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Historical Perspectives A.ランゲ&ゾーネ 新しいプラチナ製ランゲ1・パーペチュアルカレンダーと、プラチナランゲの簡単な歴史

ブラックダイヤルにプラチナケースという、きれいなランゲだ。

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A.ランゲ&ゾーネがブラック文字盤とプラチナケースを組み合わせると話題になる。最初にブラック文字盤を備えたプラチナ製ランゲは、1996年に発表されたユニークなトゥールビヨン “プール・ル・メリット”だ。そして1999年に発売された画期的なダトグラフ、ランゲ1 “ダース”がそれに続いた。このダイヤルとケースの組み合わせはランゲにとって特別なものであり、重要な時計にのみ採用される。それに加えて見た目もいい。

ランゲ1・パーペチュアルカレンダー、プラチナケース&ブラックダイヤル

こちらはプラチナ製の新作、ランゲ1・パーペチュアルカレンダーだ。

 かつてベン(・クライマー)が、オリジナルのブラック&プラチナのダトグラフについて書いたように、それはまさに“センセーショナル”だった。このことが、プラチナの新しいランゲ1・パーペチュアルカレンダーをランゲらしいものにしている。ランゲが2020年に、ピンクとホワイトゴールドのランゲ1・パーペチュアルカレンダーを発表して以来、このコレクションは独自の地位を確立した。

 ランゲ1・パーペチュアルカレンダーの起源は、ランゲがランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーを導入した2012年まで遡る。それは30万ドル(当時の相場で約2395万円)を超える価格もさることながら、高級時計の世界におけるステートメントウォッチであった。個人的な余談になるが、2016年に発売された頃にWGのバージョンを見て、このスーパーカーのような時計に圧倒されたのを今でも覚えている。そしてこのジャンルで実際に身につけられる、数少ないもののひとつだとも感じた。それはダイヤルに“トゥールビヨン”の文字が入ったシンプルなもので、(ランゲ1の)エンジン内部がパワーアップしていることを示唆しただけの超控えめなスーパーカーだった。裏蓋側にも、トゥールビヨンの大部分が手彫りのブリッジの下に隠されていて、いかにもランゲらしかった。

2016年当時の、ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー

2016年に撮影した、WG製のランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー。

 そんな背景のなか、2020年に登場したランゲ1・パーペチュアルカレンダーは温かく迎えられた。Langepediaによると、設計者は2000年初頭にパーペチュアルカレンダーをランゲ1の設計に適応させようとしたが、確立された黄金比の適用と各独立表示を尊重しながら、ランゲ1のレイアウトに複雑機構を収めるのに苦労したと説明がある。また各月の終わりに、アウトサイズデイトを切り替えるという問題もあった。

 ランゲ1・パーペチュアルカレンダーは、オリジナルのランゲ1のミラーリングしたレイアウトから始まる(ホイヤーがCal.11のリューズを反転させ、それを初の自動巻きクロノグラフとしたようなものだ)。これはランゲ1コレクションの、最初の自動巻きモデルであるデイマティックから着想を得ている。ランゲ1・パーペチュアルカレンダーは、ダイヤルの周辺に月のリングを追加した。これにより、ダイヤルの中心は38.5mmに保たれ、元のランゲ1のケースと同じ直径とプロポーションになった。その後、この外周の月リングによって日付表示が切り替わり、月が48段階の歯車(すなわち、4年間のうるう年サイクルの各月に1回)で制御される、典型的なQP(パーペチュアルカレンダー)設計に取って代わる。

2016年当時のランゲ1・パーペチュアルカレンダー

2020年に発表された、オリジナルのランゲ1・パーペチュアルカレンダー。左がWG製(世界限定150本)で、右がPG製だ。

 そのほかの表示は、Cal.L021.3のおかげでランゲ1のデザインにシームレスにフィットした。このムーブメントにはほかにも、ジャーマンシルバーのプレートやブリッジ、ブルースティールネジで固定されたゴールドシャトン、手彫りのテンプ受けなど、ランゲに期待される特徴をいくつか備えている。また深夜まで起きているのに十分な理由となる、瞬転数字式表示カレンダー機構は、ランゲの製品開発ディレクターを長年務めたアンソニー・デ・ハス(Anthony de Haas)氏がこだわり抜いたものだ。

Cal.L021.3

ランゲ1・パーペチュアルカレンダーに搭載されたCal.L021.3。

 プラチナのランゲ1は“価格要問い合わせ”となっている。当初2020年に発売されたPG(税込で1196万8000円)およびWG(税込で1328万8000円)よりも割高になっていると思う(編集注記:金額はどちらも2020年当時のもの)。多くのブランドと同様、ランゲも2020年から数回価格改定行っている。新しいランゲ1・パーペチュアルカレンダー(Ref.345.036 E)は限定モデルではないが、入手は容易ではないだろう。さらに最近リリースしたほかの多くのランゲと同様、ブティック限定でもある。

 価格はともあれ、本作はすでに革新的なパーペチュアルカレンダーとして完成していたものを、見事に融合させた時計だ。しかしランゲが新作としてプラチナケースにブラックダイヤルを持ってくるのは、そう毎年あることではない。以下からはその重要性を伝えるために、ランゲにおけるこの組み合わせの歴史に少しだけフォーカスしていく。


