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マイクロプラスチックが引き起こす深刻な環境問題は、2000年代以降、急速に世界中で広まったものだ。かつて紙やガラスで作られていたものがプラスチックに置き換わり、その利便性ゆえ爆発的に普及。その一方で、焼却するとダイオキシンなどの有害物質が発生したり、Co2を排出して温暖化につながったりしてしまうことから、完全に処分することが難しいものとなった。その結果、ごみとして投機されたものが微細なマイクロプラスチックと化し海を漂っている。
この海洋プラスチック問題に取り組む「レース・フォー・ウォーター財団」は、2010年にスイスの起業家であるマルコ・シメオーニによって設立。2015年には初めて帆船を用いて海の環境調査を行い、プラスチックが堆積しやすい場所=ジャイヤを割り出した。ブレゲは2017年よりこの財団のメインパートナーとなり、時を同じくして世界最大のソーラー船であるレース・フォー・ウォーター号が財団に寄贈され、5年かけて世界一周し世界中の科学者や現地の人々に海洋保全についてメッセージを伝えるプロジェクトがスタートした。
今回は、コロナウイルスの影響でそのスケジュールを変更しながらも、日本に無事寄港したこの船にお邪魔する機会を得た。太陽光で充電するバッテリーと水素、自動制御カイトによる風力で推進する特別な船の内部と共に、その活動内容についてお伝えする。
ブレゲは時計ブランドの中でも海との関わりが深いブランドである。アブラアン-ルイ・ブレゲは、1796年にはマリン・クロノメーターを開発しており、1815年には二重香箱を備えた高精度なものを製造しフランス王国海軍の時計師の称号を受けている。その後数十年にわたり、世代を超えてこれを海軍に提供し続けた。20 世紀に入っても、24時間計を搭載したポケットウォッチや海軍艦隊航空隊パイロット向けのタイプⅩⅩ クロノグラフなどを開発し、海軍や海との関係性を深めている。
そして1990年、今日に繋がるマリーンコレクションが誕生。本コレクションは、長きにわたる海との関係へ捧げられたオマージュとしての側面も強い時計なのである。前置きが長くなってしまったが、ブレゲには海洋保全に乗り出すだけの強いモチベーションがあり、今回のコラボレーションに至ったわけだ。
お話を伺ったマーティン船長によると、マイクロプラスチックによる悪影響で多くの海洋生物が危機に瀕しているという。誤ってプラスチックゴミを飲み込んでしまい、それを消化できず死に至ってしまったり、そこまでいかずともプラスチックストローの刺さった海ガメのYouTube動画が世間に衝撃を与えたことは記憶に新しい。
一方で、海は地球上の酸素の50%を産出している。このまま海の生態系を破壊し続ければ、いずれは我々自身にも深刻な影響を及ぼしうるわけだ。そんな未来を未然に防ぐため、レース・フォー・ウォーター号は世界を巡りながら、各国の政治家や科学者にアプローチ。子どもたちへのワークショップなども通じて、プラスチックゴミをなくすべく啓蒙活動を行っている。これからの時代に重要な、プラスチックに対する意識として5R(Refuse,Re-use,Repair,Reduce,Recycle)を掲げ、再利用するだけでなくそもそもプラスチックを用いない社会を志向している。
さて、今回の取材で最も衝撃を受けたことがある。それは、ペットボトル以外のプラスチックゴミは明確なリサイクル方法が分かっていないということだ。日本では、あらゆる物がプラスチックで包装されて販売されており、マーティン船長曰く、日本はプラスチックショップかと思うほどの衝撃を受けたそうだ。他国での事例を伺うと、例えばオーストラリアでは単回使用のプラスチックは禁止されているそうで、政治判断によって対策がなされているとのこと。
彼らは活動の中で、いかにプラスチックに価値を与えるかを重要なことと捉えている。その過程で「バイオクリーン」という装置を生み出し、あらゆるプラスチックをシュレッダーして熱分解を行うことを実現した。この装置は、熱分解したエネルギーを電気やガスなどに転化できるという。5000〜1万人ほどの人口の島に非常に有効なソリューションを提供できるとのことで、現在はプロトタイプがパリに1基しかないが、ゆくゆくはイースター島やニューカレドニアなどへの設置を予定している。
こうした活動は継続してこそ実を結ぶものであり、それには社会の理解と懐の深いスポンサーの存在が不可欠である。海から恩恵を受けたブランドであるブレゲは今、その役割を果たそうとしており、世界中の時計愛好家もこの働きかけをぜひ受け止めて欲しいと思う。
レース・フォー・ウォーター財団についての詳細はこちらへ。
その他、ブレゲについては公式サイトへ。
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