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コロナウイルスに見舞われた2020年。SIHHから改名したWatches & Wonders Geneva(ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ)は、ジュネーブで開催される予定だったリアルイベントを中止して、オンラインでの実施に変更。同様に、アワーユニバースへと名称を変えたバーゼルワールドも延期から、ついには中止という事態に追い込まれ、これまで当たり前に実施されてきたリアルな大規模展示発表会は全てキャンセルとなった。多くのブランドが一堂に会して新作を披露する機会は、完全に失われてしまった。
だが、振り返ってみると、時期こそバラバラではあったが、2020年も数多くの新作時計が各ブランドから発表された。幸運なことに、我々HODINKEE Japanは、実際に新作時計を手に取る機会も多く得ることができため、今回は新作の魅力をリマインドする意味も込めて、2020年に発表された新作の中でも特に注目すべきモデルを各メンバーがピックアップしてみた。
読者の皆さん、2020年が終わる前に、今一度のチェックをお忘れなく!
関口 優、編集長
1. JPN 130R
先日公開したHands-On記事でも、このJPN 130Rをセレクトした理由を書いた。良い意味で2020年っぽくなく、ブランドのコンセプトで勝負しているところが気に入っている、僕も愛用中の時計だ。当たり前だが、腕時計は腕に着けることで利便性が増すことから、19世紀後半に生み出された。元々は懐中時計にストラップを付けたようなものから、進化して今日の腕時計があるわけだが、この130Rは“着ける”ことを今年最も重要視した新作ではないかと思う。FKM製のストラップや軽量なカーボンケースなど、注目すべきディテールは多いが、その存在を意識することなく着けていられる腕時計というのが、最大の特徴である。
本機についての詳細は、記事「JPN 130R メイドインジャパンにこだわる新興ブランドの初代モデルを実機レビュー」をご覧ください。
2. H.モーザー ストリームライナー(3針)
2020年は1月のLVMHドバイウォッチウィークを皮切りに、一体型ブレスレットを備えたスポーティな時計のリリースラッシュだった。もちろん、メジャーブランドの著名な時計も数多く登場したが、今回の選出基準として“意外性”を1つの軸としているためこのH.モーザーの意欲作を挙げた。同社はLess is Moreの精神を体現し、クロノグラフであっても複数のインダイヤルを用いず、ミニマルデザインを貫いてきた。そのため、ドレッシーな時計が多かったわけだが、このストリームライナーの登場に誰もが驚いたはずだ。しかも、ブランド初のブレスレットモデルにも関わらず、曲線を多用し、コマのエッジに面取りを施すこだわりよう。正直、ブレスレットで失敗するブランドは多いため、処女作でこれほどのクオリティとは正直たまげた。フュメダイヤルと共に、同社の顔になりそうな勢いである。
本機についての詳細は、記事「H.モーザー ストリームライナー・センターセコンド 2020年新作」をご覧ください。
3. G-SHOCK GA2100“カシオーク”
このモデルは、正直2020年というより随分前からラインナップされていると思うほど、G-SHOCKのアイコンとなったと思う。カシオークの相性も時計愛好家界隈ではすっかり定着し、近年稀に見るスピードで急拡大をしたシリーズだろう。“意外性”のポイントは、G-SHOCKなのに薄く、小型化を目指して作られたというコンセプトと共に、当初は社内的に全く期待されていなかったというエピソードである(下記リンクの記事参照)。いわばG-SHOCK全体のコンセプトである、大きくて頑丈、というアイデンティティを揺るがすような新作であったため、今となってはカシオ内での風当たりが強かったというのも意外に思えるのだ。ただ、僕は開発陣への取材をとおして、予算も少なく制約の多いところにこそヒットが生まれるものなのだと痛感した。G-SHOCKの重要なモチーフのひとつである“八角形”が採用されたことなど、開発にまつわるストーリーにも心くすぐられた。
本機についての詳細は、記事「G-SHOCK カシオークと呼ばれる令和の寵児GA-2100の開発秘話を独占取材」をご覧ください。
和田 将治、Webプロデューサー/エディター
1. オメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデル
この時代、時計を計時という目的のためだけに購入する人は少なくなっています。スマートウォッチの登場によって、僕たちが大好きな古き良き腕時計は、より趣味性の高いものになっていっています。2020年はとにかくコロナに大きく左右された年。冒頭にもありましたが、大規模な展示会がキャンセルされ、読者の皆さんと集まるオフ会など多くの楽しい機会が奪われてしまいました。そんな混沌とした年にスピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデルのように、明らかに皆を楽しませるような時計が登場したことで、改めて時計のもつ面白みや楽しさを強く認識させてくれたように思います。
本機についての詳細は、記事「オメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデルの実機レビュー」をご覧ください。
2. オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 中国限定エディション
