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Just Because 辰年に合わせてリリースされた8本の時計(それとひとつのユニークピース)

エナメルダイヤルから巨大な彫刻のようなオートマトンまで、さまざまなブランドが最もクールな干支のひとつに本格的に乗り出した。

あけましておめでとう! 多くの幸運が訪れますように。春節の挨拶とともに、皆様の幸福と繁栄をお祈りします。さて、2月10日は新しい旧正月の始まりであり、我々HODINKEEでも恒例のように、この機会に中国市場に特化した時計のリリースをお祝いする。これらの新しい時計は多くの場合、その年のリリースのなかで最も複雑なものであることが多いが、あまりにも数が多いため、ひとつの記事にすべてを集約するのはいい理由だと思った。

Parmigiani Xiali

パルミジャーニ・フルリエのチャイニーズカレンダーウォッチは、昨年登場した中でもお気に入りのひとつだった。

 今年は中国風に言うと“木竜(甲辰)年”だ。中国の干支暦は12年周期で、各干支ごとにひとつずつ回転するが、12年周期ごとに5つある元素記号の要素も回転するため、名称はさらに長くなる。つまり、合計60年の暦になる。私が中国の星占いの知識をブラッシュアップするのを助けてくれたある情報源によると、“木竜は非常に活発かつ熱心で、自信に満ちあふれながらあらゆる社交界に入り込む”とのことだった。私はそれを念頭に置いて、さまざまなブランドがこのモチーフをどのように具現化しているか、見ていくことにした。いずれにしても、これほど多くの限定モデルやユニークなアイテムがリリースされることは、中国の時計ブランド市場がいかに強いかを物語っている。

 本題に入る前に、もうひとつ知っておくべきことは、ドラゴンと真珠の重要性だ。このモチーフは、今年発売された時計の多くに採用されているため、何度も説明しないほうがいいと感じた。その物語のひとつの説はここで読むことができる。簡潔に言うと、ドラゴンが真珠を握ったり追いかけたりしたモチーフをよく見かけるが、真珠は知恵と力を表し、ドラゴンは繁栄と幸運を表している。ではここからは、時計そのものについてだ。


ブランパン ヴィルレ トラディショナル チャイニーズ カレンダー
Blancpain Villeret

 12年前(干支の一周期)に発売されたとき、ブランパンはこの特殊なコンプリケーション(中国暦とグレゴリオ暦)を用いた、最初の連続生産モデルで世界初の快挙を成し遂げた。その後ほかのモデルも登場し、スタンダードモデルではホワイトエナメル文字盤が採用されている。しかし今回の新モデルでは、新しいグリーングラン・フー エナメル文字盤とローズゴールド製ケースを採用。また、ドラゴンが赤いルビーを追いかけるシーンと、“甲辰”という漢字が刻まれた金無垢の自動巻きローターを搭載している。

 ムーブメントは、リリースされて以来アップデートされていないため、以前の記事で紹介した主な機能が顕在している。イコール、45mm径×15.1mm厚というかなり大きな時計であることを意味する。しかし、新しくなった文字盤とケースの組み合わせは、この50本限定のモデルを巡り、争奪戦になるのには十分かもしれない。本モデルの希望小売価格は、日本円で1002万1000円(税込)となる。

Blancpain Chinese Calendar

ブレゲ クラシック ダブルトゥールビヨン 辰年限定 Ref.5345、クラシック ドラゴン Ref.7145BR
Breguet Double Tourbillon

 ブランパンが旧正月に実用的なアプローチを取ったのに対し、ブレゲはその代わりに非常に複雑で芸術的な(そしてあるモデルでは信じられないほど高価な)アプローチを取った。ひとつ目は、(率直に言って見事な)クラシック ダブルトゥールビヨン 辰年限定のRef.5345だ。2006年に発表されたブランド初のダブルトゥールビヨンは、手作業でギヨシェ装飾を施した回転台の上にトゥールビヨンを配置し、時針は片方のトゥールビヨンのブリッジとして機能するというもの。ここでは、ふたつの香箱に固定されたトゥールビヨンのあいだに、手彫りの金龍 (爪に螺鈿で作られた真珠を握りしめている)が織り込まれている。この時計には約60時間のパワーリザーブがあるが、正直なところ、刻印を見ても(そして価格を見ても)あまり関係ないだろう。

