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Bring a Loupe オメガ スピードマスター プロフェッショナル プロトタイプ、ロレックス サブマリーナー Ref. 5512、パテック フィリップ アンチマグネティック Ref. 3418

読者の皆さんのためにウェブ上のビンテージウォッチの今週の発見を提げて我々は戻ってきた

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ジュネーブのオークションシーズンが近づくと、市場にあまり公表されていない領域に胸の踊るような時計が登場する。今週のまとめは、特別なスポーツウォッチがいくつも含まれているため、ここしばらくの間では最もすばらしいものの一つになるだろう。その存在を確認済みのスピードマスターのプロトタイプや、ニューヨーク・メッツの投手が所有していたRef. 5512サブマリーナーと、モータースポーツに起源のあるタグ・ホイヤー モントリオールなど、愛すべきモデルたちが盛りだくさんだ。そして、パテック フィリップとIWCがこれまで製造した最高クラスの耐磁性時計を含め、その骨子に本気で肉付けをしたまとめ記事を皆さんにご紹介したい。 


1970年 オメガ スピードマスター プロフェッショナル プロトタイプ

 今回、月面探査の話について取り繕ったりするつもりない。これは特別な時計なのだ。私の話が見えないのであれば、このスピードマスターのベゼルと文字盤の縁に注目し、少し詳しく見ていただきたい。これと同年代に製造された多くの個体と違い、この時計のタキメーターは、回転ベゼルを邪魔しないよう、文字盤に印刷されている。私はこれまでこんな組み合わせを見たことがない。だからこそ、この存在を知ることができ嬉しく思っている。 

 ヴィンテージ市場に注意して見ていると、信頼性や出どころが乱雑に構成されたアイコニックなものがプロトタイプとして販売されていることがよくある。これは単なるプロトタイプと呼ばれるものではなく、確証の取れたプロトタイプであり、だからこそ注目に値するのだ。ビール/ビエンヌにあるオメガ・ミュージアムは、このプロトタイプのステータスを裏付けしており、また入札者に対して、それがプロトタイプであることは、ムーブメント番号によってさらに裏付けられているという情報まで知らせている。何よりも、これは勤勉な記録管理力と、私たちの愛するブランドの遺産に焦点を当てた部門の重要性を強調している。

 私が疑問に思っている唯一の問題は、オークションハウスがそれと信じている型番だ。裏蓋のかすかな刻印を元に「Ref. 2413」として出品されている。オメガの収集家は、実際のRef. 2413は、超薄型のムーブメント、Cal.360によって稼働し、時間表示のみの時計であることをご存知だろう。私の推測では、裏蓋のこの数字は、事業計画に関する社内の記録目的のものであると考える。 

 ドクタークロット・オークショニアズがこの珍しいスピードマスターを11月15日にフランクフルトで行われるオークションに出品した。これまでの予想落札額は、3万2000ユーロから4万ユーロ(約390万円~480万円)で設定されている。他の出品と併せて、詳細についてはここから確認できる


ロレックス サブマリーナー Ref. 5512

 追いかけるのが難しい時計もある。例えばどの時計かって? プロトタイプのスピードマスターはもちろんそうだ。とはいっても、次のこの一本はあらゆる意味において困ったことになる心配はないと私は言いたい。前述のオメガとは違い、このロレックスには実験的な要素は全くないが、その点で欠けているものは補われており、さらに持てるものがある。この時計には印象的な物語があり、間違いなくすぐに所有者が変わっているに違いないが、その理由はそのストーリーにこそあるだろう。 

 見出しからお分かりのように、読者の皆さんはRef. 5512のサブマリーナーをご覧いただいているのだが、Mk1マキシダイヤルが装備されているのを目にすれば、特に魅力的な一本となる。こうしたフチなしインデックスでインデックスのドットが通常よりも少し大きいものをコレクターはしばしば「キング・マキシ」と呼んでいる。さらに言えば、この個体の元の所有者は、1973年9月から1984年5月までニューヨーク・メッツに在籍していたクレイグ・スワンという名の投手だ。非常に興味深いことに、1979年のシーズン後に引退した時点で、スワンはメッツ史上最高額の報酬を手にした投手だった。

 その起源はさておき、依然として本機は笑ってしまうくらいに魅力的なサブマリーナーだ。物語によって価値を担保する他の使い古された時計とは違うのだ。オリジナルのベゼルディスクから適切なリューズまで、全ての期待に応えるだけでなく、磨かれていないケースを詳しく観察すると、期待を超えている。それは文字盤と針に注意を向けても同じだ。その両方が申し分なく、夜光塗料をもって完璧なものとなっている。

 このサブマリーナーはインスタグラムで @sumnersdr のハンドルネームを持つ収集家が販売している。ムーブメントはオーバーホールしたばかりで、販売価格は2万7000ドル(約295万円)だ。さらに写真が見たい場合はここ から。

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タグ・ホイヤー モントリオール Ref. 110.501

 お次にご紹介するのは、全く凡庸とはいえないとある人物が所有していた時計だ。タグ・ホイヤーのモントリオールは、収集家の間で有名な人気モデルだったことはないが、二役をこなすインナーベゼルのおかげで、常に独特の機能を持つ時計として目立っていた。 タキメーターとパルスメーターの両方の計測表示があり、標準的なクロノグラフよりも多くの測定ができるのだ。これによって、幅広い層を惹きつけることにもなった。 