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーは、「ロイヤル オーク ・パーペチュアルカレンダー・オープンワーク・ブラックセラミックケース」など本当に様々なバリエーションが登場しています。その中でも今年面白いと思ったのは、この中国限定で発売されたモデルです。ケース素材にチタンを採用した本機は、ケース厚9.5mm、そしてブレスレットを含めてもわずか104gという、極めて薄く軽いコンプリケーションウォッチ。しかし、この時計の特筆すべき点は、コレクターとのコラボレーションモデルであるという点です。オーデマ ピゲのようなメジャーな、それも時計業界のトップブランドが、小売店やメディアではなく一個人のコレクターと一緒にプロダクトを作り上げたというのは、今後そういった取り組みが増えていくことを予感させます。
本機についての詳細は、記事「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー 中国限定エディション」をご覧ください。
3. ミン 18.01 H41 チタン製ダイバーズウォッチ
この時計自体もですが、僕は特にこのミンというブランド自体に注目しています。HODINKEE読者の方であれば、よく知っている方も多くいらっしゃるでしょう。2017年にミン・ティエン(Ming Thein)氏らによって立ち上げられたブランドですが、2019年にはGPHGにおいてオロロジカル・レベレーション賞を受賞。実際、新作をリリースすれば数時間で完売するほど時計愛好家たちの間では注目を集めはじめているのです。近年、新しい時計ブランドが急速に増えているように感じます。それも一時期のKickstarterなどクラウンドファンディングから誕生したDWライクな時計ではなく、僕たちのような時計愛好家に受け入れられるようなブランドです。こうしたブランドが更に登場するのか、そしてどう成長していくのかこの先も注目したいと思います。
本機についての詳細は、記事「ミン 18.01 H41 チタン製ダイバーズウォッチを実機レビュー」をご覧ください。
佐藤 杏輔、エディター
1. ブルガリ アルミニウム
今や復刻時計は1つのジャンルを形成しているが、本機はこれまでの復刻の傾向(概ね60年代くらいまでのヴィンテージものが多かった)とは少し異なり、機械式時計がブームとなり始める90年代の名作をリバイバルしたものだ。他でも、機械式時計が復権し始めた80年代後半の名作に範をとった新作も見受けられたが、本機は特に魅力が際立っており、90年代リバイバルブームの加速を予感させるパワーが感じられた。
先日公開したHands-On記事では、出来る限り客観的な視点で時計の魅力に迫ってみたのだが、ブルガリ アルミニウムは本当に実機を見ることができてよかった時計だった。好きか嫌いかで言えば好きに決まっているし、スポーティで高級感があり、しかも軽くて着けやすい。価格もこなれており、これは本当に良作だと思う。
本機についての詳細は、記事「ブルガリ アルミニウムを実機レビュー」をご覧ください。
2. グランドセイコー SLGH003 60周年記念限定モデル
2020年は、グランドセイコーが誕生してから60周年。本機に注目したのは、もちろん周年モデルということも理由の1つにあるが、やはり見どころは新開発の脱進機が搭載されたムーブメント、Cal.9SA5だ。新型脱進機の詳細はジャック・フォースターによるIn-Depth記事「グランドセイコー60周年記念 SLGH002 が2020年最大の時計ニュースの一つである理由」に譲るが、Cal.9SA5はツインバレル方式とすることで3万6000振動/時ながら、ハイビート設計で弱点となり得るパワーリザーブを伸ばすという日本のブランドらしい実用志向をもつ。同時にグランドセイコー初となるフリースプラングと巻き上げヒゲ、そしてツインブリッジ方式のテンプ受けの採用は、明らかに海外の高級時計を意識したものだろう。世界を見据えた今のグランドセイコーのスタンスが特に強く感じられる。本機は限定モデルではあるが、一般的なSSケースのパッケージングでリリースされたことで、今後の量産を期待させる。
本機についての詳細は、記事「グランドセイコー SLGH003 60周年記念限定モデル Cal.9SA5を搭載した2020年新作」をご覧ください。
3. オリス アクイスデイト キャリバー400
3日間(約72時間)以上のロングパワーリザーブ、非磁性素材を使用した脱進機による高耐磁性など、これらはこれまで多くの有名ブランドを傘下に収める大手グループを中心に標準化が進められてきた。その結果、今やロングパワーリザーブや高耐磁性は現代の高級時計においては必須条件になりつつある。そして、購入後の時計の保証期間を延長する動きも大手グループが中心だった。
しかし、こうした条件がもはや大手グループだけのアドバンテージではないと意識させられたのが、オリスのアクイスデイト キャリバー400である。本機は5日間(約120時間)のパワーリザーブと高耐磁性を実現したムーブメントを採用しており、加えて時計の保証期間を10年とするなど、さらに1歩踏み込んだスペックと品質保証体制を提供している。ここでポイントとなるのは、オリスが独立系ブランドであるということだ。標準化してしまった以上、大手グループ以外においても前述のスペックや保証体制の提供は、高級時計においては必須となるだろう。本機は、そうしたことを強く意識させる新作だった。
本機についての詳細は、記事「オリス アクイスデイト キャリバー400 2020年新作」をご覧ください。
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