先の爽やかな時期で、実際にこの時計を手に取ることはできなかった。しかし、今は常に汗をかくような気温だし、この時計の出番と感じられる季節に、身につけて過ごす時間が十二分にもてるようになった。

 メガ・クールという名前について説明しよう。この言葉に抵抗を感じる方もいるだろうが、グローバルな視点で考える必要があることを覚えておきたい。“Mega”は多くのアメリカ人にとって時代遅れの形容詞のように思えるかもしれないが、ヨーロッパの多くの言語では“very”や“super”に相当する。この時計が発売されたときに、H.モーザーのCEOであるエドゥアルド・メイラン氏に話を聞いたが、彼はこの名前について非常に率直で、「自然に生まれて、そのまま定着した」と説明してくれた。製作中にこの時計を見た同社の社員の多くは、文字通り“Mega Cool”と言ったという。

 約3週間の使用を終えた今、私はこのネーミングセンスに異論はないと感じている。特に今年発売されたほかのモデルとの比較においては、このモデルを表現する最も適した表現だと思う。ロレックスのエクスプローラーオメガのシーマスター、そしてカルティエのタンクもアップデートされた。しかし、それらはいずれもノスタルジーを追求した伝統的なコレクションだ。一方、今回のデザインは宇宙的で未来的な要素を取り入れた、完全にモダンなものだ。42.8mmのケースサイズも含め、すべての要素が際立っていて、まるでアニメーションのようだ。

 そこで、この時計のスピリットに則り、妻と一緒にポーランドの義理の両親を訪ねる休暇にこの時計を持っていくことにした。H.モーザーを購入する人の多くは幅広いコレクションを所有すると思うが(つまり、この時計が誰かの唯一の時計になることはないだろう)、この新しいメガ・クールのすべてがバケーションのための時計であると言っているようだ。

 水辺で過ごしたり、街を散策したり、四輪バイクでオフロードを走ったりもした。ちなみに、まだ乗ったことのない人にはぜひ乗ってみてほしいと思うが、絶対に運転席がいい。私は運転席と後部座席の両方を経験したが、後者は本当に恐ろしかった(シートベルトもなく、2本のハンドルバーにつかまるだけで時速40mi、約65kmで走る...もうゴメンだ)。

 通常、私が時計を使用したりその記事を書いたりする際は、社交的な使い方ではなく、一人で時計と過ごすことが多い。今回は家族に囲まれていたこともあり、そのことで時計に対する新たな視点を得ることができた。滞在中ほかの時計を身につけていたとき、メガ・クールの何か(おそらく派手な色)が皆の関心を集めていた。彼らはこの時計を見たがり、触りたがり、そしてシースルーケースバックから見えるメカニックなことをもっと知りたがってくれた。私は時計の記事を書くことを生業としているが、余暇にも同様に時計の話をしているので、喜んでリクエストに応えた。

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 実物のメガ・クールを見てすぐに驚いたのは、その大きさだ(“実機は”という言い方にはもう飽きた)。手首に装着する前から、ケースが巨大であることを実感した。その理由のひとつは、ベゼルがほぼないことにある。大部分がダイヤルで、しかもそれが素晴らしいのだ。

 ターコイズ色のサンレイ仕上げが目に飛び込んできて、ブランドが意図するビーチや海の雰囲気を表現している。ダイヤルは非常にミニマルで、透明なブランドロゴを見逃してしまうかもしれない(よく見るとわかる)。しかし、この時計の全体的な美しさに大きな影響を与えているのは、針とインデックスだ。ダイヤルにはホワイトとステンレススティールが混在しており、SS製のアプライドトライアングルマーカーとホワイトのサーキュラーマーカーが並んでいる。

 針はモーザーのストリームライナーコレクションからそのまま採用されているが、正直言って、これがこの時計の外観を完成させているのだ。ホワイトの時針、分針、秒針のフレームレスなフローティング効果が、サイズを感じさせない視覚的な軽快さをもたらしている。

 ケースは、サテン仕上げと側面のエングレービングパターンの組み合わせで美しく仕上げられている。リューズガードはなく、リューズの大きさやグリップ感から操作性は優れている。

 時計を裏返すと、3日間のパワーリザーブを備えた自社製のHMC200ムーブメントが現れる。私は普段、シースルーのケースバックにはあまり関心がないが、義理の両親に時計の内部を見せる過程で、自分もムーブメントの仕上げをじっくりと見てしまった。モーザーはムーブメントをケースにうまくフィットさせて、見るに相応しいものにしたと思う。よくあるケースでは、後付けでシースルーバックを採用し、ケースよりもはるかに小さいムーブメントを入っていることがあるが、今回のものは適切だと思う。

 この時計のデザインのすべてが、抑制された(いい意味での)実験のように感じられた。なにしろ1万5000ドルを超える(日本円で税込181万5000円)SS製の時計なのだから。しかし同時に、この時計を身につけた後、この時計がいかにツールウォッチのように機能するかに気づかずにはいられなかった。しかも2050年のツールウォッチのように。映画『フィフス・エレメント』の登場人物の腕に、この時計がつけられているのが目に浮かぶようだ。

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 私は、この時計をレザーの裏地付きファブリックストラップで着用する機会をもった。最初はSS製のブレスレットにとても興味があったが、これを体験ができてよかった。というのも、ストラップの鮮やかなブルーが、この時計の外向的な個性をさらに引き立てているからだ。ターコイズ色の43mm近いダイヤルの時計を身につけるなら、ターコイズのレベルを11まで上げて、それにマッチしたストラップをつけるべきだと思う。

 サイズについて。時計ライターにとっては忌ま忌ましい常套句だが、サイズから想像されるよりも手首につけると小さく感じる。しかし、それは事実だ。その理由のひとつは、10.6mmという薄いケースにある。正直なところ、時計の大きさはケースの厚さに大きく左右される。手首への装着性が向上したからといって、アニメのように大きなダイヤル面が45mmの時計を感じさせなくなったわけではない。しかし、このようなワイルドな外観の時計であれば、それも許容できる。

 モーザーは、モダンな時計のデザインを楽しんでいる数少ないブランドのひとつだ。ウルベルクやMB&Fのような完全にアヴァンギャルドなデザインではなく、普通に身につけられるようなバランスのとれたアプローチをしている。これはいったい何だろうと思いながらこの時計を見ることはない。従来の時計デザイン言語をもち、色使いや現代的な美学によって一般の人々の興味をそそるのだ。一言で言えば“かっこいい”。二言で言うと、まさに“メガ・クール”だ。

 H.モーザー パイオニア・センターセコンド メガ・クール:42.8mm×10.6mmのSS製ケース。120m防水。ドームサファイア風防とシースルーバック。ムーブメント:HMC 200自動巻きキャリバー、27石、2万1600振動/時で駆動。3日間のパワーリザーブ。 ブルーラグーンフュメダイヤルにサンバースト仕上げ。ダークグレーのアプライドアンスラサイトマーカー(スーパールミノバ)。時針と分針にはグロボライト®のインサート。ストラップは、ケブラー、ラバー、アリゲーターレザーストラップ、またはSS製ブレスレット。価格:181万5000円(税込)。

All Photos, Kasia Milton