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時計業界の最高峰となる2022年のジュネーブ時計グランプリ(GPHG)がジュネーブで開催さた。最高賞であるエギュイユ・ドール(Aiguille d'Or, 金の針賞)を含む、すべてのカテゴリーが発表され、エギュイユ・ドールは今年も時計界で最も人気のある人物の手に渡った。
GPHGは、時計界が誇る最高のショーケースであり、その才能に光を当てるものだ。決して完璧なものではなく、重要で影響力のある時計メーカーの多くが参加を辞退している。ロレックス、リシュモン(ヴァンクリーフ&アーペル以外)、スウォッチグループの時計が出場していないことにお気づきだろうか。しかしGPHGは実際ところ、重要なイベントである。機械式時計や、ジュエリー、スイスの時計文化など、時計業界のさまざまな側面をが一堂に会する数少ないイベントのひとつだからだ。
私はジュネーブのテアトル・デュ・レマン(Théâtre du Léman)でのセレモニーとガラディナーの合間にこの記事を書いている。さっそく全20以上の部門の受賞者をざっと見渡しながら、感想を述べていこう。
エギュイユ・ドール(Aiguille d'Or, 金の針賞)
受賞: MB&F LM シーケンシャル EVO
コメント: MB&F初のクロノグラフのハンズオンで紹介したこと以外に、ここで付け加えることはあまりない。LM シーケンシャル EVOは、まさに素晴らしいエンジニアリングの結晶であり、審査員は大賞の受賞者として素晴らしい選択をしたと思う。この時計に関する過去の記事(こちらとこちら)をぜひ読んでほしい。また、マックス・ブッサー(Max Büsser)氏、ステファン・マクドネル(Stephen McDonnell)氏、そしてMB&Fチームに大きな祝福を贈りたいと思う。
レディスウォッチ賞 (Ladies')
受賞: パルミジャーニ・フルリエ トンダ PF オートマティック 36mm
コメント: 私はパルミジャーニ・フルリエのトンダ PFの大ファンであることを公言しているので、このコレクションの成功を記念して、ブランドが新しい賞を手にするのを見るのはうれしいことだ。トンダ PFが最終選考に残ったすべてのカテゴリーのなかで、レディスウォッチというあまり縁のないカテゴリーで受賞したことは興味深いことである。いずれにせよ、受賞にふさわしいモデルだ。
レディス・コンプリケーションウォッチ賞(Ladies' Complication)
受賞: エルメス アルソー ル タン ヴォヤジャー
コメント: 私はこの時計が大好きなので、きっと理解しがたい女性なのだろう。この時計が発表されたとき、我々はこのモデルとコンプリケーションをじっくりと観察したものの、ネタバレになるが、この時計が年末に複数の賞賛を受けることになるとは誰も想像できなかったと思う。
メンズウォッチ賞 (Men's)
受賞: レジェップ・レジェピ クロノメーター コンテンポラン II
コメント: この夜、最も大きな拍手が起こったのは、レジェップ・レジェピ(Rexhep Rexhepi)がクロノメーター コンテンポラリー IIでメンズ部門の優勝が発表されたときだった。彼がこの時計のファーストエディションで同部門を受賞して以来、3、4年ぶりの受賞となる。この時計についての私の記事はこちら。
メンズ・コンプリケーションウォッチ賞 (Men's Complication)
受賞: エルメス アルソー ル タン ヴォヤジャー
コメント: そうなのだ。エルメスはこのショーでメンズとレディス両方のコンプリケーション賞を受賞することになったのである。誤解を恐れずに言えば、これは素晴らしい時計なのですが(前述)、私は正直言って、審査員がもう少し愛を広げて複数のモデルファミリーを紹介することを望んでいた。
アイコニックウォッチ賞 (Iconic)
受賞: タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 ガルフ スペシャルエディション
コメント: このカテゴリーの実際の内容は誰も知らないが、不滅のウィル・フェレル(Will Ferrell)の言葉を借りれば、“挑発的”である。それは人々を興奮させる。そう、モナコは象徴的な存在だ。ガルフレーシングの装いをしたモナコが、ほかの候補モデル(IWCのビッグ・パイロットやオーデマ ピゲのロイヤル オークなど)よりも“一層”アイコニックである理由は何だろう? それが私にはわからない。
