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Interview ロンジンCEOが語る新たなるブランド戦略とムーブメント開発

ロンジンが備える豊かな歴史が、より色濃く表現されていく。

ロンジンの現CEOであるマティアス・ブレシャン氏は、2年前に現職に就任。1996年にスウォッチ・グループ入社後、2005年にハミルトンCEO、その後ラドーCEOを歴任し、20年超という経験を持つ大ベテランだ。前任者は業界のレジェンドであり、実に32年にもわたってロンジンのトップに君臨したウォルター・フォン・カネル氏。今回HODINKEE japanはマティアス氏にインタビューをする機会に恵まれ、今後大胆な戦略変更があるのか、ロンジンが向かう先はどこなのかについて話を聞いた。

航空史との豊かなコネクションがロンジンの柱のひとつだが、必ずしもユーザーたちはその事実を知らない?

関口 優(以下、関口)

 ロンジンはこのところ新しいコレクションや新機軸を備えたコンセプトの発表を立て続けに行っている印象です。これはどんな戦略に基づいたものでしょうか?

マティアス・ブレシャン氏(以下、マティアス氏)

 私が推し進めている戦略は大きくふたつあります。短い単語で言えば「Heritage」と「Elegance」。ご存知のようにロンジンは長い歴史を持つマニュファクチュールであり、私が2年前にこの会社に参加したときに最も驚きだったことはその豊かな歴史でした。伝統があり、多くのマイルストーンを持っている。例えば、ロンジンはGMTムーブメントの草分け的な時計メーカーですし、たくさんの発明を伴う時計を製造し航空史の発展に寄与してきました。しかし豊富すぎるがゆえに、お客様は必ずしもご存知ではないという事実もあります。こういった事実に根ざした時計を作り伝えていけるとしたら、私は非常に大きな成長の潜在性があると感じています。

 現在コレクションにラインナップされている時計も豊かな歴史を背景としたものですが、私はこのマイルストーンを思い起こさせるようなインハウスムーブメントを備えた時計も作っていきたいと考えています。特に、日本のような成熟した人々の多い市場では、かなりマッチするのではないでしょうか?

ロンジン スピリット ズールータイム。最新コレクションであるスピリットに、同社の伝統を担う機構であるGMTを搭載。ロンジンが1925年に発表した、デュアルタイムゾーンウォッチからペットネームを取っている。

関口

 それは、スピリットに登場したズールータイムや、70年代以来の復活となるハイビートムーブメントを搭載したウルトラ-クロンなどが、その戦略の先鞭という理解でよろしいでしょうか?

ブレシャン氏

 はい、まさにそうです。ズールータイムは我々がGMTウォッチのパイオニアであることに根ざし、新たなるエクスクルーシブムーブメントであるCal.L836.6を搭載したウルトラ−クロンは、ロンジンが60〜70年代にかけて高振動自動巻きムーブメントを作っていたメーカーのうちのひとつであるという事実がその背景にあります。計時の領域では1914年には10分の1秒、1916年には100分の1秒の測定を実現しており、20世紀初頭にほかのメーカーを牽引する立場にあったわけです。ウルトラ-クロンは、当時、高い技術力と精度によってあらゆるスポーツイベントから計時依頼を受けていた豊かなロンジンの歴史と、シリコンひげなどの最先端技術とを同時に宿しているのです。

スイス・サン=ティミエに居を構えるロンジン本社。この会社は、1867年に同地に工房を建設して以来変わらず同じ場所にあり続けている。本社にはムーブメント開発用のアトリエも存在しており、最近発表されたウルトラ-クロンに搭載されたハイビートキャリバーL836.6もここで設計された。

モントレ テュルク(1908年)。トルコとフランス、2つのタイムゾーンを表示。

ズールータイム(1925年)。第二時間帯を表示した初めての腕時計。

コックピットクロック(1931年)。24時間ダイヤルを搭載。

関口

 ふたつめの戦略の軸である「Elegance」については、ロンジンでは長いあいだ謳い続けられているテーマです。今後、これはどの分野で発揮されていくのでしょうか?

ブレシャン氏

 ロンジンのすべての時計はEleganceというアティチュードを内包したものとなっていますが、ひとつには女性をターゲットとした時計で見ていただけるでしょう。色彩豊かなドルチェヴィータコレクションをご覧になりましたか? 実は、ロンジンの顧客男女比は50:50。ここまで女性のクライアントから支持いただけている時計ブランドはほかにないと思います。

ロンジンCEO、マティアス・ブレシャン(Matthias Breschan)氏。2020年7月より同職。

関口

 HeritageとElegance、それぞれを体現する時計や活動はすでに具現化されていますが、今日お話を伺って、このふたつの軸がそれぞれ生きるような計画も練られているのではないかと感じました。例えば、ロンジンにはまだ現代に蘇っていない素晴らしいクロノグラフムーブメントが存在しています。13ZNや30CHのような伝説的なキャリバーはまさにロンジンのマイルストーンと言えると思いますが、これらを改めて作る計画はないのでしょうか?

マティアス氏

 とてもよい質問ですね。今の段階で申し上げられることはありませんが、ロンジンは常に開発を続けているとだけお伝えしましょう。ただ、一方で13ZNを搭載したクロノグラフはロンジンにおいて最も探されている時計であり、ブランドとしてダイレクトにそこに関わる活動はスタートしています。現状、ジュネーブのブティックだけで実施していますが、コレクターウォッチの販売を開始しまして、我々が顧客から買い集めて自社で整備した時計をお売りするというものになります。ロンジンの時計は、購入してから30年、50年と経過してもプロダクトとしての価値が保たれる。そういう認識が広まるようにスタートさせました。

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2022年の新作ウルトラ-クロン。

オリジナルのウルトラ-クロン ダイバー。

関口

 それは顧客にとっても非常に有益なサービスですね! ヴィンテージウォッチは状態もさることながら、真贋の判断もつきまとうもの。ブランド側がそこを担保するとなれば、安心して楽しむことができそうです。

マティアス氏

 ロンジンは190年も続いているブランドで、しかもかねてよりムーブメントにはシリアルナンバーが入っている。いつ、どこで、誰が作ったのかまで追うことが可能です。かつてのムーブメントのコンポーネントも豊富にストックしており、70年以上昔の古い時計であってもレストアして、証明書をおつけするサービスも行っています。長い歴史を持つだけに、修復のご依頼も多くいただくわけですね。第2次世界大戦やクォーツクライシスなど、スイスの時計ブランドのなかには中断せざる得なかった企業も多くあります。しかしながら、ロンジンは1832年以来、一度も中断されることなく続いてきたブランドです。我々は、そのマイルストーンを忘れずにこれから先も続けていくのです。

その他、詳細はロンジン公式サイトへ。