ここ数カ月のあいだ、僕はもうひとつの価値の高いトラベルウォッチがまもなく市場に出ることをほのめかしてきた。ただ先週の時点で、ブローバはヴィンテージ風のオーシャノグラファーラインの最新進化形、オーシャノグラファー GMTを発表したので、もう待つ必要はない。新作では、ブランドで親しまれている“デビルダイバー”のフォーマットを新たな高み(この場合は巡航高度)へと引き上げた。このダイバーズベゼル付きのフライヤー GMTには3つのバージョンがあり、そのうちのひとつは全面夜光ダイヤルのオプションで提供している。なお価格はすべて1500ドル(日本円で約22万3000円)を大きく下回る(編集注記:日本では未発売)。
同僚のエリン・ウィルボーンが先週、これらの新モデルを素晴らしい記事で紹介してくれたので、スペックについて長々と考える必要はない。オーシャノグラファー GMTの3つのバージョンはすべて、厚さ14.6mm、ラグからラグまでが45.2mmの、41 mm径スティールケースを備えている。ほかのスペックはラグ幅は20mm、防水性は666フィート(約200m)、ドーム型サファイアクリスタル、SS製ソリッドバック(エングレービングも可能)で、なかに収められているのはMiyota 9075ムーブメントだ。これはローカルジャンピングトラベル機能を備えたものである。
スペックはさておき、3つのバージョンの全体的な仕上げに注目しよう。24時間ベゼルを備えたSS製“ペプシ”GMT、24時間ベゼルのブラック/ブラウンのローズゴールド調“ルートビア”モデル、そして最後に、IP処理されたダークメタルケースに夜光ダイヤル&夜光ダイバーズベゼルを備えた“ダイバーズGMT”の3つだ。
3バージョンの機能はすべて同じだ。9075は小さな“GMT”針を介して第2時間帯を表示し、トラベルモデルの24時間ベゼルまたは夜光ダイヤルダイバーズベゼルの24時間マーカーと連動する。トラベルモデルはどちらもフルSSブレスレット、ダイバーズGMTはラバーストラップをセット。ブレスレットとラバーにはクイックチェンジスプリングバーが備わっている。
知らない人のためにお伝えすると、Miyota 9075はハック機能、手巻き機能、日付表示を備えた2万8800振動/時の自動巻きムーブメントである。そしてMiyotaは、シチズンブランドの一員だ。新しいタイムゾーンに到着してからリューズを使うと、ほかのタイムゾーンに影響を与えることなく、メインの時針を新タイムゾーンにジャンプセットすることができる完全な“フライヤー GMT”機能を備えている。午前0時を超えると、日付が前後に修正されるのだ。
Miyotaは日差-10秒から+30秒の範囲の精度を誇る。精度にこだわる人向けに、こぼれ話的なワンポイントデータをお伝えすると、このブローバを自身のタイミングマシンに載せてテストしたところ、6つの姿勢差で平均して+12秒/日という結果が出た。
興味のある人(僕もそうだった)のために説明すると、24時間ベゼルを備えたふたつのモデルには、24クリックする両方向回転ベゼルの細工を施しており、対してダイバーズGMTモデルは60クリックの逆回転防止機能を採用するなど、ブローバはベゼルに関して素晴らしい仕事をした。フォーマットに関係なく、フル夜光のマーキングを装備したベゼルの感触もクールだ。24時間ベゼルを備えたモデルは、非常に静かなクリック音を伴う重いアクションだが、ダイバーズウォッチはかすかなクリック感があり、この価格帯では予想以上にいい感じの素敵なアクションを備えていた(特にセイコー SPB381のような感触があまりよくない時計と比較したら)。
手首に巻くと、オーシャノグラファー GMTがそのサイズ感に比べてどのようにしっくりくるか驚くかもしれないが、これはクッション型ケースのおかげである。41mmのサイズと14.6mmという無視できない厚さでありながら、オーシャノグラファーの過去のモデルやドクサ、ゾディアックのようなブランドの似たケース形状と同様、非常に短いラグからラグまでの長さでうまくバランスを取っているのだ。
