trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On カール F. ブヘラ マネロ ペリフェラルが、見過ごされてきた主役に新たな息吹と輝きをもたらす

マネロ ペリフェラルに色鮮やかなリフレッシュがもたらしたものとは。

カール F. ブヘラについて考えるとき、私が思い浮かべることがあるとすれば、このブランドが愛し、使いこなしているペリフェラルローターの技術についてだ。

 もちろん、これは私の極めてマニアックな発想であり、記事の入り口として、いや、ブランドの主張としておそらく最適なものではないだろう。そこで、少し話を巻き戻してもう一度最初から考えてみよう。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral in four colored dials

カール F. ブヘラ マネロ ペリフェラル

 あなたが時計を買うとき、何を重視するだろうか? 確かに全体に漂う美しさは、ほとんどの購入者を引きつける。ブランド名もそうだ。そしてもちろん、市場にあるすべての選択肢と比較しなければならないだろう。しかしあなたがコレクションを作るにせよレビューをするために時計を見るにせよ、 ほとんどの人はある時点で、自分が買うかもしれないひとつの時計がそのブランドについて何を物語っているのかを考えるようになると思う。私はその時計が優れているかどうかだけでなく、そのラインナップ全体がまとまりを持っているかどうかも気になる。その時計は果たして、そのラインナップを象徴するものなのだろうか? これらの要素を満たすものが、私にとっては少なくとも検討する価値のある時計といえる。

 カール F. ブヘラが本当に得意とするものがあるとすれば、それはラインナップの統一感だ。同ブランドは、私が挙げたようなちょっとマニアックなウォッチメイキング、ペリフェラルローターによる巻き上げ方式にずいぶん前から取り組んできた。巻き上げローターをムーブメントの端(外周)に配置するという、時計学的に巧妙なトリックを発明したわけでもなく、それを行う唯一のブランドでもない。だが、それをラインナップに統合し、製造本数と価格の両方で大衆に提供することに最も優れた仕事をしたブランドであることは間違いない。その一例が、今年初めに発表されたマネロ ペリフェラルの最新モデルである。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral in green

 この時計は基本的に既存のラインナップに新しい文字盤バリエーションを加えるものだが、さらなる特徴を秘めている。実はCal.A2050ムーブメントの導入については2016年に記事として取り上げているが、このときは伝統的なケース素材と文字盤の組み合わせによるドレッシーな時計という位置付けだった。

 このとき用いられた伝統的なアプローチは理にかなっていた。ペリフェラルローターの利点は、中央で回転するローターに邪魔されることなくムーブメントの仕上げを鑑賞できること、そしてマイクロローターよりも効率的な巻き上げができることだ。だが、スモールセコンドの採用はこのムーブメントに単にドレッシーさを与えただけのように見えた。そして市場に溢れるその他多くのセミドレスウォッチの波に飲まれていってしまった。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral movement

 COSC認定クロノメーターを取得しており、2万8800振動/時で駆動し、55時間のパワーリザーブを有するムーブメントに変わりはない。しかし今作においてカール F. ブヘラは、マネロ ペリフェラルが今日のシーンでより大きな存在感を示すことができるような、視覚的な衝撃を与える方法をついに見つけたのだと思う。

 私のほかの記事を読んでくれている方ならすでにご存じだと思うが、私は色彩が時計に与える影響に魅せられ、すっかり抗えなくなっている。また過去10年間にHODINKEEで取り上げた時計を振り返ってみると、現在私たちはカラー・ルネッサンスの渦中にいるのではないだろうかと思う。というのも、ここ最近で特に膨大な量のカラーウォッチが市場に登場しているように思えるからだ。そして6色(もしくは芸術、物理学の観点から黒をどう見るかによって変わってくるが)からなるカラーバリエーションは、この時計をもう1度見直すに十分な動機となるだろう。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral in salmon and blue

 ペリフェラルローターのデザインにはいくつかの欠点があり、その主なものとしては時計の文字盤のバランスがしばしば崩れてしまうことが挙げられる。ローターがムーブメントの端を占めるため、時計の直径を大きくするか、輪列のレイアウトに変更を加える必要があるのだ。センターセコンドの場合は、まあ、4番車はしばしば文字盤の端ではなく中央寄りに配置されることになる。これは1度気づいてしまうと無視できない問題だ。ヴィンテージウォッチも現行モデルもその多くがバランスを微妙に崩してしまっていて、購入を検討するほど気に入っていたとしても私がなんとなく踏み切れない原因となっている。

 カール F. ブヘラは、このアンバランスなデザインから目をそらさせるか、あるいはデザイン上の特徴に変えるために、いくつかのスマートな工夫を凝らした。シリーズの大半は円形のヘアライン仕上げが施されたカラフルな文字盤を持ち、光の加減で輝きや色の移り変わりが楽しめるようになっている。また6時位置のスモールセコンドは文字盤の表面からややくぼんでいるが、それを隠すのではなくデイト窓とマッチするブラック仕上げにすることでコントラストを演出した。これによりスモールセコンドの配置に注意を向けるのではなく、視線を前後に移動させるような形でふたつの要素のあいだに絶妙な緊張感を与えている。

