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Hands-On カルティエ タンク ルイ カルティエ新作のブラックダイヤルはマストではない - しかし、それでもマストだ

ミニマリズムとイエローゴールドの組み合わせは、まさに絶妙。


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昨年の今頃、カルティエと言えば、マスト ドゥ カルティエの新作、通称 "マスト"の話題でもちきりだった。全部でみっつ。レッド、ブルー、そしてグリーンだ。いずれも1980年代のヒットモデル「タンク」のリミックスモデルで、ゴールドメッキのケースにミニマルなダイヤルレイアウトの手頃な価格の時計をリリースしていた時代を彷彿とさせる。2021年モデルでは、カルティエのワードマークを除き、あらゆるマーキングを排除し、ミニマリズムを新たな高みへと昇華させた(あるいは深みへと導いた?)。

Colorful Musts

2021年のカラフルなカルティエ マストのトリオ

 これらはマストの歴史を興味深く、きちんと表したものだが、私自身も含め「これはゴールドの方がよかったのでは」という思いを残す者もいた。というのも、カルティエの作品はすべてゴールドが似合うのだ。と同時に、ブラックダイヤルのオプションがあればもっといいのではと思った。 

Steel Must

W&W 2022で発表されたスティール製ブラックダイヤルのカルティエ マスト。

 カルティエはそれを聞いていたに違いない(ほらね)。2022年、カルティエはカラフルなモデルとまったく同じ構成のスティール製ブラックダイヤルのモデルをマストラインに追加したのだ。

 しかし、それだけではない。

Tank LC gold

 グレーとレッドの2種類の文字盤が興味深いタンク ルイ カルティエコレクションのなかに、イエローゴールドのタンク LCが紛れ込んでいた。実はこのモデル、マストシリーズにあるものと同じブラックダイヤルなのだが、マストではないのだ。

 イエローゴールドにブラックダイヤル。カルティエ、そしてタンク。これだ、この時計なのだ。これが登場するという知らせを最初に受けたとき、話題になることを予感した。確かに、このモデルはスティール製のマストほど手が届きやすい価格ではないが、(時計そのものは別として)評価するに値する、まったく異なるものがあるのだ。

Tank LC gold on wrist

 前述したように、過去のマスト ドゥ カルティエでは、ゴールドへの憧れを満たすために、ゴールドヴェルメイユ(金めっきした銀や銅)を採用し、その結果、価格が抑えられた。新品だったら本物の金と同じように甘美であったろう。しかし、eBayや近所の中古時計店を見てみると、これらの時計はあまりよい経年変化をしていないことがわかる。メッキが施された時計は劣化が進むと、ひび割れや欠点が目立つ、いわば金色の鋼鉄の殻のような状態になってしまうのだ。それをパティーナと呼ぶ人もいるかもしれないが、私はそれは無理があると思っている。

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 ゴールドの時計は憧れであり、自分の努力で手に入れるものだ。私の直感では、かつてメッキのマストを購入した人の多くが、本当のゴールド時計に踏み切る準備ができているように思う。私はふたつの理由でこのリリースを気に入っている。ひとつは、マストの美学を成熟させ、デザインをスティールや文字通りのマスト ドゥ カルティエ ラインに限定していないこと。もうひとつは、前者の延長線上にあるということ。昔のマストウォッチがカルティエへの入り口だった人たちなら、この時計をしっかりとタンクコレクションに位置づけたカルティエに賛辞を送りたいはずだ。そのようなバイヤーにとって、このモデルはマストから卒業しタンクへと進むことを意味するような時計だ......正式に。

Tank LC gold

 では、この時計で何が得られるのだろうか? いつものようにタンクは、純粋にカルティエらしい体験をあなたの手首の上でさせてくれるだろう。控えめでありながら、派手すぎない。男性にも女性にも似合う時計だ。この時計はまるでカメレオンのように変化し、それが100年以上にわたってタンクの人気を支えてきたのだ。

 ファッションと融合したような時計なのである。必ずしも最も機能的である必要はない。文字盤を見てくれ。12時や6時半のドットにセットしない限り、正確な時刻を読み取ることは不可能だ(1917 MCを搭載したこの時計が正確でないとは言わないが)。つまり、この時計は「15分過ぎ」とか「半」というざっくりとした計時に相応しい究極の時計なのだ。多くの意味で、この時計はブラックタイのときの時計としてふさわしいと言える。正装するようなシーンで時刻を確認することは、実際無礼なこととされるのだから。

Tank LC gold

 新しいブラックダイヤルのカルティエ タンク LCは、時計界の抽象画だと思っている。スティール製はキュートだ。ゴールドなら大胆。しかし、シンプルな文字盤と、ゴールドケースに映える黒の組み合わせには、紛れもない魅力がある。昨年のマストのカラーパレットと同様に、この時計も大きなヒットになると思っている。

タンク ルイ カルティエ: ケースサイズ ラージ。マニュファクチュールの機械式ムーブメント、手巻き1917MC。750/1000イエローゴールド製ケース、リューズにサファイアのカボションセッティング。ラッカー仕上げのブラックダイヤル。ブラックアリゲーターレザーストラップ。価格:154万4300円(税込予価)。

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HODINKEE Shopでは、カルティエの中古腕時計を取り扱っています。カルティエの詳細については、ブランドのウェブサイトをご覧ください。