 サイズは46mm径×16.8mm厚で、ケースはもちろんプラチナ製。しかし本モデルは顧客がカスタマイズできる特別注文品であり、満足できない場合はドラゴンの形、色、モチーフなどをカスタムすることができる。これだけの内容で…1億1077万円(税込)だ。

Breguet Tourbillon
Breguet Tourbillon

 もっと手頃なものを探している? クラシック ドラゴンのRef.7145BRは、何よりもブレゲのアーティストたちによる計り知れない才能が発揮されたものだ。2色の赤を使用したグラン・フー エナメルには、RGでできた手彫りの龍が描かれ、雲に囲まれたマザー オブ パールのディスクを追いかけている。正直見た目も素敵だし、RGのケースも文字盤とよくマッチしている。また超薄型ムーブメントの自動巻きCal.502.3を搭載しており、40mm径×6.9mm厚というサイズ感を実現しているため、着用もしやすい。これだけの出来栄えながら、(中国語で八は縁起がいいから)8本しか製造されないこの時計の価格は、1123万1000円(税込)である。まあ先ほどのモデルより手頃だとは言ったが、手頃な価格だとは言っていない。

Breguet Dragon
Breguet Dragon

ショパール L.U.C XP 漆 辰年
Chopard Dragon

 今年、最も美しい漆工芸のひとつがショパールから発表された。これは文字盤に漆を使い始めて12年目を迎えるショパールが手掛けたもので、世界的に有名な職人が蒔絵の技法を用いて、日本で手作りしている。金色のドラゴンが真珠を手に入れていて(彼にとってはいいことだが、ほかのブランドのドラゴンはまだ追いかけている)、かなりコミカルな目をしているが、全体としてはうまく機能している。さらにほかの多くのブランドと同じような、レッドとゴールドをメインカラーにしていないことも称賛に値する。

 この時計は88本(繰り返しとなるが、八はラッキーナンバーのため8が多ければ多いほどいい)の限定モデルとして発売されたが、それは同時に88個もの文字盤が生産されることを意味する。すべての文字盤は、100年の歴史を持つ山田平安堂の工房で製造され、熟練漆職人の小泉三教氏が手がけている。それぞれの文字盤に少なくとも20時間かかっているため、合計73日以上の時間を費やしたことになる。この技法では、ウルシの木の樹液から抽出された漆の層のあいだに金粉を配している。何層にも重ねると、このダイヤルが誕生するのだ。

Chopard Making of

 時計自体も美しい。ケースはRG製で、シースルーバックからは厚さ3.3mmの素晴らしい自社製L.U.C 96.17 Lマイクロロータームーブメントを鑑賞できる。このような薄いムーブメントは、薄い(そして小さい)ケースを意味し、実寸は39.5mm径×6.8mm厚だ。私は最近、あるブランドからエナメル細工を施した時計はパレットが小さくなるため、40mm以下のものは扱わないと言われたことがある。さて、ショパールはその数字を0.5mm下回った。私は言おう。夢を夢のままで終わらせないで欲しい!

 しかし本当に印象的なのはその価格だと思う。415万8000円(税込)でこの素晴らしいムーブメント、素晴らしいケース、そして素晴らしい職人技による芸術を手に入れることができるのだ。

Chopard Dragon

ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・エナメル “ドラゴン”
JLC Reverso Dragon

 なぜなのかはわからないが、このドラゴンは私が最も好きなドラゴンだ。怒っているような深刻な外見にもかかわらず、気まぐれな部分も見せる。ただこれを作り上げるのは、信じられないほど難しかったようだ。このレベルソの背面はRGの真っさらなキャンバスではなく、黒のグラン・フー エナメルであり、ジャガー・ルクルトのメティエ・ダール工房で働く熟練エングレーバーによって加工された。10種類の大きさのノミを使って、80時間かけて作業を行うそう。それ以外は標準的な45.5mm×27.4mm×9.73mmのレベルソであり、JLC製手巻きCal.822を搭載。しかしこうした途方もない作業があるため、この時計はオーダーメイドでしか入手できず、価格も10万7000ドル(日本円で約1600万円)と高額だ。