 そして楔形のインデックス(大半の文字盤にロジウムメッキが施されている)はほとんどのブランドが採用するよりも少し長く、あるいは少し太く感じられる。これはスモールセコンドとのコントラストも要因としてあるかもしれない。このインデックスは視線を文字盤の中心に集め、うまくバランスを整えるのにひと役買っている。これは文字盤のデザインとしてただ数色を用意しただけではないことを示す巧妙な手法だ。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral

 ケースはこれまでと大きく変わっていない。全体はステンレススティール(SS)製で直径は40.6mm、厚さは11.2mmとなっている。私の感覚だと、このような時計はもう少し厚くあるべきだと思う。この点ではやや優雅さに欠けており、ほか部分の塾考されたデザインとは噛み合っていないように見える。しかしケースはよくデザインされており、美しいシェイプ、ラグの繊細な面取り、ハイポリッシュ仕上げとサテン仕上げの組み合わせ、さらにはリューズ周辺のケースにはわずかな隆起まで施されている。リューズガードというには少しもの足りないが、デザイナーが少なくとも何か違うことをしようとしていたことを示し、デザイン全体にアクセントを加えている。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral
Carl F. Bucherer Manero Peripheral

 サファイアクリスタルのケースバックでムーブメントの技術を見せたいというカール F. ブヘラの意向は理解できるが、この時計の新しいデザイン言語はスポーティであり、30m防水という数字には首をかしげざるを得ない。この時計からはスポーツウォッチではないにしても、スポーティに使って欲しいというメッセージが読み取れる。それは文字盤とケースの比率によって実寸の40.6mmより大きく見えるせいかもしれないし、 ブランドが掲げるカラフルなラインナップのせいかもしれない。だが私は30m防水は失敗だと強く感じている。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral

 よりスポーティな時計やドレッシーな時計が欲しい場合、カール F. ブヘラのラインナップにはほかにも選択肢があるのは確かだ。しかし、あと20mでも防水性が高ければ、この時計は同ブランドの隙間を埋めるほぼ完璧な選択肢になるだけに、この問題は悔やまれる。そしてマネロ ペリフェラルのなかでさえもこの時計がすべての役割を果たせるわけではないことは承知したうえで、可能な限りのものをカバーしていることをカール F. ブヘラがほのめかしているかのように思える。

 “タキシード・ツインズ(タキシードの双子)”と呼ぶことにした時計は、その一例だ。パンダ文字盤とリバースパンダ文字盤(ともに針とインデックスにローズゴールドを使用する)のこの2本は、2016年に発表されたマネロ ペリフェラルのドレッシーなバージョンを懐かしむ人々のために用意された答えのようである。SS製で、前回のローズゴールド製よりも手に取りやすい価格(ほかのモデル同様に税込119万9000円)であり、特にカフスに少し余裕のあるシャツを着ている人ならタキシードウォッチとしても使えるだろう。しかし私は、カール F. ブヘラがこの時計を必ずしも何かに偏ることのないバランスの取れた立ち位置に置いていることの表れだと考えた。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral

 今年初めにこの時計が発表されてから数カ月後、カール F. ブヘラは9万9000円の追加料金でSS製のブレスレットを導入し、トータル129万8000円(税込)という価格でマネロ ペリフェラルの視覚的なスポーティさをさらに強調した。そして生まれて初めて言わせてもらうが、この手の時計がお望みならストラップ付きのカラー文字盤にこだわるべきだ。ラバーストラップでも違和感なく着用でき、十分な統一感がある。

Carl F. Bucherer Manero Peripheral
Carl F. Bucherer Manero Peripheral
Carl F. Bucherer Manero Peripheral

 それにしても、このデザイン変更はカール F. ブヘラにとって賢い選択だったと思う。これまでのマネロ ペリフェラルもいい時計だったが、市場で人気を獲得するのに苦労していたように感じていた。これからはもっと多くの人々が注目するようになるだろう。

カール F. ブヘラ マネロ ペリフェラル。直径40.6mm × 厚さ11.2mmのステンレススティール製ケース、サテン仕上げとポリッシュ仕上げ。円形ヘアライン仕上げのシルバーホワイト、ブラック、ブルー、サーモン、ブラウン、グリーン文字盤、ブラックまたはシルバーのスモールセコンド、ロジウムまたはローズゴールドメッキのくさび形インデックスと針。30m防水。ブランド独自の自動巻きムーブメントCFB A2050、ペリフェラルローターを搭載したCOSC認定クロノメーター、直径30.6mm × 厚さ5.3mm、33石、2万8800振動/時、55時間パワーリザーブ、時・分、スモールセコンド、デイト表示。ブラックのハイブリッドラバーストラップ、クイックチェンジシステム付き。価格:ラバーストラップ119万9000円、SSブレスレット129万8000円(ともに税込)。

Shop This Story

カール F. ブヘラとマネロ ペリフェラルについての詳細はこちらをご覧ください。