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セイコー ローイングブレザーズとの天才的コラボ

定番のセイコー5に、プレッピーな雰囲気をプラスした限定モデルが登場。

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2005年、ジャック・カールソンとエリック・ウィンドという2人の学生がジョージタウンの新入生として出会った。カールソンはボート部の操舵手を務めていたが、彼はこの新しい友人にもやってみないかとすすめた。ウィンドは結局2日間だけしか続かなかったが、2人の友情は大学在学中、そしてその後別々の道に進んでからも続いた。ウィンドはパームビーチで有名なヴィンテージウォッチのディーラーになり、カールソンは彼が2014年に出版した同名のビジュアルブックにちなんだ衣料品とライフスタイルの会社を設立した。それがローイングブレザーズ( Rowing Blazers)だ。

 その本の出版にあたり、5番街にあった旧ラルフ・ローレンストアでパーティが開かれ(このイベントについては、ウィンドがHODINKEEの「Watch Spotting」で素晴らしい記事にしている)、世界で最もエリートを輩出する大学の漕ぎ手たちのファッションスタイルを讃えた。このイベントはイートン、アンドーバー、エクセター、イェール、ケンブリッジなどエリート中のエリートについて話だ。この本に登場するジャケットは、ボート上でも街中でも着られているが、ベイビーブルーやカーディナルレッドなどの色を多用し、ラペルや飾りボタンがふんだんに使用され、時には切り花で作られたヘッドピースも登場するなど、滑稽なほどにオーバーな演出がなされている。他人がどう思おうと、一生の繁栄が約束されている階級の揺るぎない自信があってこそ着こなせる服なのだ。

Rowers at Eton in floral headwear

花のヘッドピースを着けて漕ぐ様子。

 私が10代の頃は、まさにこのような服を着たいと思っていた。

 私も漕ぎ手だった。とはいえ、高級な寄宿学校ではなく、オーランドという野暮ったい街の公立高校で、頭に着けるものといえばミッキーマウスの耳くらいしか思い浮かばなかった。セントラルフロリダはアイビーリーグとは程遠いところにあったが、そこら中に湖があり(隣人が生きたワニを家に持ち帰ってプールに放とうとしたくらいだ)、ボートのチームもたくさんあった。年に一度、我々は北部で開催される全国大会に参加し、名門チームにコテンパンにされて逃げ帰ったのだが、彼らのような服さえ着ていれば勝てたのにと思ったものだ。

 それはともかく。ローイングブレザーズの本では、ローイングブレザーの服をかなり真面目に扱っていた。その後、カールソンはローイングブレザーズという(ブランド)を立ち上げ、重要でありながらほとんど気づかれない変化をもたらした。19世紀のボートハウスの服や、1965年のアイビースタイル以来、キャンパスで流行していたプレッピースタイルを単純に再現するのではなく、それらを参考にして、ひねりを加えたのだ。ひねりを。ユーモアと共に販売したといえる。ストリートウェアのように。気の利いたゴスファッションのデザイナー、リック・オーウェンスが顧客にボンデージや地下牢ディスコ風の服を着せたように、ローイングブレザーズは、皮肉なガーデンパーティや酔ったゴルフといったシチュエーション用の服を男女を問わす提案した。今日、このブランドでは、クロケットベスト、バケットハット、ラグビーシャツ、クリッターパンツ、マドラスジャケット、バンカーバッグ、ボートシューズ、パジャマセット、そして時計など……誰がキュレーションしたのか不明なヴィンテージ品のコレクションを買うことができる。

 ウィンドはローイングブレザーズに出資しており、以前からその美意識に合った時計を探し出して販売する手助けをしてきた。例えば、古いホイヤーのヨットタイマーのような。ロレックスのエアキング、ゾディアックのシーウルフ、色々なセイコーのモデルもあった。カールソン自身、セイコーが大好きで数本所有しているが、長年セイコーと提携して自分の時計を作りたいと思っていた。そして、ついに実現したのだ。

Rowing Blazers Seiko watch

 ローイングブレザーズは、セイコーと共同でデザインしたダブルネームの3種類の時計を495ドル(約5万4000円)で発売する。1968年に発売され、2019年にリニューアルされたセイコー5をベースにしているが、その個性的な美学は2021年らしいものだ。例えば、どこまでも大きくスポーティであること。また、ユニセックスであることも重要だ。「小柄な女性が着用している写真がたくさんあります」とウィンドが教えてくれた。そして「ラグtoラグの感覚は比較的狭いので、小さな手首にもよく似合います」と言う。サイズが知りたい人のために言うが、この時計は46mmだ。

