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Hands-On オーデマ ピゲ ミレネリー オープンワーク:ロイヤル オークと対をなすアイコニックデザイン

ミレネリー・オープンワークの世界へようこそ。

 オーデマ ピゲは、間違いなく20世紀で最も技術的に革新的なウォッチメーカーのひとつだ。創造性に優れており、業界を動かしているブランドのひとつでもある。ロイヤル オークによって、彼らはアップルとナイキがコンピュータとスニーカーで行ったことを腕時計でやってのけた。つまり、通常のラインナップをわずかに変えていくことで、それをブランドのアイコンにまで成長させたのだ。

Millenary Openworked

 実際オーデマ ピゲは、近代において最も有名な時計を1つではなく、2つも生み出している。ロイヤル オークとミレネリーだ。ロイヤル オークのデザインは今日、天才による偉業だと広く褒め称えられているが、発売当初は、多くの人が不快感を感じたり、理解をされなかったりといった反応だった。一方でミレネリーは、より分かりやすいプロダクトではあったが、それが支持され、真価が認められるまでにはさらに長い道のりを歩まなければならなかった。我々は、ミレネリーには間違いなく、オーデマ ピゲのデザインアイコンの地位まで上り詰める可能性があると感じている。結局のところ、この時計はロイヤル オーク同様、その見た目が異彩を放つものなのだ。しかしながら、この2つの時計が全く異なる感性、好みに訴えかけているのも事実だ。

 ロイヤル オークは、この2本ではより男性的で固定概念を砕く時計と考えられており、対してミレネリーの官能的な曲線は、はるかに伝統的な腕時計を連想させる。しかし、まさしくその理由から、後者はしばしば(ロイヤル オークとそれの派生であるオフショアコレクションを好む男性達により)それ自体に強烈なデザイン的個性があるというよりは、ロイヤル オークの代替品のようなものだと捉えられてきた。そして確かに、手首から外すと、この時計がそういった印象を与えるであろう理由も容易に理解できる。

 楕円形のミレネリーは、少なくともロイヤル オークに比べれば、あからさまに主張することは無いだろう。しかし直径が47mmもあるため、着けてみるとその物理的な存在感にうよってロイヤル オークよりも落ち着いたものとしてデザインされたというイメージを吹き飛ばしてくれる。オーデマ ピゲにとっての課題は、この時計がロイヤル オークと同等の魅力――例えそれが全く異なったものであったとしても――がないと考える人々にいかに手に取ってもらうかだろう。

 そして間違いなく、同社は、この時計をロイヤル オークより劣ったものとして扱ってきてはいない。1990年代半ばから、ミレネリーは数々のハイエンド・コンプリケーションを搭載し、さらには新たなコンプリケーションも採用してきたが、それでもなお、兄弟モデルの純粋な人気の影で目立たないままだった。しかし一度手首に巻けば、ミレネリーもロイヤル オークのように、それ自体がパワフルでダイナミックなデザインと存在感を有していることは確信できる。オーデマ ピゲにとっての課題は、この時計の比較的珍しいケース形状にためらう人々にどのようにして手に取ってもらうか、ということだ。

ミレネリー・オープンワークの世界へ

 この時計は完全にスケルトン化された時計で、オーデマ ピゲの他のラインナップにある時計よりも、自身のデザイン性をより強く主張している。オーデマ ピゲは、オープンワークの技術により時計を限界もまで削ぎ落としてきた歴史をもち、それは1921年、同社の懐中時計のひとつから始まった。それ以来、彼らは多くの腕時計への卓越したオープンワークによって名を馳せ、ロイヤル オークまでを手掛けてきた(エクストラシンやトゥールビヨン・エクストラシンなどが代表格)。

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 しかし、それらの時計のいずれも、このミレネリー オープンワークほど大胆に露出はしていなかった。ミレネリー4101をベースにしたこの時計は、本質的には同じものだが、必要のない金属部をマイクログラムに至るまで削ぎ落としたものだ。ブリッジやローターを含め、すべてが必要最小限まで削り取られ、その結果、内側と外側の両面からエッジにより定義されるオーバルシェイプの時計が生まれた。

 非オープンワークモデルおいても、テンプを文字盤側で見ることができる3次元構造を採用していたが、ミレネリー4101のムーブメントは、自社製ムーブCal.3120の要素を取り入れており(特徴的なテンプブリッジなど)、さらにダイヤル横に脱進機を配置して要素を再構成し、視認性を確保した。オフセンターの時分針、6時と9時の間に配置されたスモールセコンドにより、動的なレイアウトとなっている。オープンワークであるにもかかわらず、このレイアウトによりムーブメントがより見やすくなっている。