JLC Dragon
JLC Dragon

ロンジン フラッグシップ ヘリテージ “辰年”
Longines Dragon

 最後に、ロンジンのおかげでこのリストに手頃な価格のモデルが加わった。同社初の干支時計であるこちらは、わずか3150ドル(日本円で約47万円)で提供される。しかし残念なことに、この時計はすでに完売している。旧正月までプレゼントを開けるのを待つのはもうたくさんだ。

 この時計は、裏蓋のモチーフをデザインした中国人アーティスト、ジナン・ラム(Zinan Lam)氏の協力を得て誕生した。桃花モチーフは現在、ドラゴンが頭を持ち上げ、ロンジンの翼の砂時計は龍玉や真珠にデザインが変更されている。文字盤はよりわかりやすく、大胆な赤にギルトインデックスをセット。38.5mm径のケースのなかには、約72時間パワーリザーブを持つCal.L899.5を収めている。ただ残念ながら、先ほど伝えたように888本すべてがなくなってしまった。このような成功を収めたロンジンがつくる干支モデルは、きっとこれが最後ではないだろう。

Longines Dragon

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ イヤー オブ ザ ドラゴン

 タグ・ホイヤーは、辰年のために2本の時計をリリースした(これらは2023年10月に発表している。なぜこんなに早く? 何を急いでいるのか?)。それらはすべてなくなってしまったため、ここではよりカレラに似合っている、ゴールド&レッドモチーフのほうを紹介することにした。42mm径×14.33mm厚のRG製ケース、18KRGメッキのサンレイブラッシュ文字盤、ふたつの赤い“アジュラージュ”インダイヤル、そして驚くほどそれらにマッチしていないホワイトの日付窓を備えている。またその日付窓の上には、中国のドラゴンのシンボルを描いている。

Carrera Dragon

 そのほかの機能は、もう少し使いやすくなっている。クロノグラフ秒針はレッドラッカー、時・分針はゴールド、ゴールドのインデックスにはレッドラッカーとホワイトのスーパールミノバを採用している。いちばんおもしろいのは、背面のサファイアガラスの周りにプリントされたチャイニーズドラゴンのモチーフだ。そこからCal.02ムーブメントが動く様子を見られる。ゴールドエディションには“One of 50、ステンレススティールエディションには“One of 300”(文字盤はシルバー)と記される。金無垢モデルは282万7000円、SSモデルは79万2000円(ともに税込)であった。ちょっと発売が早すぎたようだ。


ユリス・ナルダン ブラスト トゥールビヨン ドラゴン
UN Blast

 前回の“辰年”モデルは、素晴らしいドラゴンの彫刻と印象的なパールによりランクインした。ユリス・ナルダンのブラスト トゥールビヨンは、12時位置にローター、6時位置にフライングトゥールビヨンを備えた自動巻きマイクロローターのトゥールビヨンムーブメント、UN-172を搭載している。フライングトゥールビヨンの上には真珠(当然のことながらマザー オブ パール製)が乗っており、美しい手彫りとマイクロペイントされた静かなるドラゴンは、常に真珠を追いかけるが決して近づくことはない。本体はRGとブラックのDLCチタンケースに入っており、サイズは直径45mm。ユリス・ナルダンはこのモデルを限定版とはしていないようで、1486万1000円(税込)持っている人はラッキーだ。

UN Blast Dragon

おまけ: パルミジャーニ・フルリエ オブジェ・ダール “テンパス・フギット” オートマトン・クロック
Parmigiani Fleurier Dragon

 私はふたつの理由から、おそらく最善と思われるものを最後まで取っておいた。ひとつは、それは時計ではなく、私たちは時計のウェブサイトだから。第2に、パルミジャーニ・フルリエのこのオートマトン・クロックは、信じられないほど複雑で、私の頭で理解するのが難しいからだ。しかし率直に言って、技術的な側面を理解しなくても、この作品がどれだけ美しくつくられているか、オートマトン機能がストーリーテリング装置としてどれだけ魅力的かがよくわかる。これは1000の部品で構成されており、組み立てには5800時間もの作業時間を要している。