 約20種類のコンセプトの中から絞り込まれた3つのデザインは、逆回転防止ベゼルを除いて全て同じだ。ケースやダイヤルのデザインは、セイコー5を見たことがある人なら誰でも知っているものだろう。曜日と日付は3時位置にあり、リューズは4時位置にある。6時と9時位置のインデックスはコンピュータのマウスのようで、12時のインデックスは漏斗のようだ。時針は注射器型で、分針は矢印型である。秒針は赤と白のストライプのポールに変えられているが、このポールはレガッタのゴールポストに似ている。ポールは通常、2000mのコースの最後の泥の中に刺さっている目印で、疲れ切った選手が漕ぐのを止めて、船べりに吐いてもよい正確な瞬間を知らせてくれるのだ。

The back of a woman with a Seiko watch

 そんな儀式(実際には、どのレベルにも存在する)から身を守るためか、それぞれの時計はランチボックスサイズの紫の缶に入っている。蓋を開けると、中には初めて社交界にデビューする女性のように優しくサテンの枕の上に置かれた時計が入っている。初期設定ではスティール製のブレスレットが装着されているが、専用のナイロンストラップも付属している。私は、箱を開けたらすぐにブレスレットを外すことをおすすめする。3つのモデルとも、ストラップの方が見た目が良く、ラグが長く見える。ブレスレットではラグが短めで、獅子っ鼻で無愛想な大学のクラブの警備員のように見えるのだ。

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 ミントグリーンのストラップが素晴らしくミスマッチに見えるRef.SRPG49は、市松模様のベゼルが特徴だ。これは、HODINKEEで紹介されたのを見て2010年にウィンドが初めて購入したヴィンテージウォッチ、セイコーの“ラリーダイバー”にちなんだものだ。オリジナルモデルはスキューバダイビングとモータースポーツの両方を連想させる珍しい特徴をもっていたが、今回のコラボレーションではさらにボートが加わり、とんでもないトライアスロンが実現した。私はその目に余る不純さが気に入っている。プレップとは、多くの意味で、ある種の人々のためにある種の伝統を守ることだ。ローイングブレザーズはそういった尊大さを笑い飛ばし、クールなことなら何でもありにするのだ。

 2つめの時計、Ref.SRPG51のベゼルには、RB(ローイングブレザー)のウォレットやラップトップケースにも採用されている、王立砲兵連隊のようなスタイルのジグザグラインが施されている。時計マニアはこれを見てアラン・シルベスタインを連想するかもしれないが、それは決して悪いものではない。NATOストラップにはマルチカラーのクロケットストライプが採用されているが、これはローイングブレザーにとってのバーバリーのチェック柄のようなものだ。他の2つのモデルよりも濃くRBのDNAを感じさせるため、ブランドの熱烈なファンはこのモデルを欲しがるだろう。率直に言って、これがまだ存在していなかったのが不思議なくらいだ。

Rowing Blazers Seiko watch

 SRPG49とSRPG51は、共に500本の限定モデルだ。そして3つめのモデルは、4色のカラーバリエーションをもつSRPG53だ。これはセイコー 5スポーツのラインナップに加わり、無期限に生産されることになっている。このトリオが発売される今日に予定がある人は、この時計を選ぶことになるだろう。これも良いモデルだ。広く販売されているからといって気休めのものではない。洋服とのコーディネートが一番しやすいのではこれだろう。大げさになりすぎることなくハーレクインのような美しさをもっている。

 3つのモデルのケースバックには、コーデュロイのボールキャップに描かれていた、ブランドの陽気なデリー・ボーンズスケルトンのイメージが描かれている。何に座っているのかは分からないが、座り心地が悪そうだ。私は、Cal.4R36の振動するテンプと格闘するくらいなら、クローズドケースバックの上で安らかに眠っている方がいいと思う。彼を完全に排除することもできるが、それではティモシー・シャラメを怒らせてしまうだろう。

Male model wearing Rowing Blazers Seiko

 これら3種の時計のケースは42.5mmで、私の理想より6.5mmも大きいが、たとえホイールキャップのように大きくても、私は惹かれただろう。特にその中の一つに。「どれが一番好きかは、人それぞれ直感的に分かるものです」とウィンドは言っていたが、私にとってはまさにその通りだった。一番のお気に入りは、市松模様にミントカラーのNATOストラップモデルだ。ローイングブレイザーズの意外性と奔放さ、そしてセイコーの耐久性と手ごろな価格、これら全てがハンサムなパッケージに集約されていると思っている。発売される瞬間に、私も自腹を切って購入するつもりだ。では、並んでお会いしよう。

セイコー×ローイングブレイザーズ コラボレーションモデル。サイズは幅42.5mm、厚さ13.4mm。ブラックダイヤルに、SS製のケースとブレスレット、そしてナイロン製ストラップが付属する。100m防水、約41時間パワーリザーブ、手巻きつきの自動巻きムーブメント、Cal.4R36を搭載。HODINKEEのセイコーコレクションはこちらから。