ちょうど1年前、オーデマ ピゲはその最も象徴的な時計に、おそらく長いあいだ待たされていたとはいえ、大規模な変更を加えた。オーデマ ピゲ ロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラシンだ。我々はRef.15202に別れを告げ、生まれ変わったRef.16202を目にすることとなった。新しい時計のプロポーションはそのままに(昨年のベン・クライマーによる紹介記事)、内部のムーブメントは完全にオーバーホールされた。16202は、スティール、イエローゴールド、ピンクゴールド、プラチナの4種類の金属で発表された。そのなかで、(チタン以外に)意外にも存在しなかったのがホワイトゴールドだった。それが今日、大きく変わったのだ。
オーデマ ピゲは、16202のラインナップに新たに加わったRef.16202BC.OO.1240BC.02(このやけに長いリファレンスを覚えられるだろうか)を発表。39mmのロイヤル オーク“ジャンボ”エクストラ シンは、このモデルシリーズに期待されるものと同じケーススタイルだが、上部と下部にそれぞれいくつかの相違点がある。そして、このモデルは限定モデルで、その数量はまだわかっていない。
昨年の新作はオーデマ ピゲの特徴であるプチタペストリーが使われていたが、このホワイトゴールドのジャンボはテクスチャーの選択でより興味深いものとなった。このブルーグレインダイヤルは、1992年にロイヤル オークコレクション20周年記念として製作されたロイヤル オークモデル(当時はプラチナ製のRef.14802に採用)からインスピレーションを得たものだ。
もちろん、これは1992年製ではないので、このリバイバルダイヤルには改良が加えられている。オーデマ ピゲはダイヤルのテクスチャーを改良し、粒子をより細かく(そしてより明るく)することで、光の状況によって異なる表情を見せる効果を生み出した。ブルーの色調はPVD加工で得られ、さらに半透明のコーティングが施され、その色調を引き出している。日付表示窓は、ミッドナイトブルーの背景でダイヤルとカラーマッチングされている。
そのすべてがホワイトゴールドケースに収められ、ロイヤル オークの象徴とも言えるホワイトゴールドのブレスレットが装着された、まさにジェンタのフルパッケージと言えるモデルだ。内部には、2022年に向けて一新されたAP Cal.7121が搭載されている。昨年の紹介記事で述べたように、このムーブメントの製造には5年の歳月を要し、その過程で特許(クイックセットデイト機構)を取得する必要があった。この時計にはないが2022年の新作には存在するのが、50周年記念ローターだ。これはつまりロイヤル オークの50周年が終わり、前に進んでいるということを表しており、代わりにローターには大きなAPのロゴがあしらわれたものが採用された(それでもとても素敵だ)。
厚さ8.1mm、直径39mmのホワイトゴールド製だ。予定価格は973万5000円(税込)だ。
ロイヤル オークだ! それだけでテンションが上がる。この作品に関しては、ふたつのことを認めざるを得ない。最初に画像を見たとき、スティール製だと思い、過剰なまでに興奮してしまったこと。文字盤が画面から飛び出してきて、プチタペストリー(タペストリー疲れとでもいうのだろうか)よりも気持ちを揺さぶられてしまったのだ。そして、じっくり考えてみた。本当に昨年はホワイトゴールドの16202が発売されていなかったのだっけ? そこでHodinkeeの同僚にも聞いてみた。すると、どうだろう。確かにホワイトゴールドがないのだ。
しかし、それだけではなく、BC(ホワイトゴールド)のロイヤル オークを復活させる前に、基本的にRef.15202からのすべてのダイヤルのバリエーションがRef.16202のラインナップに占められ、そのなかにはグリーンダイヤルのプラチナモデルも含まれていたからだ。もし私が賭けをしていたら(実際はしていないが)、BCは期待していなかったと思う。サーモンダイヤル? そう、今日発売のホワイトゴールドモデルには、サーモンダイヤルの16202がないことにお気づきだろうか。15202の文字盤モデルで16202の枠に移し替えられてないのは結構存在するのである。
2021年にベン・クライマーは、グリーンダイヤルを備えたプラチナ製の15202と、、サーモンタペストリーダイヤルを有したホワイトゴールド製の15202の比較について記事を書いている。詳しくは、記事「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク "ジャンボ" についての考察 - 新しいプラチナモデルをなぜ誰も好きと言おうとしないのか?」をご覧ください。
これはサーモンダイヤルの15202に希少性を与え、オーデマ ピゲがなぜこのダイヤルを新モデルのアップデートから除外したのかという疑問を抱かせる。もしかしたら、ホワイトゴールドは、中道左派的な面白いダイヤルを選択するための新しい温床になっているのだろうか? 現時点では何とも言えない。サーモンダイヤルの15202BCが発売されたとき、かなりの混乱があった。数量限定なのか? 限定生産なのか? 言うまでもなく、オーデマ ピゲのラインナップのなかで最もクールな時計のひとつは、答え以上に多くの疑問が生まれた。そしてそれは16202BCがリリースされた今日も変わらない。
この些細なことにこだわるコレクターもいれば、こんなこともあったかもしれないと空想にふけるコレクターもいることだろう。また、このホワイトゴールドの斬新なブルーグレインのテクスチャーに目を奪われる人もいることは間違いない。
この新作は、私にとって二重の意味で興味深い。ひとつ目の理由は、ケースとブレスレットの素材そのものに結びついたものであり、ふたつ目の理由は、ふたつしかない非タペストリーのRef. 16202モデルとして、グリーンダイヤルのプラチナモデルと並べて置かれていることだ。それが、このモデルを特別なものにしているのである。
現時点では、ロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラ シンは美学とスタイルがテーマだ。昨年は、機械的なアップグレードが行われた。ケースの寸法に干渉しないようなアップグレードである。クイックセットもついている。つまり、機能面では完璧なロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラ シンなのだ。あとは、見た目のカッコよさを追求するだけ。
そして、この1本が、私のなかではとてもクールに思えるのだ。ブルーの文字盤表面の暗い色合いが好きだし、―遠くから見ると―街というものを見たことがないよう住人が暮らすような辺境の地で、夜空を見つめているようなシボ感があるのだ。そこから火星が見える。それがこのテクスチャーの意図するところであろうとなかろうと、私には関係ない。美しさは見る者の目のなかにあるのだから。
実物を見ずに言うのは気が引けるが、もし現在のコレクションのなかから選べるなら、私はブルーグレイン仕上げのホワイトゴールド製ジャンボを推したいと思う。シンプルでありながら、何か特別なものが散りばめられている。そして結局は、ロイヤル オークなのだ。
基本情報
ブランド: オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)
モデル名: ロイヤル オーク “ジャンボ”エクストラ シン(Royal Oak "Jumbo" Extra-Thin)
型番: 16202BC.OO.1240BC.02
直径: 39mm
厚さ: 8.1
ケース素材: 18Kホワイトゴールド
文字盤色: ブルーグレイン
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: 7121
機能: 時、分、日付
直径: 29.6mm
厚さ: 3.2mm
パワーリザーブ: 約55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 4Hz (2万8800振動/時)
石数: 33
クロノメーター認定: なし
価格 & 発売時期
価格: 973万5000円(税込予価)
発売時期: 発売中、オーデマ ピゲブティックでのみ取り扱い
限定: あり(本数は不明)
オーデマ ピゲの詳細は公式サイトへ。
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