LVMH時計部門は、ゼニス、タグ・ホイヤー、ウブロ、ブルガリの新作時計を2022年1月24日(月)から開催中のオンライン展示会「LVMHウォッチウィーク 2022」でリリースする。
LVMHウォッチウィーク2022の真っ只なかだが、1週間前にタグ・ホイヤーがオータヴィアシリーズの新作を発表したときのことを振り返ってみよう。
ブランドエディターであるローガン・ベイカーは、この時計が上陸したときに記事「タグ・ホイヤー オータヴィア 60周年を祝うふたつのコンプリケーションモデル」を執筆している。ホイヤー、タグ・ホイヤー、そしてオータヴィアシリーズにまつわる歴史的な逸話が豊富な彼の記事、ぜひご一読を。軍用フライバッククロノグラフのサプライヤーとしてのブランドヒストリーについても少し触れられている。
言うまでもなく、オータヴィアは歴史的に見てもホイヤーの名を語る上で欠かせないコレクションだが、その人気は年々落ちているようだ。創業当時は、レースで有名なホイヤーの複雑機構であるクロノグラフだけで構成されたラインだった。ここ10年ほど、オータヴィアブランドの時計は、事実上、ホイヤーロゴのみの投げやりなデザインでリリースされるのみだった。
2019年、タグ・ホイヤーは当初オータヴィア アイソグラフと呼ばれていたものを発表し、オータヴィアラインのアイデンティティを大きく変えた(その後、アイソグラフの技術的な課題でモデルチェンジされた)。このモデルは、パイロットスタイルの文字盤、両方向回転ベゼル、時刻・日付表示を組み合わせた、総合的なデザインを採用していた。しかし、この時計はクロノグラフではなかった。
そして、このモデルは過去3年間そのまま維持されていたが、先週、同社はオータヴィアの3つのバリエーションを発表。2種類のクロノグラフ、そしてGMTコンプリケーションを搭載した3針の新作だ。今回は、このラインの真骨頂であるクロノモデルに焦点を当てる。
全体的な外観は、基本的に2019年のモデルチェンジに見られるようなアイデアを継承している。大きなアプライドマーカーも、回転ベゼルも、デイト表示も健在。新しいのはダイヤルレイアウトで、クロノグラフムーブメントに対応するみっつのサブレジスターを搭載するようになった。また、クロノグラフを操作するためのふたつの大きなプッシャーがリューズの横に設置されている。
新しいオータヴィア クロノには、ふたつのバリエーションがある。ひとつはスティール製でシルバーのサンレイ文字盤、もうひとつはブラックDLCコーティングが施されたスティール製でブラックサンレイ文字盤を備えたもの。後者はグリーンの夜光が施されている(光っていないとき)。
シルバーのバリエーションは、実際にパンダダイヤルでなくても、パンダの文字盤に限りなく近い印象を受ける。シルバーのパンダベアみたいなものが存在しないならパンダダイヤルと言えるだろう。ローガンは、このバリエーションと過去のクラシックなシフェールダイヤルのホイヤー オータヴィアとのあいだにある類似点を指摘した。
ブラックダイヤルにグリーンの夜光のバージョンは、まさにステルス性の高い魅力的な雰囲気がある。数字のスタイルに至るまで、昔のホイヤーが作っていた軍用パイロットクロノグラフを彷彿とさせるものだ。
このふたつの新しいクロノグラフは、特にスティールとシルバーのオプションで、非常にインダストリアルな雰囲気を持っている。リューズにはローレット加工が施され、握りやすい。また、プッシャーは操作しやすいように高さが出されている。また、本モデルはプッシャー押し込むだけでゼロに戻り、再び動き出すフライバック機構を搭載。この機能は、オータヴィアの歴史のなかでも初めてのものだ。この機能を試すための実用的な機会がないとしても、これはとんでもない隠し芸といえる。機械式時計を愛する者として、こんなことを言うのは心苦しいのだが、事実なのだ。
このフライバック機能を駆動するムーブメントは、タグ・ホイヤーのクロノメーター認定Cal.ホイヤー02フライバックで、ディスプレイケースバックからスマートなブラックローターがついた姿で見ることができる。直径31mm、厚さ13mm以上となる大型のムーブメントだ。