 ここで少し余談だが、パルミジャーニ・フルリエの修復部門は十分な評価を得ていない。昨年、私はその修復部門を訪問することができた。そこにいた天才的なチームは、時計学と機械工学の素晴らしい部分、つまり物体が正常に動作することはめったにないような作品を見なければならない。そして論理と経験から、その作品が正常に作動すれば何が起こるはずなのか、推測しなければならない。多くの場合、誰かが1世紀以上前に何かをうまく修正できなかったり、あるいは不完全に修復したとして、どこまでさかのぼって作業を元に戻せるか、考えなければならないことがある。これはミシェル・パルミジャーニ(Michel Parmigiani)氏にとって、大きな情熱であるという事実がある。以前、別の業界幹部がパルミジャーニ氏は自身の“実際の情熱”に資金を提供するためにブランドを立ち上げるほど十分に聡明だったと、熱く、感心しながら語っているのを聞いたことがある。つまり、私が280mm(11インチ)するストーリーテリングなドラゴンクロックを買うとしたら、まさにこの人から買いたいと思うだろう。

“Tempus Fugit”
“Tempus Fugit”

 まずは仕組みを見てみよう。アレクシア・ステヌー・パルミジャーニ(Alexia Stenou Parmigiani)氏によってユニークピースとして設計されたこのムーブメントは、オートマトン・モジュールを含めても112mm×114mmという大きさで、17石しかセットされていない。約8日間のパワーリザーブを備え、駆動は鍵巻きだ(懐中時計を愛する私の心のままに)。ムーブメントには、あなたが望むすべての仕上げが施されているが、すべてが天然のロッククリスタルと、10ミクロンのロジウムメッキを施したシルバー925無垢材でつくられた2kgの台座に格納されているため、実物を見るのは難しいかもしれない。

 そして、これはどう作動するのか? そこがいちばんの見どころだ。ドラゴンのオートマトンは1時間に1回転し、永遠に到達することのない真珠、“逃れられない時間”(取り返しのつかないひととき)を追い求める。一方、中国の伝統的な12時間(中国の1時間は2時間であり、古代中国では一昼夜を12の時間帯に分け、それぞれが現在の2時間に相当していた)を示す金メッキのシルバーリングは24時間ごとに回転する。ドラゴンが真珠に近づいてくるように見えると、真珠は1時間に6回ランダムに移動しながら“飛んで”いく。ジャンプの直前にゴングが鳴るため、オーナーは真珠が跳ぶのを見ることができる。

“Tempus Fugit”
“Tempus Fugit”

 それから装飾だ。パルミジャーニ氏はまず、中国文化では数字の9が非常に重要であるため、“パルミジャーニ・フルリエが発表した『インペリアル・ドラゴン』には、ラクダの頭、牛の耳、鹿の角、蛇の首、虎の前足、鷲の爪、軟体動物の腹、鯉の鱗、ライオンのたてがみとひげの9つの動物の体の部分が含まれている”と指摘した。また、鼻が幸運のシンボルであるキノコの形をしていることにも言及している。

 本体はまず蝋で彫られ、次に3つの部分に鋳造され、そのあと純銀で製造している。中国の伝統によると、ドラゴンは117の鱗を持つとされているが、このドラゴンは585枚(9で割り切れる)の鱗を持っている。これは天然の翡翠でつくられ、デザイン、カット、研磨され、個別に固定されたあと、全身に鋲が留められる。知恵の真珠は黄金の炎に囲まれた白金の球体で、ホワイトダイヤモンドやルビー、オレンジやイエローサファイアなどの貴石が細工に埋め込まれている。

 価格や、それが販売されていたかどうか、そういったことはプレスリリースには書かれていなかった。私には買えないし、いくらかかったのか知りたくもない。彼らの要求が何であれ、この作品には十分ではなかったと思う部分もある。ただパルミジャーニ・フルリエのチームがこの偉業を成し遂げたことを祝福する。

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