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Photo Report ミッレ ミリア 2023の舞台裏

エンジンのノイズ、ガソリンのにおい、会場の熱気。そして、みんなの楽しそうな笑顔。

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 近年の筆者は、どうやらクルマと縁があるらしい。昨年発売されたHODINKEE Magazine Japan Edition, Volume 4では貴重なフェラーリ初のロードゴーイングマシン“365 GT/4 BB”と対面し、今年3月にはクラシックカーラリーイベント、ジロ・デッリゾラ沖縄 2023(GIRO DELL'ISOLA OKINAWA 2023)の取材に参加した。そして今度はミッレ ミリア(1000 miglia)だ。

ミッレ ミリアの魅力を端的に表現した有名なキャッチコピー。“世界で最も美しいレース(The Moss Beautifil Race In The World)”。

 クルマにそれほど明るくない筆者でも知っているほど有名なミッレ ミリアだが、よくわからないという方のために簡単に紹介しよう。ミッレ ミリアはイタリア全土を1000マイル(イタリア語で1000マイル=mille miglia)走ることにその名を由来する、毎年開催されている伝統的なクラシックカーレースだ。

 特徴は大きくふたつある。ひとつは1920年代から1957年までに製造されたクルマだけが参加を許されるクラシックカーレースであるということ。これはもともとミッレ ミリアが1927年から1957年の30年(第2次世界大戦の影響で1939年、および1941〜1946年は中止)にわたって開催されていたことが背景にあり、1977年に復活して以降は同レースを特徴付けるルールとなった。参加車両はいずれもクラシックカーならではの独特のフォルム、美しいカラーリングを持つものばかりだ。

 そしてもうひとつの特徴が、サーキットではなく公道を舞台にしたレースであるという点だ。参加車両はタイムトライアル方式で競う。スタート地点から一定の時間間隔で出発し、途中のチェックポイントを制限時間内に通過しなければならない。とはいえ単にタイムを競う性格のレースではないため、コースとなる各都市や町の道路脇には多くの人々が集まり、参加車両を応援したり、チェックポイントでは参加者と一緒に写真を撮ったりするなど終始和やかな雰囲気が漂う。

 美しいクラシックカーが、歴史ある街並みや自然の景色を駆け抜けながらイタリアの有名な都市や町を巡る。これこそミッレ ミリアが“世界で最も美しいレース”と呼ばれる所以である。

ミッレ ミリア 2023の走行ルート。ブレシアを出発し、時計回り(逆回りの年もある)にイタリアを縦断し、再びスタート地点のブレシアへと戻ってくる。今年はイタリア空軍創設100周年ということもあって、コースには各空軍基地の訪問も組み込まれることとなった。

 レースは毎年6月に開催され、今年は6月13日から17日にわたって実施された。北イタリアのブレシアを出発してローマへ南下、そこから北上してブレシアへ戻るというルートは大きく変わらないが、実は毎年同じというわけではない。今年は通常4日間の開催期間を1日延長し、5日間にわたってレースが行われたほか、これまでコースに含まれなかったパルマからミラノへのルートを新たに追加。世界中から集まった総勢443台のクラシックカーがイタリアを縦断した。なお、5日間のルートの詳細は以下のとおりだ。

Day1 ブレシア(ヴェネツィア通り)→ゲーディ空軍基地→ガルダ湖→シルミオーネ→ヴェローナ→ボヴォローネ→フェラーラ→ルーゴ→イモーラ→チェルビア ミラノ マリッティマ、チェルヴィア空軍基地

Day2 チェルビア ミラノ マリッティマ→サンマリノ→セニガッリア→マチェラータ→フェルモ、アスコリ・ピチェーノ→ローマ(ヴィットリオ・ヴェネト通り)

Day3 ローマ→ヴィーニャ・ディ・ヴァッレ空軍歴史博物館→シエーナ→サン・ミニアート→ヴィンチ→ピストイア→アベトーネ峠→モデナ→レッジョ・エミリア→パルマ

Day4 パルマ→ピアチェンツァ サン ダミアーノ空軍基地→ストラデッラ→パヴィーア→アレッサンドリア→アスティ→ヴェルチェッリ→ノヴァーラ→ミラノ(ダウンタウン)

Day5 ミラノ→トレヴィーリオ→ベルガモ→オスピタレット→グッサーゴ→ブレシア

左はHODINKEE USのエディター、マーク・カウズラリッチ(Mark Kauzlarich)。右はドライバーのロマン・デュマ(Romain Dumas)氏。2016年のWEC LMP1、2017年のFIA R-GTカップでチャンピオンになるなど、輝かしい成績を残す現役のレーシングドライバーだ。

