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我々が知っていること
気軽に使えることが売りのダイバーズウォッチ、アクイスがあるにもかかわらず、オリスのシグネチャーモデルはこれまでも、そしておそらくこれからもビッグクラウン ポインターデイトであることに変わりはないだろう。クラシックなパイロットウォッチは1938年以来絶え間なく生産されているとオリスは言うが、商業的な現実として、この独立系企業がCal.400シリーズプロジェクトの受け皿を探していたときにお呼びがかかったのは新しいアクイスだった。要するに、若いモデルのほうがお金になると判断したのだ。
ビッグクラウン ポインターデイトが初めてCal.400シリーズを手にしたのはこの夏のことだ。グレーを基調としたヘルシュタインエディション 2021はオリス独自の自動巻きCal.403を搭載していたが、ブランドとしては少数の250本限定だったため、当時はこれがメインイベントの予告編に過ぎないと考えられていた。
そして今日のドバイ・ウォッチ・ウィークでは同コレクションとしてビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403が発表され、それが証明された。38mmのステンレススティール製で、ディープブルーダイヤル、ブラックレザーストラップ、そしてわかりやすいポインターデイト表示を備えている。価格は42万9000円(税込)で、すでに発売中だ。
まずは中身から見てみよう。Cal.403は、オリス Cal.400シリーズにおける3つめのムーブメントだ。1年前、我々は日付表示を備えた3針自動巻きのCal.400を手に入れた。その後、スモールセコンドで日付表示なしのCal.401が登場した。Cal.402はまだ開発中のため、どんな機能を提供するかわからないが、スモールセコンドとポインターデイト機能を搭載したCal.403が中心的な位置を占めることになる。
これまでに発表された3つのモデルはすべて5日間のパワーリザーブと確かな耐磁性能(どのように“確か”なのかについてはジャックの解説に任せる)を持ち、時計とムーブメントは10年保証、オーバーホール推奨間隔も10年だ。オリスはムーブメントのクロノメーター認定を受けていないが、Cal.400は日差-3〜+5秒の精度を備え、2250ガウスの磁場にさらされても1日10秒以下の誤差しか生じないと見なされている。4000ドル以下の時計のなかでは、かなり魅力的な選択肢だと思う。
正面から見ると、ビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403は80年の歴史に続く製品の次世代モデルであることが一目瞭然だが、コレクションピースの基本的な形状には違いがある。最も直接的な違いはポリッシュ仕上げのベゼルだ。ヘルシュタイン エディション 2021が示した方向性を受け継ぎ、ビッグクラウンおなじみのフルーテッドベゼルを廃止したのだ。オリスは1938年のオリジナルモデルのベゼルがフラットであったことを強調している。
ヘルシュタインエディション 2021から引き継がれているのは38mmのSS製ケース(ムーブメントの直径は30mmで、これより小さいサイズのケースにCal.400シリーズのムーブメントを搭載するのは不可能)、ストレート形状の針、数字に使用されているやや重めのインダストリアルな書体、他のコレクションでは三日月型になっているレッドアロー形状のセンターポインターデイト針などだ。また、ダイヤル中心部に5つの単語しかプリントされていないところはシンプル好きには嬉しいポイントだろう。そして大きなシースルーバック(オリスでは通常ミネラルクリスタルだが、サファイアクリスタルにアップグレードされている)とバックル付きのシンプルなブラックレザーストラップを備えている。
我々が思うこと
これは待望のモデルだ。間違いなくオリスは自社製ムーブメント(オリスによると構想と設計は自社で行い、製造はサードパーティのネットワークで行っている)を搭載したシグネチャーウォッチのバージョンを紹介したくてうずうずしていたに違いない。オリスによれば、ファンの多くがこの時計はいつ登場するのかを知りたがっていたと言う。そして今、その答えが出たのだ。
そうでなければ、これまでのCal.400シリーズと同様、2つの大きな疑問点があるように思う。一つ目は初期のアクイスデイト キャリバー400で一部のオーナーが経験した、時間を正確に設定できないという問題だ。オリスはこの問題を修正したと言うが、修正版が見られるのは来年になるとのことで、今のところは些細な問題ではあるものの、この問題は続く可能性がある。
次に価格だ。Cal.400シリーズの価格はオリスの標準的モデルの2倍から3倍になる。標準的モデルには通常、Cal.400よりも劣るセリタ製の自動巻きが搭載されており、そのほとんどが38時間のパワーリザーブで、Cal.400に近しい性能を持つものはほとんどない。
