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Magazine Feature オメガ スピードマスターの歴代人気モデル10選

スピーディについて「影響力がある」と言うのは、アメリカの伝説上の巨人ポール・バニヤンを「巨大だ」と言うようなものだ。


HODINKEEは文字通り、月へ行き、さらに飛躍し続けるこのクロノグラフ抜きでは存在し得なかった。過去半世紀にわたり、数多くのモデルが誕生した。そのなかでも、私たちが最も愛するモデルを10本紹介しよう。

Nº10: スピードマスター ムーンウォッチ ファースト・オメガ・イン・スペース

 クラシックなスピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルも捨てがたいが、最近のスピードマスターでそれに迫るものがあるとすれば、それは “ファースト・オメガ・イン・スペース”においてほかにないだろう。この時計は、1962年のマーキュリー・アトラス8号ミッションで地球を周回した宇宙飛行士ウォルター・“ウォーリー”・シラーの腕に装着されたスピードマスター初の宇宙飛行から50周年を記念して、2012年にシリアルナンバー入りの通常生産モデルとしてデビューした(記事「A Week On The Wrist オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペースを徹底レビュー」参照)。ミッション遂行当時、シラーのスピードマスター CK2998はNASAが承認した公式時計ではなく、彼の個人所有のものだった。

 1969年にアポロ11号の乗組員に支給されたスピードマスターと比較すると、シラーの時計はシンメトリーなミドルケース、ストレートラグ、アルファ針、そして“PROFESSIONAL”の表記がないことで、プロフェッショナル以前のモデルであることを示している。直径39.7mmのサイズは、現行のスピードマスターよりもコンパクトで、オリジナルの861(伝説のCal.321のアップデート版)の進化版である手巻きCal.1861を搭載していた。私たちはこの小ぶりなサイズと全体の形状を非常に気に入り、2018年のオメガとの独自コラボレーション、スピードマスター HODINKEE 10周年記念限定モデルのプラットフォームとして使用した。-ローガン・ベーカー

Nº9: スピードマスター X-33‘スカイウォーカー’

 オメガが現在、デジタル式のスピードマスターを製造していることをご存知だろうか? それも、同社が製造してきたなかで最も複雑なクロノグラフのひとつを。1990年代後半に現代の宇宙飛行士のニーズに合わせて開発され(2022年9月には新ムーブメントを搭載してアップデートを果たした)、国際宇宙ステーションに滞在する実在のスカイウォーカー(宇宙飛行士)の多くが、このスピードマスターX-33 ‘スカイウォーカー’を愛用している。

 このチタン製クォーツ時計は、ミッション経過時間(MET)やフェーズ経過時間(PET)といった宇宙時代の高度な機能に加えて、3タイムゾーン表示(UTC時間を含む)、永久カレンダー、クロノグラフ(スピードマスター)、最大80デシベルのチャイムを発する3つのアラーム(ISSの騒音を発するデッキ内では必須)、使わないときの停電力モードなどの標準的な機能も備えている。2019年のTalking Watches出演時に宇宙飛行士のデイブ・ウィリアムズが語ったように、「宇宙で時計が必要とすることをすべて備える時計は、それまでひとつもなかった」 のだ。-ローガン・ベーカー

Nº8: アラスカプロジェクト リミテッド・エディション

 アラスカプロジェクトの時計について、次のよう述べるのは私が最初ではないし、最後でもないだろう。アラスカプロジェクトは、アラスカ州とは何の関係もない(時計の大部分が白色で、雪も白いので、誰もが結びつけたがるのも無理はない)。実際はオメガが月面に到達できるスピードマスターを探すために考え出したコードネームを指す(最初のプロトタイプは月面着陸と同じ1969年に発表された。そのため悲しいかな、満足できたのはほとんど見栄えだけだった)。最も有名なアラスカプロジェクトのプロトタイプは、亜鉛コーティングのダイヤル、視認性の高い分針と時針、そして真っ赤な陽極酸化アルミニウムのクラムシェルによる熱対策が施された1972年の製品だった。