ロマン・デュマ氏がドライバーを務めるのは1955年式のポルシェ 356 スピードスター。コ・ドライバーにはショパールのアンバサダーを務める中国の俳優、朱一龙(Zhu Yilong)氏がエントリーした。マークはこの車両でドライビング・エクスペリエンス・プログラムに参加。


開催前日

 東京からほぼ丸1日移動に費やし、ミッレ ミリアのスタート地点でありゴールでもあるブレシアへ到着。まずはブレシアから西に20kmほどの郊外にあるラルベレータ ルレ・エ・シャトー(L’Albereta Relais & Chateaux)へと案内された。ここは毎年ショパールがミッレ ミリアのプレスツアーで利用しているホテルだが、実はミッレ ミリアはこのホテルのパートナーとして名を連ねている。石畳と緑に囲まれたホテル入り口は、昨年のジェームズ・ステイシー(James Stacey)によるPhoto Report記事にも少し登場していたので見覚えがあるかもしれない。

 16:30。筆者はパドックを訪れていた。会場はイタリア・ブレシアにある展示貿易センター、ブリクシア フォルム(Brixia Forum)。ここでの主な目的はテクニカルチェック(VERIFICHE TECNICHE)だ。ミッレ ミリアの参加登録車の車両諸元(性能・機能などのスペック、寸法、基本的な構造、主要パーツといった要素など)や改造範囲がレギュレーションを満たしているかがチェックされる。その一方で、会場にはミッレ ミリアの歴史を紹介する展示パネルや、ショパールのブース、そしてミッレ ミリアショップなども設けられており、終始穏やかな雰囲気が漂う。多くの参加車両が並ぶ様子は、さながらクラシックカーの博物館のようだ。

 パドック見学を終えてホテルに戻ると、ウェルカムディナーが催された。そして2023年のミッレ ミリアを祝う新作ミッレ ミリア クラシック クロノグラフも実機とともにゲストたちにお披露目。6月のヨーロッパは日が長く、21:00過ぎでもまだ明るい。生バンドを招いての楽しい宴は、夜更け遅くまで続いた。


スタート

1955年式のメルセデス ・ベンツ 300SL(W198) ガルウィング。ドライバーはカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏、コ・ドライバーはジャッキー・イクス氏が務める。

 7:00。あいにくの小雨模様。だが、いよいよミッレ ミリア初日だ。チーム・ショパールの参加車両がホテル入り口に集結し、皆で記念撮影が始まる。ひととおり撮影を終えると、ミッレ ミリアヴィレッジへと移動した。

ブレシアのヴィットーリア広場(Piazza Vittoria)。ブレシアの主要広場のひとつで、中世の歴史的中心部の一部を取り壊し、1927年から1932年にかけて建設された。最初のミッレ ミリアが開催されたのは1927年。同レースにぴったりのロケーションだ。

ミッレ ミリアヴィレッジ入口では、レースを記念した冊子が配られていた。

 ブレシアのヴィットーリア広場に設けられたミッレ ミリアヴィレッジは、スタート地点に向かうまでのスタンバイ、ステージングエリアだ。参加車両を間近に見られるということもあって、皆クルマの写真を撮ったり、ラウンジでくつろいだりと、スタートまで思い思いの時間を過ごす。また事前にチーム・ショパールのジャッキー・イクス氏が訪れることがアナウンスされていたことから、彼はスタートまでのわずかな時間にもかかわらず、快くサインや写真撮影などに応じていた。さすが皆に愛されるスターだ。

ファンからのサインに応じるジャッキー・イクス氏。

スタート地点へと向かう参加車両。皆ここぞとばかりに写真を撮っていた。

 いよいよスタート地点へ。ミッレ ミリアヴィレッジから少し離れたところにあるため、歩いて移動する。そのあいだも町中がミッレ ミリア一色に染まっているのがわかる。ブレシアの町にとって、ミッレ ミリアは本当に特別なイベントなのだろう。

スタート地点に向かう途中、すでにスタートを切った参加車両とすれ違った。否が応でも気分が高まる。

スタート地点はミッレ ミリアの見どころのひとつ。そのため、ゆったりと寛ぎながらスタートを見守ることができるVIPエリア(VIP tribune)がいくつか設けられている。チーム・ショパールとして参加した筆者は、写真の向かい側(White Area)に設けられたGreen Areaからスタートの様子を見ることができた。撮影にも絶好のポジションだ。