3つのバージョンはいずれも僕が予想していたよりも小振りにつけられた。またスタックケース(クリスタルがベゼル構造の上にあり、さらにそのベゼルがケースの上にある)デザインは、オーシャノグラファー GMTの側面が平たくて長く感じないようにするのに役立つ。これも非常にドクサに似ているが、サブ 300とオーシャノグラファー(あるいはその前のシュノーケル)が1960年代末という同じ時代のものであることを考えれば、驚くべきことではない。
ケースは大部分がポリッシュ仕上げというシンプルなもので、その仕上げはブレスレット外側のリンクエレメントにも反映されている。またブレスレットはしっかりとしたクイックチェンジエンドリンク、割りピン構造 (安価な工具で簡単にサイズ変更ができる)、3点ピンセットのマイクロアジャストと折りたたみ式ウェットスーツスタイルエクステンションの両方を備えた、プッシュボタン式セーフティクラスプ装備など、この価格レンジにしてはかなりいい機能だ。ゴールドトーンまたはSS製のブレスレットは、クラスプの部分で20mmから18mmへとテーパーされ、がっしりとした手首でもつけられるようリンクがたくさん付いている。僕の7インチ(約17.8cm)の手首に合うよう、これらの貸与品から7つのリンクを取った。サイズ調整後の重量は、SSが144g、ラバーが104gだった。1度サイズを調整するとブレスレットは薄く感じられるが、よくできており、時計の外観と雰囲気によく合っていた。
僕はラバーストラップに関しては非常にうるさいが、ブローバのこのオプションは問題ないと思う。ソフトで快適である一方、取り付け部分はかなり頑丈だった。しかし、カーボン調のインプリントデザインにはなじめず、ヴィンテージスタイルのトロピックストラップ(60年代の雰囲気を醸し出したもの)か、シンプルなNATOのどちらかに、夜光ダイヤルのダイバーズを装着してみたいと思った(ただしケースの仕上げをNATOのシステムに合わせるのが難しいことは認める)。
最後に、オーシャノグラファーの名刺代わりと言える、特徴的で愛らしい3次元の円柱パーツでできたインデックスを持つ、ユニークなダイヤルデザインを紹介しよう。このモデルについて言及するとき、このディテールが真っ先に思いつく。オーシャノグラファーのヴィンテージインスピレーションの一部であると同時に、特徴的なデザイン要素でもあるのだ。
これらのマーカーに合わせて、オーシャノグラファー GMTの3つのバージョンはすべて、特大でややずんぐりとした時・分針、小さ目なGMT針、シンプルな秒針、そして風防の下側に取り付けられた内部のサイクロプスレンズを介して拡大された3時位置の日付(よりヴィンテージな魅力)を備えている。日付はホワイト背景に黒い文字、絞りはメタルで囲まれている。最後にダイヤルテキストはやりすぎず、“GMT”の色と“SNORKEL”用の特別なフォントを使用した楽しいフォント要素を取り入れている。ちなみにブローバのロゴは12時位置下、“OCEOGRAPHER”とともに配される。これは全時計のなかで僕が最も好きな名前のひとつである。
アプライドメタルされたブランドロゴに関しては、過去のシュノーケルおよび復刻オーシャノグラファーの系譜と同様に、ブローバの文字と文字のあいだに小さな連結要素を残している。時計の写真を撮り、その写真の編集作業を始める前はほとんど気がつかなかった。画像では実際に見るよりもずっと目立っている。
3つのバージョンのなかだと、僕が夜光ダイヤルのダイバーズGMTを好むのは当然だろう。なにせ中身は5歳なので、永遠に夜光ダイヤルを愛しているのだ。とはいえ、24時間GMTのふたつのバージョンも楽しんでいたのには驚いた。特にSSは温かみのあるブルートーン文字盤が、“ルートビア”カラーはケースとブレスレットのフルゴールド調の効果により、そう感じた。