 これらのデザインは、2008年にオメガが1970本の限定モデルを発表するまで、プロトタイプの煉獄から出ることができなかった。この時計は、基本的にはスピードマスターに改良を加えたダイヤルと、キュートな赤い外装が特徴だ。しかし、ムーブメントには耐腐食性の高い素材の受けと地板にロジウムメッキを採用し、別次元の進化を見せている。ところで、自分の時計にロジウムメッキのパーツは必要だろうか? 260℃の高温から-148℃の極低温まで、耐熱性をフルに活用するつもりだろうか? おそらくないだろう。しかし、その能力があるのを知るのは楽しい。それに、このような時計は他にはないだろう。-サラ・ミラー

Nº7: シルバー スヌーピー アワード (50周年記念モデル)

 1970年10月5日、NASAがアポロ13号で勇敢に任務を遂行した宇宙飛行士に贈ったのが、最初のシルバー・スヌーピーアワード(賞)だ。オメガ スピードマスターは、その飛行で彼らの生存に重要な役割を果たした。限定生産のパイオニアであるオメガは、そのあともダイヤルにスヌーピーがプリントされた記念モデルのスピーディーを生産してきた。シルバーのスヌーピー・スピードマスターはいくつかあるものの、このモデルは圧倒的にクールだ(そして唯一の非限定モデルでもある)。その理由は? スヌーピーがロケットで月の周りを飛行する姿がケースバックに描かれているからだ。この時計は、時刻表示とクロノグラフ機能に加え、ビーグルの愛らしい機械仕掛けのギミックを搭載しており、思わず見入ってしまう。-ダニー・ミルトン

Nº6: 現代に甦った321

 オリジナルのスピードマスターへのオマージュというよりも(いい意味で当時のスピードマスターに酷似しているが)、この時計はオリジナルの真髄を受け継ぎながら、現代の最高水準の技術革新でアップデートを果たした。321(2020年発売ということで、非常にモダンだ)は、単に優れた時計をよりよくしただけでなく、革新性と技術的な精密性を優先させることで、オリジナルのスピードマスターの精神を受け継いでいるのである。

 かつてはムーブメントに純銅を使用していたが、現在は腐食を防ぐためにセドナゴールドをPVDに使用している。ベゼルは、かつてはアルミニウムだったが、本モデルでは傷のつきにくいセラミックに変更された。サファイアクリスタル製ディスプレイケースバックは、刷新された心臓部を見逃すことはない。-ノラ・テイラー

Nº5: ダーク サイド オブ ザ ムーン

 2013年のバーゼルワールドで発表されたブラックアウトしたセラミック製クロノグラフは、スピードマスターの新しいデザインの方向性を示すと同時に、時計マニアのなかでも特にこだわりの強い長年のファンを惹きつけるモデルだ。このモデルは、月の裏側を初めて自分の目で見たアポロ8号の宇宙飛行士にさりげなくオマージュを捧げている。プッシャー、リューズ、ダイヤルなど、ほぼすべての外装パーツにセラミックを使用し、それぞれ異なる仕上げが施された。

 また、ディスプレイケースバック(唯一セラミックを使用していない部分)からは、当時の新型キャリバー9300を眺めることができる。DSOTMは、少なくともオメガでは影響力のあるモデルだった。後継のホワイト サイド オブ ザ ムーン、グレー サイド オブ ザ ムーン、そしてアポロ8号オマージュモデルなど、セラミック製スピーディの礎を築いたからだ。-コール・ペニントン

Nº4: Ref.105.003 'エド・ホワイト'

 Ref.105.003は、スピードマスターが ダイヤルに“PROFESSIONAL”の追加行を獲得するきっかけとなったリファレンスのひとつだ。宇宙飛行士のエド・ホワイトは、アメリカ人として初めて達成された宇宙遊泳の際にこのモデルを着用していた。スピードマスターはNASAの飛行認定を受けたあと、プロフェッショナルモデルという名誉を与えられたが、ホワイト氏の時計は単なる古いスピードマスターであり、現在ではこのようなリファレンスを “プレ-プロフェッショナル”と呼んでいる。

