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Editorial 始めて間もない時計愛好家時代に起きた、eBayでの失敗

自動車愛好家であり、最近になって時計収集の沼に頭から飛び込んだ、フィリップ・トレダノによる時計収集の冒険譚。

本稿は2016年11月に執筆された本国版の翻訳です。

フィリップ・トレダノ(Phillip Toledano)はアーティストであり、自動車愛好家でもあるが、最近になって時計収集の沼に頭から飛び込んだ。彼はウィットと愛嬌、そしてセンスを武器に、あっという間に著名なコレクターになった(Talking Watchesで特集されるほどに)。今、彼はコラムニストとして、混迷を極める時計界で自らの道を切り開こうとする者としての試練と葛藤を語ってくれている。今後もお楽しみに。Instagramでは、時計とクルマの両方における彼の奇妙な冒険譚を追うことができる。

vintage rolex hodinkee

いい時計と悪い時計の違いを正確に知るには、時間がかかるかもしれない。

 私は病的なまでの逆張り主義者である。だから私はいつもヴィンテージカーとヴィンテージウォッチの関係をエルヴィスも唸り口をつぐむ、軽蔑の目で見てきた。

 この否定は昨年10月まで続いていたが、ある日曜日の朝、目を覚ましてから6時間のあいだにTalking Watchesを全部消化してしまっていた。魅力的な新しい語彙に酔いしれ、それと同時に困惑した。夜光、トゥールビヨン(小鱈の親戚?)、そして私の大好きなトロピカル…“色あせた”というありふれたワードを、なんと詩的に言い換えているのだろう。まるで舌の動きひとつで、中古車が“ジェントリープレオウンド”に変わるかのように。

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 何がこの時計熱の引き金になったのかわからない。それは長いあいだ眠っていた欲望だったのだろうか、私のもっとうるさくてオイリーな、クルマへの衝動に抑圧されていたのだろうか? 原因が何であれ、私はひどく悩まされた。

 今、私は何の因果かここでHODINKEEの原稿を書いている。

 はっきりと言おう。私は時計学について知識がない。しかし重要なのは、私は熱狂的な時計マニアだということだ。今回はそんな私の旅にお付き合いいただきたい。私がまるで休暇中に酔っ払った船乗りのように、時計から時計へと移り変わって大失敗する様子を見て欲しい。その間みなさんは、きっと頭を抱えることになるだろう。

 クルマ難民の私がすぐに気づいたことをいくつか説明させて欲しい。ヴィンテージカーを購入する場合、もちろん難航する可能性はあるものの、たいていはかなり簡単なことをしている。シャシーナンバー(クルマにおける生産工場での通し番号)は一致しているか? ある1973年型フェラーリには、もともとポップアップ式のDVDプレーヤーが搭載していたのか? これは本当の話だ。誰かが錆びたボディパネルを平らなビール缶に取り替えたのか? これも真実。フェラーリ V12は4気筒のフィエロ製ランプに交換されているか? まあこれは私の作り話だ。

phil toledano watches

フィルの現在のコレクションからいくつかピックアップ。

 しかし時計の場合、常にウォッチポルカリプス(社会的混乱と時計を合わせた造語)の瀬戸際に立たされているようだ。夜光は取り付けなおしたか? リダイヤルか? そうだとしたら、いったいどうやって見分けるのか? それは純正のリューズか? 正しいベゼルか? そうでない場合、どこで見つけられるのか? “halfwit(半端者)”と名前がエンボス加工されたボロボロのアメックスカードを頼りに、数えきれないほどの困難や危険が無限に降り注いでくる。

 私が最初に行ったのは、ロレックスのオイスターブレスレットをeBayで購入したことだ。みなさんが私にあきれている様子が目に浮かぶ。もちろん、それらはすべて災害レベルの時計であった。ただヒンデンブルク級の災害ではなく、他人のせいにしようとしたちょっとした接触事故のようなものだ。私はすぐにダンジョンズ&ドラゴンズレベルの知識を持ったロレックスのアドバイザーが必要だと気づいた。メーターファースト、コメックスダイヤル、そして難解な魔法のルーン文字など、ロレックスの世界に足を踏み入れるために必要な複雑な技術や知識を解読できる人が。安全策を取ろうと、私は100%の支持率を得ていた出品者から素敵なエクスプローラーIIを購入した。到着して修理に出したとき、内部は、野生動物がなかに閉じ込められて抜け出そうとして爪を立てるかのように、まったく開かなかった。そう、文字盤がムーブメントに接着されていたのだ。

 よくやったトレダノ。本当によくやった。

 少しお金を稼ぐようになると、すぐに富裕層からファックスが届くようになった。その紙切れには買うべきもののリストが書かれていた。フェラーリ458(もちろんレッド/ベージュ)。ロレックス デイトナ。イースト・ハンプトンの家。純金製のトイレ。誤解しないでいただきたいのは、それらが悪いものというわけではないが、完璧な逆張り主義者としては、それと違うものを所有したかったのだ(私のとんでもなく格好よくてバカげたクルマについて聞いてくれれば、何を言いたいかわかるだろう)。自分が持っているものには、一般的なセンスのよし悪しよりも自分らしさを反映させたいのだ。その“異なるもの”は高価である必要はないが、珍しかったりおもしろかったり、また美しいものでなければならない。あるいはその3つすべてか。

 ということで、今週はここまでとする。願わくばあなたが睡眠障害を引き起こさないことを願うが、きっともっと欲しいと懇願するだろう(あるいは私に怒りの手紙を書くはず)。次のコラムでは、ロレックスに対する議論のあとに何が起こったのか、そして私が購入した時計のなかで希少で美しいと思ったものの、そのほとんどは結局どちらでもなかったものについてお話ししよう。

(編注: フィル・トレダノ氏のストーリーの続きはこちらから)