続々とスタートを切る参加車両たち。

早くもエンジントラブルに見舞われるクルマも。

エントリー No.239は、カール-フリードリッヒ・ショイフレ×ジャッキー・イクス組。カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏の横で参道からの声に楽しそうに反応するジャッキー。満面の笑みを浮かべる。

エントリー No.245は、ロマン・デュマ×朱一龙(Zhu Yilong)組。こちらも両脇の参道からの声援に応える。

参道で撮影する人たちの手首も少しだけ撮影。これはショパールのGMTウォッチ、L.U.C GMT ワンだ。

こちらはアルパイン イーグル 41。シャンパングラスを持つ優雅な手元によく映える。

 チーム・ショパールのスタートを無事見届けることができた筆者だが、実は今回取材できたのは、開催前日からスタートのここまで。その後筆者はショパールのマニュファクチュールツアー取材(そちらの様子は、また後日記事にする予定だ)へと向かったため、肝心のレースについては取材ができなかったのだ。だが安心して欲しい。HODINKEE USチームの我らがマーク・カウズラリッチ(Mark Kauzlarich)がドライビング・エクスペリエンス・プログラムでチーム・ショパールのコ・ドライバーとして参加しており、ライブ感たっぷりの写真とともにレースの様子を記事にしてくれている。レースの詳細については彼の記事「世界で最も美しいレース、ミッレ ミリア 2023をドライブするイタリアでの5日間」をぜひとも読んでいただきたい。


ミッレ ミリア GTS クロノ リミテッド エディション イタリア 2023

 これは毎年のことなのだが、ショパールではミッレ ミリア開催を祝うレースエディションを1988年のパートナーシップ提携以来、毎年レースの開催に合わせて発表している。2023年は、44mmのケース径を持つミッレ ミリア GTS クロノをベースとしたスペシャルバージョンがリリースされた。

ミッレ ミリア GTS クロノ リミテッド エディション イタリア 2023

2023年のミッレ ミリアを記念したレースエディション。ショパールがミッレ ミリアのスポンサードを開始した1988年以来毎年欠かさず発表さており、本作は36本目のレースエディションとなる。イタリア限定(完売)のため購入は不可。自動巻き。COSC認定クロノメーター。ルーセントスティール™ケース、ブラウンカーフレザーストラップ。44mm径。厚さ13.79mm。100m防水。

 本作ではイタリアのフラッグカラーであるグリーンとレッドをキーカラーに採用。オリーブグリーンのベゼルにはタキメータースケールを備え、頑丈なマッシュルームプッシャーと大径リューズを持ち、レース適した機能、そしてレースの使用にも耐えうる確かなグリップ感と快適な操作性を実現させている。実はカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏とジャッキー・イクス氏は、この時計を手にレースに参戦していた。

 今回のレースエディションは5月初旬にエミリア=ロマーニャ州が壊滅的な被害をもたらした洪水災害に見舞われていたことから、販売収益の一部がその犠牲者に寄付されることになった。なお、日本でも購入できるか気になる方がいるかもしれないが、残念。もともとイタリア限定販売の上、市販向けに用意された100本はミッレ ミリア開催中に完売となってしまったとのこと。せめて写真だけでも、ということで現地でなんとか撮影できたのが上の写真だ。

 町に轟くエンジンのノイズ、立ち込めるガソリンのにおい、会場を覆う人々の熱気。わずかな時間ではあったが、本場のミッレ ミリアを五感で体験することができた。町が、そして人々がミッレ ミリアを中心にひとつになっていることを肌でひしひしと感じ、そして何よりレース参加者はもちろん、この美しいレースを見ようと集まる人たちも皆楽しそうにしているのがとても印象的だった。ミッレ ミリアはもちろん順位を競うレースなのだが、そうした結果よりも誰もがその場にいるだけで楽しい気分になれることがきっと何よりも大切なのだ。ヨーロッパの人々、特にイタリアの人々にとってミッレ ミリアとはそういう存在なのだということを心から感じ取ることができた。ショパールが36年も続けてミッレ ミリアをスポンサードする理由も、毎年町と人々が一体となる夢のような数日間を守り続けたいからなのだろう。

そうそう。今回のレースで優勝したのはどの組か気になるのでは? 2023年のミッレ ミリアを制したのはエントリー No.50、1929年式のアルファロメオ 6C 1750 SS ザガートで参戦したアンドレア・ヴェスコ(Andrea Vesco)&ファビオ・サルヴィネッリ(Fabio Salvinelli)組だった。©️Chopard

ショパールの詳細は、ショパール公式サイトへ。

photos:Kyosuke Sato(HODINKEE Japan)