実際、どちらの時計も小さいとは言い切れない。説明するのが難しいほど分厚いのだ。42mm径のケースは、45mmのように感じられ、ケースの厚さは16mm近くある。この時計を収めるには、シャツの袖口に相当なゆるさが必要だろう。私は個人的に(もちろん、それらを誇示するために)カフの上にこの時計を着用したいと思うが、このやり方は袖の下に収めたい人々にとっても注目する価値があると思う。
手首のサイズが6.5インチ(約16.5cm)の私にとって、これは自分で使うには少し大きすぎると感じた。前にも話したが、私は時計に身につけられているような感覚が好きになれない。とはいえ、この新しいクロノには、評価すべき点もたくさんある。2019年に発売されたオリジナルの3針モデルは、今後のラインの基礎作りのようなものだと感じている。その点、これらは論理的な次のステップのように感じられ、3年前にデビューを見ていた私たちは、このデザインを受け入れる準備ができていたのだ。
重厚なアプライド数字と太い夜光が施された針で、視認性は抜群だ。ブラックダイヤルの方が、針と数字のグリーンのコントラストが効いていて、より見やすいと思う。
巨大なサイズにもかかわらず、本機はすべてを兼ね備えている。両方向回転ベゼルは、クロノグラフ機能を使用するのが面倒な場合に便利だ。また、6時位置にはデイトウィンドウがあり、文字盤のシンメトリーを保っている。またデイトディスクはブラックで統一され、クロノグラフと回転ベゼルで時間を計測したあとに、今日が何日なのかを知る必要がある場合に便利だ。
しかし、3本目の時計も外せない。基本的には2019年のオータヴィアの複製で、ベゼルとカラフルな針が新しくなっただけなので、かなり馴染みがあるはずだ。オータヴィア GMTは、クロノメーター認定のCal.7(セリタ SW300ベース)ムーブメントによって、このラインに初めて2タイムゾーン機能を導入。ブルーとブラックのバットマン風ベゼルは、ほかのデザインに比べて少し違和感があるが、全体的にはオリジナルの3針モデルを踏襲した格好いい時計に仕上がっている。
2019年のオータヴィアに続き、これらの時計には、ボタンを押すだけで簡単に取り外しができる特殊なモジュール式のクイックリリースシステムを搭載したストラップが装着されている。正直なところ、プラスチックっぽい音がしない、標準的なストラップの感触の方が個人的には好きだ。ちょっと違う感じがしてしまう。しかし、ストラップを変えるのが好きで、工具を使う時間がまったくないような消費者にとっては、間違いなく魅力的な製品だろう。
私の手首には、モダンなオータヴィア クロノグラフの復活はちょっと合わなかったが、タグ・ホイヤーがコレクションの新バリエーションに全力を注いでいることは間違いなく評価すべき点だ。これは本格的なムーブメントを搭載した、頑丈で高性能なクロノグラフだ。オータヴィア誕生60周年という記念すべき年だからこそ、このようなモデルが登場したのである。
タグ・ホイヤー オータヴィア 60周年アニバーサリー フライバック クロノグラフとタグ・ホイヤー オータヴィア 60周年アニバーサリー GMT。42mmケース、ステンレススティール製またはDLCコーティングステンレススティール製。クロノグラフは15.68mm、GMTは13.65mmのケース厚。100m防水、文字盤はクロノグラフがシルバーとブラック、GMTはブルー。 クロノグラフはCal. ホイヤー02 フライバック(COSC認定)、GMTはCal. 7 GMT(ベースはセリタ SW300)を搭載(COSC認定)。パンダダイヤルモデルが74万8000円、ブラックDLCモデルが82万5000円。GMTモデルは49万5000円(すべて税込)。
その他、詳細はタグ・ホイヤー公式サイトへ。
Photos, Tiffany Wade
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