トゥールビヨンウォッチ賞(Tourbillon)
受賞: H.モーザー シリンドリカル トゥールビヨン
コメント: 3月のWatches & Wondersで発表されたH.モーザーのシリンドリカル トゥールビヨンは、今年のハイエンドウォッチのなかで私が最も好きなモデルのひとつとなった。トゥールビヨンウォッチ部門は、グランドセイコー、グルーベル フォルセイ、テオ・オフレも候補に挙がっており、最も予想が難しい部門のひとつだたっが、ほかの候補に挙がったブランドの少なくともひとつが、夕方になって別の部門で表彰されたのは喜ばしいことだ。
カレンダー&天文時計賞(Calendar & Astronomy)
受賞: クレヨン エニィウェア
コメント: 今年のジュネーブ・ウォッチ・デイズで私が最も気に入った時計は、記事のなかでもも言ったように、まったく新しい時計ではなかった。2020年に初めて発売されたクレヨンのエニィウェアは、カレンダー&天文時計部門の今年の受賞作であると同時に、若い見本市のなかで私のお気に入りの時計だったのだ。数カ月前に私がどのようにそれを説明したかを残しておこう「これは、私が長いあいだ見てきたなかで最もスマートな時計であり(ある地点の年間の日の出/日の入り時刻を正確に計算できる)、また私が1週間試着したなかで最も快適な作品のひとつでもある」
メカニカル・イクセプション賞(Mechanical Exception)
受賞: フェルディナント・ベルトゥー FB 2RSM.2-1
コメント: フェルディナント・ベルトゥーが製作する時計は非常に少ないが、GPHGのステージでは必ずといっていいほど、このブランドの時計が登場する。FB 2RSM.2-1はメカニカル・イクセプション賞を受賞し、年に1度のGPHGで4度目の受賞となった。
クロノグラフウォッチ賞(Chronograph)
受賞: グローネフェルト 1941 グローノグラーフ タンタリウム
コメント: MB&Fのクロノグラフがエギュイユ・ドールを受賞したことで、グローネフェルトがクロノグラフ賞を受賞する舞台が整った。この時計は、今夜何らかの形で表彰されるに値する、非常にクールな時計だ(詳しくはこちらをご覧ください)。
ダイバーズウォッチ賞(Diver)
受賞: チューダー ペラゴス FXD
コメント: 私はカウントダウンベゼルが大好きなのだ。だから、チューダーが今年のダイバーズウォッチ賞を受賞したことに文句はない。Hodinkeeの寄稿者であるアラン・ファルメロ(Allen Farmelo)氏が、今年の初めにダイビングをしたときの様子をご覧ください。
ジュエリーウォッチ賞(Jewelry)
受賞: ブルガリ セルペンティ ミステリオーシ ハイジュエリー シークレットウォッチ
コメント: 昨年のエギュイユ・ドールを受賞したブルガリは、セルペンティを非常に精巧に再現し、今年のGPHGでジュエリーウォッチ賞を受賞した。私は宝石のセッティングで時計を判断する資格はないが、黄金の蛇の口のなかにダイヤモンドのベゼルをセットすることほど難しいことはないと思っている。
アーティスティック・クラフト・ウォッチ賞 (Artistic Crafts)
受賞: カリ・ヴティライネン Ji-Ku
コメント: カリ・ヴティライネンがGPHGで優勝できなかった年は、生きるに値しない1年だ。だから、カリ・ヴティライネンがテアトル・デュ・レマンのステージで“Ji-Ku”を披露してくれるのはありがたいことだ。この時計は、スイスの時計製造技術と日本の職人技の粋を集め、ヴティライネンというひとりのフィンランド人の頭脳によって命を吹き込まれた驚くべき時計なのだ。
小さい針賞(Petite Aiguille)
受賞: トリローブ ニュイ・ファンタスティック デューンエディション
チャレンジウォッチ賞(Challenge)
受賞: M.A.D.1 レッドエディション
コメント: MB&Fの創始者であるマックス・ブッサーは、ジュネーブのテアトル・デュ・レマンのステージで心地よさを感じていることだろう。彼は9度目のGPHG賞(今夜のエギュイユ・ドールを含む)を受賞し、ファンキーで(そして予算的にも)手ごろなM.A.D.1 レッドエディションで、M.A.D 1ブランド初の受賞を果たした。数カ月前のA Week On The Wristで、コールはまさにこの時計を身につけていた。
