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Hands-On グランドセイコー エレガンス コレクション SBGK009

小さな積み重ねが大きな違いを生む。

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時計の中には、なかなか手放しがたいものもあります。僕のデスクには毎日たくさんの時計がやって来ますが、数日間それについて考えた後、来たときと同じくらい早く消え去ってしまう時計が多いのです。でも、毎年、ほんのひと握りの時計は僕を夢中にさせ、それが来た場所に戻り、その記事を公開してからしばらく経っても、ずっと考えてしまうものがあります。2019年には、グランドセイコーのSBGK005は、僕にとって間違いなくそうした時計の1つでした。実のところ、2020年に入って2ヵ月が経った今も、それは僕の心を掴んで離さないのです。

 SBGK005には、気に入っている点がたくさんあります。クラシックなヴィンテージ・グランドセイコーを参考にした、ケースのプロファイルから信じられないようなダイヤルの仕上げまでその全てが、雫石工房から望む岩手山に敬意を表しながら、僕の想像力を掻き立てました。グランドセイコーがいくつかのフォローアップモデルを発表したとなれば、当然、それをチェックしないわけにはいきません。銀白色のダイヤルのSBGK007は間違いなく僕に訴えかけてくれましたが、最終的に最も魅力的だと感じたのはSBGK009でした。僕はちょっと試してみようとサンプルを取り寄せましたが、何と、これが大正解だったのです。

 SBGK009は、昨年初めに発売された他のSBGKモデルと同じケース、キャリバーを採用しています。そしてそれは良いことで、正直に言うと、僕は「壊れていないなら、直すな」という哲学を大いに支持しているからです。
 今回大きくアップデートされた2つの点は、ダイヤルとブレスレットです。前者はダークグレーになり、後者は他のSBGKモデルで使用されているものに代わり、9リンクのブレスレットになりました。どちらもそれなりに興味深いものですが、それらを組み合わせたことで一段とパワーアップされたと思います。

 まずはダイヤルから。グランドセイコーはそれを「ダークグレー」と呼んでいますが、それは技術的には正しいです。明るい光の下では、艶消しチャコールのように見え、あるいはそれよりもほんの少し明るい色にさえ見えます。ただし、混光照明または薄暗い照明で照らされた瞬間、僕はダイヤルの色をむしろ「墨黒(ソフトブラック)」と呼ぶと思います。カメレオンのようなダイヤルと呼ぶのは言いすぎかもしれませんし、グレーがかったトカゲはほとんど知りませんが、でもそんな感じの表現ができるのも確かです。ブラックのダイヤルは少し強すぎる場合もありますが、このグレーの色合いは、潜在的な欠点を露呈することなくブラックダイヤルの良さを大いに発揮しています。それはエレガントで、滑らかでいて、それでもなお豊かさと深みを存分に含んだものです。たくさんのオープンスペースがあるうえ、夜光がないということも効果を増幅しているでしょう。

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 さて次に、ブレスレットです。ヴィンテージ・グランドセイコーのファンは間違いなくこの新しいオプションを評価するでしょう。特定のヴィンテージGSを単純に再現したものではありませんが、1970年代のクラシックなグランドセイコーのブレスレットの多くとデザイン哲学を共有していることは明らかです。「グランドセイコー 56GS ブレスレット」をGoogleでちょっと検索してみれば、僕が言っている意味が分かるはずです。これらのブレスレットは洗練された感性を共有し、典型的な70年代のスポーツウォッチのブレスレットとは全くかけ離れたものでした。これらにはとてもスリムなリンクをもち、その対照的な仕上げはブレスレットに多くの個性を与えていました。僕は、このブレスレットをSBGKに追加するのは自然な組み合わせだと思います。特に、本機のケースは70年代のヴィンテージGSと共通点がかなり多いからです。
 あっ、そうそう、ブレスレットはもちろん超快適。少しくきつく感じるようになったら手を振って緩めることができます。僕はファンの一人です。

 あまりくどくどとやるつもりはないのですが、本機と1970年代のスポーツウォッチとの比較は少ししてみる価値があると思います。たぶん、今これほどホットなカテゴリーの時計はないということは今さら言う必要はないでしょう。購入は非常に困難で、少なくともパテック フィリップやオーデマ ピゲなどからは購入できませんし、全てのブランドがこの人気に便乗しようとしています。グランドセイコーは同じことができたかもしれませんが、代わりに、同じ時代からインスピレーションを得たものを、非常に異なる方法で放棄することを選んだのです。本機は、紛れもなくドレッシーなブレスレットウォッチであり、スポーツウォッチではありません。確かに、Tシャツとジーンズでも見栄えが良いと思いますが、多少の違和感は否めません。スーツとネクタイなら、まさに完璧な装いといえるでしょう。ほとんどの人は、グランドセイコーをいろいろなスタイルで試しています。僕はいつもそれに拍手を送っています。

 SBGK005は、僕が最初にSBGK009に目を向けるきっかけとなった時計でしたが、今両方を並べて見ることはとても面白い。これら2つの時計は、構造やインスピレーションの両面で、非常に多くの共通点がありますが、着けた経験としては、予想したよりもはるかにかけ離れているからです。SBGK005は、その鮮やかなブルーのダイヤル、隅々まで行き届いたディテール、そして素敵なストラップや時計に見合う服装でそれをどうやってうまく引き立てるかが全てです。
 一方、SBGK009は、もう少しモノリシックで、やや繊細です。ダイヤルの色合いはゆっくりと柔らかく変化し、ブレスレットの見た目は、ドレスウォッチとスポーツウォッチとを区別する境界線についてより深く考えさせます。どんな環境にも適合するその能力は、その明確なビジョンの証なのです。

 結論としては、どちらも傑出した時計ではあります。しかし、最初はSBGK005が依然として僕のお気に入りであると思っていましたが、SBGK009には不意を突かれ、それが間違いであることが証明されました。本機は印象的かつ繊細で、ユニークな時計であり、グランドセイコーが最大の良さを発揮した素晴らしい一例だと思います。この時計はあくまでもグランドセイコーであり、他の何かになろうとはしないのです。

 SBGK009は85万円(税抜)で販売されており、エレガンスコレクションの一本です(つまり、限定ではありません)。詳細についてはグランドセイコー公式サイトへ。