 ブラックPVDコーティングが施された本機は、タグ・ホイヤーのモントリオールに対する最後のひと押しを感じさせる。この一本は、かつてはスコット・ハーベイの腕にあった事実を知れば、さらに目を引くものとなる。彼はモータースポーツおよび熟練のテストドライバーとして知られており、ハーベイは、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムやカレラ・パナメリカーナ・メヒコ、ラリー・モンテカルロなど、1961年から2007年のラリーに参戦していたことで名を馳せている。ハーベイはレーサーとしての経歴を重ねつつ、モパーのテストドライバーにも従事していた。文書でしっかりと立証された彼の経歴については、このFlickrアルバムで確認できる。これにも目を通すことをお勧めしたい。

 この時計はうまく纏まっており、夜光塗料が塗布された全ての部分が調和している。注意すべき唯一の欠点は、5時周辺のPVDコーティングにある小さな傷だ。タグ・ホイヤーの悪名高き薄っぺらなコーティングは言うまでもなく、この時代のPVDコーティングの内容は現在のものとは比較にならない。これを踏まえたうえで、私はこれよりもはるかに悪い個体をこれまで目にしてきたため、その起源を考慮してこの小さな傷は見逃して欲しいと切に願う。

 この本物のドライバーズウォッチは、本記事投稿時点(2019年11月1日)での最高入札額は800ドル(約8万7000円)である。 


1961年 パテック フィリップ  アンチマグネティック Ref. 3418

 最高にクールな3本のスポーツウォッチにやや食傷気味の方もいらっしゃるだろう。そこで、わずかに保守的なもので少し方向を変えようと私は考えた。慣れない目には、この時計は、パテック フィリップの月並みなドレスウォッチに映るが、自分の求めているものを分かっている人(もしくは、時計の裏蓋のネジを緩めることに喜びを感じてきた人)にとっては、それだけに留まらない。実はこれはれっきとしたツールウォッチなのだ。磁場の干渉を念頭に置き、設計のやり直しが何度も行われた。何よりもまず、この型番は極めて希少で、誰が何と言おうが最も注目に値するものである。 

 パテック フィリップは、SS製のRef. 3418を1958年から4年間のみ製造した。この限定的な生産工程全体を通して、個体には同メーカーのニッケル仕上げCal.27-AM 400が使われ、軟鉄の保護シールドが装備された。この革新的な構造が 、磁場による障害から時計の最も重要なコンポーネントを保護した。磁場は機械式ムーブメントにダメージを与える可能性がある。同時代のロレックス ミルガウスも同じだが、これらの時計は、磁気などの力が非常に身近にあるような、科学分野で仕事をする専門家に販売されていたのだろう。

 Ref. 3418で私が最も好きなのは、ケースへの取り付けの仕様も含めて、ブレスレットだ。パテック フリップにお決まりの、ほとんどのメッシュブレスレットとは違い、この一本はタングバックルであるため、的を得ていて機能的だ。メッシュブレスレットの見た目が好きじゃないって? ご心配なく! 防水性の裏蓋を外せばブレスレットを外すことができ、自分の好きなストラップと交換できる。大部分のメッシュブレスレットのヴィンテージウォッチが永久にそのブレスレットを交換できないのとは対照的である。

 パテック フィリップの著名な専門家で著述家、また、クリスティーズの元時計部門長でもあるジョン・ラードン(John Reardon)が、この傑出した個体を、自身の最新のベンチャー、コレクタビリティ経由で販売している。同社はパテック フィリップのヴィンテージを中心に扱っており、この時計を1万7500ドル(約190万9000円)で販売している。もしご興味がおありなら、john@collectability.comまでご連絡を。 


IWC インヂュニア Ref. 666A

 耐磁性機能を備えた重要な腕時計として、これ以上ないものはなんだろうか。二つある。次にご紹介する一本はIWCで、ブランドについてご存知なら、私がインヂュニアについて話をしようとしていることがお分かりになるだろう。私は同コレクションのファンだが、特性を保証するに足るだけの際立つ個体を目の当たりにしたことがなかった。そして今、目の前にあるのがそれだ。

 このインヂュニアは、ムーブメントが軟鉄製シールドに保護され、パテック フィリップのRef. 3418と同様に、ブランドの専門技術の詰まった商品として販売されていた。前傾のアンチマグネティックとの相違点は、一歩進んだ方法である。保護方法が加わったのだ。この時計の場合、文字盤自体が軟鉄製で、どのような磁場にも絶対に邪魔されることがないのである。自動巻きの自社製Cal.852ムーブメントと組み合わせることで、成功を手にしたのだ。

 この個体は二つの理由で重要である。まず、控えめに言ってもこの型番では極めて珍しいものなので、「変わったものが欲しい」という要望に、真にふさわしいといえる。これ以外にそうした時計を私が目にしたのは、IWCのカタログの中だけだ。私が知る限り、最近では他のものは全く販売されていない。第二に、この一本は綺麗で完璧なコンディションである。文字盤には汚れがなく、厚みのあるケースからもそれが分かるだろう。本物のゲイ・フレアー社のブレスレットと適切な1Aのエンドリンクもまた気が利いており、さらに、オリジナルのIWCボックスまで揃い完璧といえる。オークションで運試しをすることなく、本当に最高のIWCが欲しいなら、これがまさにその一本だ。

 コレクターのケビン・オーデル(Kevin O'Dell)がこの一本を9500ドル(約103万6000円)で売り出している。詳しい情報と写真は彼のインスタグラム@theydidで確認できる。