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クイック解説
ユリス・ナルダンは、1846年に創業して以来一貫して、マリンクロノメーターの製造など、海にまつわる腕時計を製造し続けています。彼らの海への情熱が変わることはありませんが、ひとつ大きく変わったことがあります。それは、海洋環境です。人間の活動によって排出された物質が原因となる海洋汚染が世界的な問題のひとつとして認識されています。国連のデータによれば、毎年64万tもの漁網が紛失または放棄され、サイエンス誌は、それらが900万tのプラスチックと一緒に海に存在していると報じています。
海洋の世界と強い結びつきを持つユリス・ナルダンは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標 14「海の豊かさを守ろう」というミッションに取り組むことを表明しています。最初のプロジェクトとして、2020年9月にリサイクル漁網のみを素材としたRストラップと呼ばれる新たな時計ストラップを開発し、同年11月には、ケース、ミドルケース、ベゼルにリサイクル漁網を取り入れたダイバー ネットというコンセプトモデルをリリースしました。
また、ユリス・ナルダンは、さまざまな寄港地に寄りながら地球を一周するヨットレース「オーシャンレース」(The Ocean Race)のオフィシャルタイムキーパーに就任。同レースは、サステナビリティに取り組むレースシリーズとして知られ、海洋のマイクロプラスチックレベルの測定や、気候変動の影響にまつわる重要なデータの収集、海洋保護へのアクションの喚起、促進、加速化に力を入れています。
そして、この海洋保護への最新のプロジェクトとして発表されたのが、このダイバーズウォッチ「オーシャンレース ダイバー」です。これは、先のプロジェクトをすべて融合させたようなもので、実質ダイバー ネット 2.0と言ってもいいと思います。外観は、ブラック、ホワイト、グリーン、そしてグレーを基調とし、Xのロゴも同じ位置に配されているため、少し変更が加えられただけのように感じるかもしれません。ですが、コンセプトウォッチをただ商品化したというわけではなくアップグレードが施されています。
オーシャンレース ダイバーのケースは、コンセプトモデルと同様に直径44mmですが、使用される素材が異なります。ダイバー ネットでは、漁網を100%リサイクルして作られたナイロ(Nylo®)が単一素材としてケースに採用されていたのに対し、オーシャンレース ダイバーは、2素材で構成されています。
インナーケースには、リサイクルスティールが採用され、サイドケースとケースバックにはナイロとカーボニウム(CARBONIUM®)が6対4で配合された混合素材が採用されています(サプライヤーはそれぞれ、リサイクルスティールがフェーストアルピネ・ボイラー社、漁網をリサイクルしたナイロは、FIL&FAB社製、従来のカーボン複合材料よりも環境負荷を40%低減するカーボニウムは、ラヴォアジエ・コンポジット社製の素材)。このダイバーネットからの変更によってケースの剛性が向上し、300mというダイバーズウォッチとしての防水性能が確保されました。
また、カーボニウムは、オーシャンレース ダイバーの逆回転防止ベゼルのベゼルインサートにも採用されています。炭素繊維が形成する独特な有機的なマーブル模様は、ひとつとして同じものはなくそれぞれがユニークなデザインを作り上げています。
装着されたストラップは、フランスのJTTI社が開発した漁網から糸に生まれ変わった素材を使用したスクラッチクロージャー(つまりベルクロのこと)付きのもの。ケースからストラップに至るまで環境問題に取り組むさまざまな企業とのコラボレーションで作られていることがわかります。
ムーブメントは、コンセプトウォッチと同じ自社製Cal.UN-118を搭載。約60時間のパワーリザーブを搭載し、COSC認定を受けています。モデル名のとおり本機は、オーシャンレースとのパートナーシップによるものであり、性能面において世界で最も過酷なヨットレースでも耐えられる仕様となっています。価格は、137万5000円(税込)、世界限定200本で、今年の夏に発売される予定です。
ファースト・インプレッション
