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Hands-On セイコー 5スポーツのフィールドシリーズに3本のCaller GMTが加わった

40mmを切るサイズに重厚感のあるブレスを持ち、幅広いスタイルにマッチするGMTウォッチが6万円以下で手に入るなんて!

セイコー 5スポーツからSKXスタイルのGMTウォッチが発表された! と、ダニー・ミルトンが熱のこもった紹介記事を書いていたのが2022年6月のこと。その情熱の大部分はクラシックなSKXを踏襲したデザインやジュビリーブレス、オレンジのカラーダイヤルに向けられていたが、僕個人としては10万円を大きく切るGMTウォッチがセイコーから出た、ということ自体が大きなニュースだった。それまでGMTというものを(価格の面も含め)遠く感じていた僕としては、信頼のある日本ブランドによるエントリー中のエントリーモデルの存在はとても魅力的に感じたのだ。特にGMTウォッチに熱を上げていた2023年は個人的にプッシュしていて、年末のギフト記事でも取り上げた。

 そのギフト記事を書いているさなか、2024年早々にセイコー 5スポーツから新たなGMTウォッチが登場するというリリースが舞い込んできた。しかも40mmを切る小径で、6万円を切るCaller GMTなのだという。セイコー 5スポーツ SKX Sports Style GMT モデルの42.5mm径を少々大ぶりに感じていたところもあったので、この時計が手首の上でどのように収まるのかとても気になった。そのため、年明けからフィールド スポーツ スタイル2型とフィールド ストリート スタイル1型の全3型を手元にそろえ、その実力を探ってみることにしたのだ。

 

 1月12日に発売となったセイコー 5スポーツ フィールド GMTは、既存のフィールド スポーツ、フィールド ストリート シリーズに倣ったデザインをとっている。これらのシリーズは視認性のよいアラビアインデックスに夜光を塗布したペンシル針、ソリッドベゼルを共通ディテールとして備えており、それらを直径39.4mmで厚さ13mm強のSSケースにのせている。ダイヤルは反射を抑えたマットな質感のものが基本で、総じて実用的なフィールドウォッチらしいパッケージにまとめられている。

 SSブレスモデルが2型、レザーのNATOストラップモデルが1型の計3型で展開されるセイコー5 スポーツ フィールド GMTのデザインも、ケース径を含めて現在ラインナップされているフィールドのモデル群から大きく外れてはいない。目立つ点でいうと、ソリッドベゼルは固定式の24時間表示ベゼルに変更され、新たに朱色のGMT針が取り付けられた。個人的には、SSの質感を生かした点を高く評価したい。ダイヤルがブラックにせよホワイトにせよ、このベゼルが顔全体を引き締める効果を担っており、実寸よりもひと回りほど小ぶりに見える。また、6時の“Automatic”の文字の下に針と同じ色味で“GMT”の3文字が書き加えられ、デイデイト表示は立体的にふち取られたデイトのみの小窓に変更された。デイトのふち取りとデイトの色味(ダイヤル、インデックスと同色を望む声が多い)は議論を呼ぶ点かもしれないが、今回チェックしているのは税込6万円以下で購入できる実用的なツールウォッチだ。読み取りやすいのなら、それに越したことはない。

 なお、3つのモデルはそれぞれ、ダイヤルの要素に少しずつ違いを設けている。たとえばSBSC011はブラックダイヤルにホワイトのインデックス、SBSC009はホワイトダイヤルにシルバーの鏡面仕上げを施したインデックスという具合だ。唯一レザーNATOのSBSC013は、ブラックダイヤルに夜光を思わせるグリーンのアラビアインデックスを採用している。

SBSC011

SBSC009

SBSC013

 最初に手に持ったとき、直感的に素晴らしいと感じたのは5連ブレス(外側のコマと中ゴマが手首側で連結しているため、正確には擬似5連)の完成度だ。ひとつひとつサテン仕上げが施された無垢のSSブレスはずっしりと重たく、それでいて手首にまとわりつくようになめらかに可動する。セイコー時計110周年モデルとして発表されたSBSA241と同じものだと思うが、ひとコマずつのエッジがしっかり立っていて非常にソリッドな印象だ。サイズを調整して手首に巻いてみるとヘッドとの重さのバランスもよく、全体でひとつのブレスレットのような一体感を覚えた。

 ラグトゥラグは公式の数字で47.9mm。腕に乗せてみると、腕周り17cmの僕でもラグが手首の幅から飛び出ない程よいサイズ感だ。上記のとおりブレスの着用感も優れているので、手首から浮いた感じもない。今回3モデルとも試してみたが、個人的にはブラックダイヤル×SSブレスのSBSC011が一番気に入った。実機を目にするまでは朱色のGMT針が際立つ(そしてちょっとメジャーなGMTウォッチを思わせる)SBSC009に注目していたのだが、マットなブラックダイヤルの控えめさとヘアラインが施されたSSベゼルのコントラストはプレス画像よりもバランスよく見えた。厚みのあるカーブガラスの存在感も、ブラックダイヤルのほうが際立っている。SBSC009は光の下では鏡面仕上げのインデックスとホワイトダイヤルがなじんで見えてしまい、視認性に欠けるのも少々気になった。