Millenary Openworked dial closeup

 オープンワークにおける最大の課題のひとつは、視認性を損なうことなく(もしくは少なくとも、視認性への影響を最小限に抑えて)ムーブメントをスケルトン化することにある。多くの場合、「タイムピース(時計)」という単語の最初の部分は、文字盤の残りの部分と共に消え、単なる「ピース(部品)」が残る。時間を伝えることは、美学の前では二の次になるからだ。

 この時計においてオーデマ ピゲは、対照的な素材を用いて時間を伝える要素を強調している。時・分・秒は、暗めのNAC(ナノ・アモルファスカーボン)処理されたムーブメントと黒のサブダイヤル上に、ピンクゴールドで浮かび上がる。

Millenary Openworked wrist shot

 本機のオーバルケースは、最長部分(幾何学では楕円の長軸と呼ばれるもの)が47 mmあり、市場に存在する最も大きな時計 —例えばパネライなど— に匹敵する。しかし、手首の上で不快感を感じやすい短軸の直径は42 mmで、長軸のサイズから想像するよりもはるかに快適に着用できるのだ。「大きな正方形のうろこ」状の茶色のアリゲーター製ストラップは手縫いで、それに18KPGの折り畳み式クラスプが取り付けられている。実際の着用感は非常に快適であり、SS製ロイヤル オークの一体型ブレスレットと比べて、著しく軽いことは付け加えておきたい。

Millenary Openworked dial side, balance bridge

 オリジナルのミレネリー4101の高度な進化版であることに加えて、このミレネリー・オープンワークは調和のとれたデザインのお手本だ。私が聞いたところによると、オーデマ ピゲがこの時計にオープンワークを施し、再設計する上で行った決断はすべて難しいものだったという。 代表例として、ブランドロゴの位置が挙げられる。ミレネリーの非オープンワークバージョン(ミレネリー4101)のロゴは、文字盤上にある。しかし、本機では、ロゴは左端に置かれており、元の位置でのデザインバランスを考えた場合、非常に合理的な選択だといえる。このロゴは読みやすく対称的で、インデックスとバランスをとるようにゴールドを取り入れたことで、時計に調和をもたらしている。 かつてはインデックスと同じ場所に、ホワイトの文字盤上に黒くロゴが配されていた。

 ムーブメントの仕上がりは、驚異的であると言わざるを得ない。それはデザインの観点から非常に趣味よく仕上げられているだけでなく、手仕上げによって作られる内部のシャープなエッジによってもたらされる、鋭さと柔らかさの間の素晴らしいコントラストを生んでいる。

Millenary Openworked movement

 オープンワークの時計を評価する上で重要な2つの基準にはいかに肉抜きされているか、そしてオープンワークがムーブメント本来の美しさをどれ程まで強調しているかが挙げられるが、この時計に関して、オーデマ ピゲは非常に良い仕事をしたのではないだろうか。

 このユニークな楕円ケースを持った、部分的に反転した自動巻きムーブメントは、レバーエスケープメントとセラミックボールベアリングを備えている。振動数4 Hz、パワーリザーブは60時間を有する。

 このムーブメントの形状に関して最後にひと言。多くのHODINKEE読者がお気付きのように、すべてのケースがムーブメントの形を元に作られている訳ではない。多くの角型時計はラウンド形のキャリバーを内蔵しており、確かに同社も、同じ要領でミレネリーを製作することも可能だっただろう。しかし、楕円のムーブメントを元にケースを製作するという、はるかにクリエイティブな道を彼らが選んだことは多くを物語る。そして、このオープンワークモデルは、オーデマ ピゲがそれを貫いた理由を明確にした。

Millenary Openworked movement, rotor highlighted

 このミレネリーは、ロイヤル オークを有するオーデマ ピゲが製作していなければ、ブランドのメンズコレクションにおけるフラッグシップとなっていた可能性のある時計だ。 実際に本機は、独特の形をしたムーブメントとムーブメントの伝統的技巧が、ダイナミックに融合した時、オープンワークがいかにインパクトを与えられるかを示した、非常に洗練された例といえる。そして、いかにしてミレネリーがロイヤル オークとの比較から脱し、その真価により成功を納めたのかを示している。

ミレネリー・オープンワーク:18KPGケース、両面に反射防止コーティングが施されたサファイアクリスタル。直径 最長47 mm;厚さ 13 mm;防水性能 20m;オフセンターのオープンワークダイヤル(ブラック)とピンクゴールドの針。ムーブメント オープンワークCal.4105、可変慣性テンプ 2万8800振動/時、34石、調節部品を時計前面に配置する「反転」ムーブメントデザイン。18KPG折り畳み式クラスプが付いた手縫いのアリゲーターストラップ。詳細についてはオーデマ ピゲ公式サイトへ。