暗闇から現れた“ダース” ランゲ
ランゲ1 ダース Ref.101.035

ダース ランゲ1、Ref.101.035。Image: Courtesy of Christie's

漆黒のダース ランゲの歴史は、1996年発表のトゥールビヨン “プール・ル・メリット”(PLM)から始まった。PLMはランゲが1994年にリリースした4つあるオリジナルモデルのひとつで、すべてが38.5mmのケースに収められていた。PLMは特に技術的に傑出しており、トゥールビヨンとフュゼチェーン機構を組み合わせた最初の腕時計であった。ランゲはそれを200本しか生産せず、そのうちの50本がプラチナ製だった。そのなかでも異彩を放っていたのが、36.5mmへダウンサイズし、オールブラックダイヤルを取り付けた珍しいPLMである。こちらは2012年にDr.Crottで33万ユーロ(当時の相場で約3390万円)で落札されている。

 “この時計は後に-ダース-として知られるようになる、遺伝情報の一部が隠されている”と、アンダース・B・キルシュナー(Anders B. Kiertzner)氏がLangepediaに書いている。

ランゲ1 プール・ル・メリット・トゥールビヨン・プラチナ

36.5mmへとダンサイジングされた、ユニークなオールブラックの“ダース”ダイヤルのプール・ル・メリット。

 ランゲの聡明なドイツの美学は、プラチナの重さと完璧に調和する。ある意味、プラチナはランゲのなかで行われるあらゆる時計製造に耐えうる唯一の金属のように感じられるのだ。

 1999年、ランゲはRef.101.025(オールシルバー)の陰に隠れるよう、ランゲ1にブラックダイヤルを取り入れたRef.101.035をこっそりと発表した。ランゲがダースシリーズを製作していたのはわずか7年間だ。ブラックとプラチナのミックスは、ダースシリーズを発表した当時のランゲにとっては斬新なものだったが、その後すぐにコレクション全体に広まった。リトル・ランゲ1、アーケード、カバレットなど、すべてが黒く染まっていったのだ。

スティール製ブラックダイヤルのランゲ1

3本のうち1本が、スティール製のランゲ1、ブラック文字盤だ。

 しかし、“ダース” ランゲ1はプラチナにとどまらなかった。数十本ほどあるSS製のランゲ1(ランゲコレクターにとっては聖杯)のうち、3本が同じようなオールブラックの文字盤を備えていた。オークションに出品された最初のものはここで紹介している(最終的に23万3000ドル、当時の相場で約2535万円で落札されたようだ)。

 シルバーのインダイヤルを持つ一方で、ランゲはプラチナとブラックの方程式を用い、1999年にオリジナルのダトグラフ(Ref.403.035)を発表している。その自社製クロノグラフは、当時のスイス時計業界に一石を投じた。

ランゲ ダトグラフ Ref.403.035

ダトグラフ。

 その後、Langepediaのアンダース氏は、ダースのような腕時計ばかりが市場に登場し、少し飽和状態になったため、ランゲがダース ランゲ1をはじめとする多くのプラチナとブラックモデルを生産中止にし、2014年までオールブラックモデルをカタログに掲載しなかったと推測している。そしてそれは華々しく復活を遂げた。ランゲがブラックとプラチナの組み合わせの重要性をどう感じているかについて、疑いの余地はない。

 最初に発売されたリトル・ランゲ1は、黒一色のギヨシュ文字盤を特徴としていた。ギヨシュはランゲとしては珍しく、1998年に発売された最初のランゲ1の限定モデルへさりげなく敬意を表している。その後、艶やかなブラックエナメル文字盤を特徴とする、ランゲ1・トゥールビヨン“ハンドヴェルクスクンストが登場した。“ハンドヴェルクスクンスト”とは、職人技を意味し、ランゲが軽々しく投げかける言葉ではない(こちらこちらを参照)。ランゲの20周年を記念して登場したもので、当時は“この追加のすべてが古典的なものだ”と書いていた。

ランゲ1・パーペチュアルカレンダー、プラチナケース&ブラックダイヤル

 ランゲ1・パーペチュアルカレンダーは現在、ランゲのスタンダードコレクションとしてダトグラフ・アップ/ダウンと並んだ、唯一のブラックダイヤル&プラチナケースである。

 Langepediaはオリジナルのダース ランゲ1について、 “私の意見では、ダース(ランゲ1)は手に入りにくい希少性やその美的な素晴らしさ、そして2度と通常生産では見ることができないという事実のために賞賛されるべきではない”と述べている。“むしろ、A.ランゲ&ゾーネのカノン(規範)におけるその位置づけとその後の影響のために、賞賛され、精査されるべきである。真の偉大さとは、それ自体の認識の欠如によって特徴づけられることが多い。ダース ランゲ1はまさにそこにあり、すぐに手に入り、ありふれた風景のなかに隠れていたのである”。

 さて、新作の“ダース”ランゲ1・パーペチュアルカレンダーは、ランゲのカタログのなかでも同様の地位を占めるだろう。美しくて荒々しさがあることは間違いないが、それ以上に重要なのは、ひとたび深く見れば、現代最高のマニュファクチュールメーカーの全貌を物語る、印象的な時計製造の作品であるということだ。

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新しいランゲ1・パーペチュアルカレンダーは41.9mm×12.9mmのプラチナ製で、自動巻きCal.L021を搭載。63石を含む621個の部品、約50時間パワーリザーブ、瞬転数字式表示機構、毎時2万1600振動。価格はお問い合わせください。ほかの詳細については、A. ランゲ&ゾーネの公式ウェブサイトをご覧ください。HODINKEE Shopでは、ランゲのさまざまな中古時計を販売しています。全コレクションはこちらからご覧ください。