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Auctions ロジャー・スミス氏が手掛けた“最高傑作”が、フィリップス ニューヨークに登場

すべての部品がスミス氏の手によって生み出されたポケットウォッチ No.2。これは間違いなく、私がいままでつくりあげた時計のなかで最も重要な時計であると、イギリスの時計職人は話す。

ロジャー・スミス(Roger Smith)氏のポケットウォッチ No.2が、フィリップスのニューヨーク ウォッチ オークションにて初めて一般販売されることになった。8回目となる本開催は、6月10日、11日に行われる。

 「間違いなく、私がつくったもののなかで最高の時計です」と、今週初めに懐中時計の話をしたとき、ロジャー・スミス氏は言った。これはスミス氏が22歳の時、時計職人のジョージ・ダニエルズ(George Daniels)に弟子入りをするべく、初めて懐中時計を贈ったことから始まる。しかしダニエルズはスミス氏に、それがあまりにも“手作り感”が強すぎると言い放ち、何もないところから“生み出された”ようにするべきだと、その申し出をはねつけた。

ロジャー・スミス ポケット ウォッチ No.2

 スミス氏はダニエルズからの批評を胸にイギリスのボルトンに戻った。それから5年のあいだ、彼は週に3、4日、2本目の懐中時計の製作に取り組みながら、時計の修理や修復の仕事をして、自分自身とそのプロジェクトを維持してきた。

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 そしてスミス氏はポケットウォッチ No.2を、最初の作品よりもさらに複雑なものにしようと試みた。ムーブメント、ケース、針、文字盤など、時計のすべての構成部品を氏自らが素材から作り上げたのだ。同モデルに搭載された、4年周期のパーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、ワンミニッツトゥールビヨン、スプリングデテント脱進機などを設計し、ムーブメントは金メッキとつや消しの地板、パープルブルーの青焼きネジ、ゴールドシャトンといった伝統的なトラディショナルウォッチメイキングのスタイルで仕上げている。

ロジャー・スミス氏

若かりし日のロジャー・スミス氏。

 「ダニエルズの著書である『ウォッチメイキング』は、腕時計の組み立てマニュアルでした」と話すスミス氏。「すべてが初めての経験でした。部品の形状や成型方法、正しく熱処理をする方法など、部品ひとつひとつについて最善のつくり方を考えなければなりませんでした。最初の懐中時計に続き、これは私がつくった2つ目のトゥールビヨンでしたから、それすらもチャレンジでした」

 スミス氏が部品をつくればつくるほど、彼の知識も増えていく。最初につくりあげた部品があとから作った部品よりも洗練されていると感じられないという理由で、5年のあいだに時計を4、5回も作り直したという。ムーブメントの各パーツは1枚の鋼板の上に描かれ、それを手作業でカット、ヤスリがけをし、研磨した。3つのパーツからなるケースは1本の金塊から始まり、鎚で叩いてハンダ付けされ、そして直径66.5mm、厚さ21.5mmの18Kゴールドケースへと成形された。

ロジャー・スミス ポケット ウォッチ No.2の蓋を開けたディテール
「英国を駆け抜ける旅」第1話:ロジャー・W・スミス

さかのぼること2016年、HODINKEEは12日間かけて英国を旅した。もちろん、マン島にあるロジャー・スミス氏の工房からスタートした。スミス氏の工房での映像はこちらでご確認ください。

 5年後、スミス氏はマン島に戻り、ダニエルズにその時計を贈った。偉大なる時計師はその時計の調査を開始した。ダニエルズが部品を指差して誰が作ったのかを聞くたび、スミスが都度私がつくりましたと答える。ムーブメントの組み立てや仕上げは誰が行ったのか? という問いかけにもスミス氏は、私がやりましたと答えた。最後に、ダニエルズはスミス氏に向かってこう言った。「おめでとう。これであなたも立派な時計職人の仲間入りだ」と。

この出会いから間もなく、ダニエルズはスミス氏に、彼が考案したコーアクシャル脱進機がオメガに採用されたことを記念したミレニアムシリーズ完成への協力を依頼した。ミレニアムシリーズが完成した2001年、スミス氏は自身の手で腕時計をつくることを決意し、初のレクタンギュラーウォッチを完成させた。この最初の腕時計のために、スミス氏はスイスから多くの部品を調達したが、その後すぐに完全なる自社製ムーブメントを実現したいと思うようになる。

 スミス氏は「これは私にとって、自身のキャリアを決定付ける大きな瞬間でした」と話した。「自分なりのムーブメントをつくりあげたかったため、ほかのサプライヤーに頼るのは嫌だったのです」。そこで彼は2004年にポケットウォッチ No.2を手放し、彼の哲学(ハンドメイドのすべてを手首にもたらす)を反映させた、シリーズ2 ウォッチの開発資金に充てた。さらにこの懐中時計は、数年前にダニエルズにプレゼントしたあと、ダニエルズがいくつかの改良を加えていたのだ。トレードマークである針を新たに製作し、文字盤には4種類以上ものギヨシェ装飾が施されていた。この懐中時計が2004年にプライベートコレクションに売却されて以来、スミス氏はこの時計を手にしたことがなく、もし今週末に見る機会があれば、じっくりとチェックするのが楽しみだという。

ロジャー・スミス ポケット ウォッチ No.2の文字盤

 「まさにタイムカプセルですね」とスミス氏。「これ以上の改良は無理だと思うくらいになりました。このピースを売ることができたのはうれしかった。それが当時できた精一杯の成果であり、5年間、私の人生を握っていたのです」。ポケットウォッチ No.2は、同氏の最も重要な作品のひとつであるだけではなく、現代のトラディショナルウォッチメイキング、あるいは現代の独立系時計師においても非常に重要な時計のひとつであり、推定落札価格は“100万ドル以上”(日本円で約1億3345万円)といわれている。彼が手掛けた代表的な時計が一般公開されるのを楽しみにしているのは、スミス氏だけでないことは確かだ。

フィリップスはロンドンを皮切りに、4月13日から16日まで世界各地で“ポケットウォッチ No.2”を展示する予定です。そして今週木曜日に行われる一般公開にはロジャー・スミス氏本人も出席する予定。またこちらは6月3日から9日までニューヨークで開催されるニューヨーク ウォッチ オークション 8に出品され、同オークションは2日間行われます。フィリップスのニューヨーク ウォッチ オークション 8の詳細については、フィリップスのサイトをご覧ください。