 今回はトラッドなコートスタイルの手元にスポーティなハズしとしてつけてみたが、レザージャケットやミリタリージャケットの腕元に合わせても相乗効果的により男らしく装えるだろうと感じた。サイズが小ぶりで顔立ちがシンプルなため、主張の強いアウターに合わせても互いに喧嘩することはない。同じくブラックダイヤルのSBSC013も同様だ。こちらはケースも含めてオールブラックであるため、グリーンのアラビアインデックスがアクセントとしてより強調され、強いミリタリー感を放つ。

 対して、ホワイトダイヤルのSBSC009は非常にクリーンな印象だ。インデックスもシルバーの鏡面仕上げになっているため、どこか品のある空気をまとっている。デニムジャケットに白Tを合わせるようにこの時計を合わせてみたいと思ったのは、原宿の古着屋であるベルベルジンの名物ディレクター、藤原 裕さんのエクスプローラー IIが頭をよぎったからかもしれない(藤原さんのものはGMT針を黒に変えているけれど)。ただ、針の色とデニムのステッチとの相性は実際よさそうだ。手元がパッと華やいで見えるだろう。

 サイズもディテールもブレスもいい。テイストの異なる3種のダイヤル展開で、選ぶ楽しさもある。このように、セイコー 5スポーツ フィールド GMTへの満足感は非常に高い。ただ唯一、個人的に気になったのは既存のセイコー 5スポーツにも採用されているダブルロック式のバックルだ。今作においてはブレスの質感が高まったこともあり、相対的にバックルのカチャカチャと軽い感触や丸みを帯びた造形がどうしても気になってしまった。また、全体として小ぶりでスマートなGMTウォッチにまとまっているため、ボリュームが出るダブルロック式ではなくシングルロック式や両開き式でもマッチしそうだとは思う。ただ、実用時計としての堅牢性を考慮するならばダブルロック式に軍配が上がるのもまた事実だ。そこは、セイコー 5スポーツに何を求めるかで判断してもらいたい。

 搭載されているのは2022年のセイコー 5スポーツ SKX Sports Style GMT モデルと同じCal.4R34だ。パワーリザーブは41時間で、2万1600振動/時で駆動。リューズを一段階引いて奥に送ればGMT針が1時間進み、手前に回せば日付が変わるCaller GMTムーブメントである。ちなみに、今回1週間ほどともにしてみて実感したが、日本にいて海外の仕事仲間にメールを送るときに使うのならば(当たり前だが)Caller(発信者)GMTのほうが圧倒的に便利だ。仕事柄毎日同じ時計をつけるような生活をしていないため、時刻合わせのたびにホーム針を24時間分回してデイトを調整するのはいささか億劫でもある(そして、性格的に日付まで揃っていないと気が済まない)。Flyer GMTこそが真のGMTだという意見もわかるが、日本にいるあいだぐらい値段的にも気軽なCaller GMTをつけていてもいいじゃないか、と今回改めて思ったりした。

 また、径39.4mmというサイズ感とピッチの細かい無垢ブレスは、とても身につけやすく毎朝手が伸びてしまう気軽さがあった。フィールドシリーズのソリッドベゼルを24時間表示のものに置き換えて、なお既存のサイズを維持した今作の判断は正解だったと思う。また、セイコー プロスペックス SBEJ015やSBEJ009(やSBEJ011)など、セイコーが20万円前後でCal.6R系のCaller GMTモデルをリリースする傍らで、その3分の1の価格でその技術の一端に触れることができるというのは喜ばしいことだ。デイリーに使用できる機械式GMTウォッチの有力な選択肢として、大いに歓迎したい。

 そういえば昨年、セイコー 5スポーツのSKX スポーツスタイルから38mmの小径モデルがリリースされていた。個人的にはこれもCaller GMTに仕上げてもらいたいと思うのだが……、どうだろう?(もちろん、ジュビリーブレスで!)

セイコー 5スポーツ フィールド  スポーツ スタイル GMTモデル SBSC009(ホワイトダイヤル)、SBSC011(ブラックダイヤル)、フィールド ストリート スタイル GMTモデル SBSC013(オールブラック)。直径39.4mm×厚さ13.6mm、ラグからラグまでは47.9mm。ステンレススティール製ケース、10気圧防水。SBSC009とSBSC011はステンレススティール製ブレスレットに三つ折りダブルロックバックル、SBSC013はレザーのNATOストラップ。風防は厚めのカーブハードレックス。ムーブメントにはCal.4R34を搭載、パワーリザーブ41時間、2万1600振動/時、時・分・秒表示にデイト表示、GMT針単独調整機能、24石。価格: 税込5万9400円(SBSC009、SBSC011)、税込5万5000円(SNSC013)。

セイコー 5スポーツ フィールド GMTの詳細は、セイコーのWebサイトからご確認ください。