3本それぞれに魅力があり、サテン仕上げのSSケースを持つ夜光ダイヤルのバージョンも見てみたいと思っているが、それよりもヴィンテージデビルダイバーズの外観を捉えたオレンジダイヤルバージョンの登場を最も強く祈っている。
施された夜光は、3本すべて見栄えがよく、なかでも明らかな目立ちたがり屋は夜光ダイヤルのバリエーションだ。ただ時・分針が濃いグレーで囲まれているおかげで、優れた視認性を確保している。また夜光ベゼルの採用、ダイバーズGMTの0-15目盛りの夜光、またインデックスが文字盤の夜光と24時間表示とどのように連動しているかなど、あらゆる面でポイントが高い。
さて、よくできた見栄えのいい、楽しいフライヤーGMTのトリオだが、値段はいくらだろうか? 価格はダイバーズが1295ドル(日本円で約19万2000円)で、SS製“ペプシ”モデルは1350ドル(日本円で約20万円)、そして最も高いゴールドトーンは1395ドル(日本円で約20万7000円)だ。この3つは現在、HODINKEE Shop限定で販売中となっている。
僕が最近レビューしたロンジン スピリット Zulu Time 39mmで伝えた、GMT購入ガイドを近日中に紹介する予定だが、僕のGMTの思索に従っている人にとっては、このGMTの価値基準はかなり明確だろう。ずばり有名ブランドが手がけた1500ドル以下のフライヤーGMTだ。まあ、9075を搭載したなかで最も安価なものというわけではない(700ドル以下の腕時計にも搭載されているからね)。とはいえオーシャノグラファー GMTは、旅行者に適した魅力を提供すると同時に、悪魔のようなダイビングをするヴィンテージシュノーケルの琴線にも触れている。
この価格帯での明らかな競合は、もうひとつのHODINKEE Shop限定モデルである、ミドー オーシャンスター GMT LE for Hodinkeeだろう。価格も1400ドル(日本円で約20万8000円)弱で、ムーブメント(この場合はETA製)はややスペックのいいフライヤー製かつ、直径が40.5mmとブローバより少し小さい。とはいえ、24時間のトラベルウォッチとしてのみ提供され、ダイバーズベゼルのオプションはない。
より細かいレベルで比較すると、ブローバのほうがベゼルアクションとグリップが優れており、優れた発光、より伝統的なブレスレットのオプションで提供される(ミドーにはスチールメッシュ、レザー、ナイロンストラップが付属しており、どれも非常に素晴らしい)。僕はミドーのダイヤルデザインのほうが好きで、細かいディテールを見ると、やや洗練されたデザインを持っている印象だ。とはいえブローバにはキラーインデックスがある。
トラベルウォッチに夢中になるときが来るなんて。フライヤー機能がより低い価格帯で浸透し、ETAとMiyotaの両社がついに、コーラー仕様の2893に代わる次世代技術を着手し始めることを、長いあいだ待ち望んでいた。
ロリエ ヒュドラ SIII、セイコー プロスペックスとSCBCのGMT、ミドー、そして今回のブローバ、最近いくつか発表されたシチズン、そしてロンジンの新しい複数のオプションまで、確固とした新しいGMTオプションがさまざまなブランドから、隔週で発表されているように感じられる。
本稿を締めくくるとしたら、ブローバはすでに完成されたダイバーズウォッチのデザインに、トラベルコンプリケーションを加えるという素晴らしい仕事をした。それと同時に、スポーティでカジュアル、かつ個性的で、すぐに旅行へ出かけられる、60年代後半のスタイルを少しでも求める人たちのために新しい選択肢を生み出したのだ。
以下からコメントを開いて、3つのバージョンのうちどれがいちばん好きか、また別のタイムゾーンでフルテストを受けてみたい場所を教えて欲しい。
HODINKEEはブローバの正規販売店です。詳しくはHODINKEE Shopまたはブローバ公式ウェブサイトをご覧ください(編集注記:日本では未発売)。
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