それでも高い価格を正当化できるか、そしてパワーアップしたものと平凡なものが同じコレクションのなかで共存できるのかと多くの人が疑問を投げかけた。後者はもっともな疑問であり、例えばブライトリングは混乱する消費者にほぼ同じ時計の2つのバージョンを異なる価格で売ろうとするのではなく、低価格のサードパーティ製ムーブメントのカテゴリーを徐々に廃止していくことでこの疑問に答えている。
しかし、オリスの場合は低価格帯モデルに多くのユーザーを抱えていることや、レギュラーモデルを見切るために必要な価格帯へのユーザーの移行を考えると、すぐには実現しないだろう。
これまでCal.400シリーズを搭載してきたアクイス、カール・ブラシア、そしてヘルシュタインエディション 2021と同様、ビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403もオリスの商売の手本となるような理想的なモデルであり続けるだろう。
長期的に見ると、オリスはその背景にあることを隠したいのではないかと疑問に思っている。輸出の落ち込みにより、低価格帯のスイス製機械式時計はしばらく苦境に立たされおり、オリスはその影響を受けていないように見えるが、実際にはその逆で、そこでは何か破滅的なシナリオを想定しているに違いない。
そのときが来ようと来まいと、42万9000円(税込)という価格とその重厚な仕様を考えるとこの時計は、オリスの時計が常にそうであるように非常に優れたコストパフォーマンスを発揮している。先に述べた価値の問題は市場全体というよりもオリスの幅広いコレクションとの関係においての話である。チューダーは最適な比較対象で、デザインや製造品質などの個人的な好みを除けば、2つの時計はほぼ拮抗している。
マクロ的視点に立つと、ビッグクラウンポインターデイト キャリバー403はオリスというブランドの勢いを示すもう一つの指標だ。Cal.403は2014年の手巻きCal.110までさかのぼると、8年ぶり、9つ目のキャリバー(2つのベース構造にまたがって)となる。そのデザインはすべてにおいて刷新されている。そしてオリスは独創的な機械式ムーブメントを搭載したクールな時計を依然としてリーズナブルな価格で製造・販売できることを証明し続けている。価格が暴走している市場において、これは非常に心強いことであり、賢明な時計ユーザーの期待に応えている。
より広い視点で言えば、ロレックス、オーデマ ピゲ、ウブロなどが主役となり、業界の有力者たちが参加するようになったドバイ・ウォッチ・ウィークで発表を行うことによって、オリスは独立系ブランドとしての立場が強化されたと言えるだろう。多くの人がオリスはバーゼルワールドのヘッドライナーになると予想していたが、ウォッチズ&ワンダーズに参加することでその賢明さを示し、この決定はかつて業界を代表するイベントであったバーゼルワールドが今月発表した悲惨なニュースの後では、かつてないほど明快なものとなっている。
しかしビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403の最も重要な点は、6年前、あるいは7年前ならオリスらしくない極めて強い印象を与えるモデルだったということだろうが、今やそうではない当たり前の存在であるということだ。
基本情報
ブランド: オリス(Oris)
モデル名: ビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403
直径: 38mm
厚さ: 12mm
ラグからラグまで: 45mm
ケース素材: スティール
文字盤色:ブルー
インデックス: プリント
夜光: あり。針とインデックスにスーパールミノバ
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ブラックレザーストラップ
ムーヴメント情報
キャリバー: オリス キャリバー 403
機能: センターに時・分表示、ポインターデイト表示、6時位置にスモールセコンド
直径: 30mm
パワーリザーブ: 120時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24
価格 & 発売時期
価格: 42万9000円(税込)
発売時期: 発売中
ロビン・スウィッシンバンク(Robin Swithinbank)氏は独立系ジャーナリストで、HODINKEEで「3つのスウォッチで綴る私の人生物語」やさまざまな記事を執筆している。『ニューヨーク・タイムズ・インターナショナル』、『フィナンシャル・タイムズ』、『GQ』、『Robb Report』などにも定期的に寄稿。また、彼はハロッズのコントリビューティング・ウォッチエディターでもあります。
Photos by James Stacey.
詳細は、オリス公式サイトへ。
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