 ストレートラグとプロフェッショナルよりもスリムなケースが特徴で、コレクター間ではプレ-プロフェッショナルモデルはある種の自慢の種となっている。また、ダイヤルに直接プリントされたオメガのロゴではなく、アプライドロゴのパイパンダイヤルが特徴的で、コレクターにはたまらないディテールとなっている。-コール・ペニントン

Nº3: CK 2915

 スピードマスターはのちにムーンウォッチと呼ばれるモデルだが、その始まりはミッドセンチュリー期のカーレース用クロノグラフだった(これが名前の由来となっている)。CK2915はスピードマスターの原点となるリファレンスで、一般に2915-1と呼ばれる初期のモデルは1957年にまでさかのぼる。2915はわずか2年間しか製造されず、オメガはスティール製ベゼルとひと目でそれとわかる“ブロードアロー”針を採用したのが特徴だ。今日、CK 2915-1モデルは、最もコレクターの多い、人気のあるスピーディのリファレンスのひとつであり、2021年11月には、その一個体がそれまでのオークション記録を破る340万ドル超(約4億4千万円)で落札された。

 この時計は、オメガが限定版として復刻したほど切望されているもので、上の画像でご覧いただいているとおりだが、オリジナルとは異なり、いつか手に入るチャンスがあるかもしれないと考えられる。-ジェームズ・ステイシー

Nº2: HODINKEE10周年記念リミテッドエディション

 別にここで独立を宣言するつもりない。私はただこの時計が大好きで、これからもずっとそうあり続けるだろう。なぜなら、この時計は私の人生の多くの節目を飾ることができたからだ。その結果、私が時計に興味を持つきっかけとなったブランドとともに、10年間にわたる多大な努力と、HODINKEEの運営で得られた素晴らしい成果を祝うことができた。さらに、1998年にオメガ スピードマスター・マーク40を手首から外し、私の人生を変えた祖父、エリオット・フリードマンという、私に様々な影響を与えた人物へのささやかな賛辞も込められている。そんなことは誰も気にしていなかったが、私にとっては重要なことだ。

 その上、このモデルは、我々が初めて製作に関わった大規模な限定モデルとなった。2018年当時、この時計は500本作られたが、忘れてはならないのは、当時の時計界は現在とは異なっていたことだ。不合理な熱狂の的となるような時計はなかったし、HODINKEEは今よりずっと規模が小さかった。私たちはこの時計を平日の朝に何の前触れもなく発売し、数分で完売させた。何年もかけていろいろなことをやってきたが、このプロジェクトは今でも私にとって大きな意味を持っている。直径39.7mm、手巻き、そしてスピードマスターには珍しい色使いと遊び心がここにある。-ベンジャミン・クライマー

Nº1: アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン™ ゴールド リミテッド エディションモデル

 オメガは記念日を祝うのが大好きだ。そして、私たちはその記念となる時計を見るのが大好きだ。しかし、大衆向けに記念限定モデルを発表するずっと以前から、オメガは少数のエリートのために、極めて希少価値の高い時計を製造していた。アポロ11号の乗組員が帰還したあと(彼らはそう、月面歩行という偉業を達成した)オメガは栗色のベゼルとブラックマーカーを備えたゴールドのスピードマスターの特別モデルを製作した。このモデルには、クールさが滲み出ている。そのうちの1本は、当時のリチャード・ニクソン大統領に贈られる予定だったが(それぞれのケースバックに刻印があったことからそう窺える)、公職者には贅沢すぎるという理由で受け取られなかった(実話である)。

 2019年、タイミングよくオメガはアポロ11号から50年を記念して、ご覧のようなアポロ11号モデルの復刻版を発表した。この復刻版にはセラミックベゼルなどの現代的なアップグレードが施されているが、見た目はオリジナルに負けず劣らず素晴らしいものだ。ゴールドのスピーディに勝るものはないし、これこそが私たちのお気に入りだ。-ダニー・ミルトン

Hodinkee Shopはオメガの正規販売店です。コレクションはこちらからご覧いただけます。

Hodinkee Shopでは、マガジンVol.11と過去10号すべてを購入することができます。また、Shopでは、Vol.11に掲載された時計から特別にキュレーションした時計を販売しています。さらには、オメガのスピードマスター トップ10をベースにした特別コレクションを用意しています。