ここ数年、時計業界では、サステナビリティへの取り組みがとても活発になってきています。特にダイバーズウォッチの展開に力を入れているブランパン、パネライ、オリス、セイコーといったブランドが、世界中の海の保護と保全を目指し、それぞれ独自のやり方でこの問題に取り組んでいます。
なかでも、特に個人的に注目していたのがユリス・ナルダン、それも2020年に開発されたダイバー ネットでした。リサイクルベースのフルプラスチックケースを採用した環境に優しいダイバーズウォッチというコンセプトはとても興味深いもので、実機を手にとってみたいと思っていました。残念ながらそのコンセプトウォッチを見ることはできませんでしたが、製品版の最新作オーシャンレース ダイバーに少しのあいだ触れる機会を得ました。
オーシャンレース ダイバーをまず手にとって感じたのは、かなりしっかりとした作りであるということ。混合素材のサイドケースにプラスチック感はまったくなく、スティール製インナーケースが適度な重量感をもたらしてくれます。プロトタイプのダイバー ネットは、防水性能に課題があったため、製品化するにあたって、フルプラスチック製ケースという発想、設計から少し離れる必要があったのでしょう。
実際に手首につけてみるとこのちょうどいい重量感とベルクロで調整可能なテキスタイルストラップとが相まって、44mmにしてはかなりつけ心地は快適でした。通常のスティール素材とリサイクルスティールを並べてその素材の違いが視覚的、感覚的に感じ取る人もいると思いますが、この時計の場合は着用したときに見える部分にそれがほとんどないため、どちらかというとセラミックケースの腕時計をつけているような感覚になりました。
ダークグレーをベースにグリーンのハイライトがクールで、特にカーボニウムベゼルの独特な模様が目を引く本機は、これからの季節、アクティブなシーンに連れていきたくなるような時計です。
海洋保護というミッションの理念を反映しつつ、ダイバーズウォッチとしてのスペックや耐久性をしっかりと備えたオーシャンレース ダイバーは、時計の内外すべてにおいて非常に魅力的なモデルです。環境に配慮した腕時計としては、今日において最もバランスの取れたプロダクトのひとつだと思います。オーシャンレースへのスポンサードに伴った単なるプロモーションウォッチとするのではなく、時計業界におけるサステナビリティというより大きな目的のために作られた時計です。生産本数は、200本と限られており、途方も無い海洋プラスチックを考えるとまだ小さな一歩かもしれません。ですが、間違いなく称賛に値するものであり、時計業界のサステナビリティをリードする重要な時計となるでしょう。
基本情報
ブランド: ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)
モデル名: オーシャンレース ダイバー(Ocean Race Diver)
型番: 1183-170LE-1A-TOR/0A
直径: 44mm
厚さ: 14.62mm
ケース素材: サイドケースとケースバック 40% カーボニウム®(Carbonium®)、60%再生漁網 ナイロ®(Nylo®)、サプライヤー:ラヴォアジエ・コンポジット社、FIL&FAB社、フランス。自動車産業で使用されたリサイクル素材を80%以上使用したステンレススティールケース、サプライヤー:フェーストアルピネ・ボイラー社(オーストリア)
文字盤色: アンスラサイト
インデックス: アプライド
夜光: あり、グリーンのスーパールミノバ
防水性能: 300m
ストラップ/ブレスレット: リサイクル漁網を使用 グレーにグリーンとホワイトのステッチが入ったストラップ、面ファスナー(ベルクロ)で着脱可能
ムーブメント情報
キャリバー: 自社製Cal.UN-118
機構: 時、分、日付 スモールセコンド パワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 50石
クロノメーター認定: 自社規格
追加情報:シリシウム、ダイヤモンシル採用の脱進機
価格 & 発売時期
価格: 137万5000円(税込)
発売時期: 2022年夏
限定: 世界限定200本
詳細は、ユリス・ナルダン公式サイトへ。
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