メカニカルクロック賞(Mechanical Clock)
受賞: ヴァン クリーフ&アーペル バーズ ファウンテン オートマトン
コメント: 私は個人的にはアラン・シルベスタインとのコラボレーションによるUTINAMクロックをこの部門で応援していたが、ヴァン クリーフも当然のように受賞した。今年のWatches & Wondersのビデオで、オートマトンが動いているところを見てほしい。
クロノメトリー賞(Chronometry)
受賞: グランドセイコー Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン
コメント: Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨンという、真に先駆的な作品を発表したグランドセイコーが、スイスの業界から認められたことに私はこの上なく感激している。MB&F LM シーケンシャル EVOがエギュイユ・ドールを受賞したことは喜ばしいことだが、Kodoが最優秀賞を獲得できなかったことに、正直なところがっかりしている部分もある。クロノメトリーの受賞は、2022年の最も素晴らしいリリースのひとつにおける大きな慰めだ。
オーダシティ賞 (Audacity)
受賞: ブルガリ オクト フィニッシモ ウルトラ
コメント: ブルガリは昨年のGPHGでオクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダーで最高賞を獲得し、さらにオクト フィニッシモ ウルトラでは定番のオクト フィニッシモをより薄型化した。エギュイユ・ドールを連続受賞したブランドはひとつしかなく(2000年代前半のパテック フィリップ)、ブルガリにとって今年はその可能性はなかったが、それでもオクト フィニッシモ ウルトラがオーダシティ賞を受賞したのは、それなりの理由があったからである。
イノベーション賞(Innovation)
受賞: ヴァン クリーフ&アーペル レディ アーペル ユール フローラル スリジエ
コメント: 「僕の腕には似合わないと思うが、レディ アーペル ウール フローラルは間違いなく僕の心を盗んだ」
これは、今年初めのWatches & Wondersでヴァン クリーフ&アーペルのレディ アーペル ユール フローラル スリジエを扱った私の親愛なる友人ジェームス・ステイシーの反応だが、私は彼が何かを掴んだのだと思う。この特別なヴァン クリーフ&アーペルの時計は、審査員の心を掴み、同じく特別なイノベーション賞を受賞することになったのだろう。
レヴェレイション賞(Revelation)
受賞: シルヴァン・ピノー オリジン
コメント: 正直なところ、私はこのシルヴァン・ピノーがメンズ賞を奪う可能性は少ないと思っていたが、レジェップ・レジェピと彼のチームの素晴らしさを疑うべきでなかった。とはいえ、何らかの評価を受ける結果になったのは、やはり素晴らしいことだ。オリジンはすでに独立系好きのあいだで静かな人気を博しており、シルヴァン・ピノーをスターに押し上げることになりそうだ。
審査員特別賞(Special Jury Prize)
受賞: フランソワ・ジュノー氏
コメント: フランソワ・ジュノー氏は、スイス時計業界におけるオートマトンのスペシャリストだ。時計業界において長年のキャリアを持つ彼に、GPHGの審査員たちは今日、栄誉ある賞を贈ることにした。ジュノー氏のような縁の下の力持ちがこのような形で表彰されることはまれであり、彼が時計界でいかに高く評価されているかがわかるだろう。
ベストヤングスチューデント(Best Young Student)
受賞: シモン・デバズ氏
コメント: 正直に言と、私はシモン・デバズ(Simon Debaz)氏が誰なのか知らない。でも、それが学生を称えるということなのでだろう。彼の今後の活躍が楽しみだ。
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HodinkeeはGPHGのサポーティング・メディア・パートナーです。筆者をはじめ、Hodinkeeの社員数名はGPHGアカデミーのメンバーです。
GPHGの詳細については、同団体の公式ウェブサイトをご覧ください。
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