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ジェラルド・ジェンタのブランドが帰ってくる。どこに行ってしまっていたのか、そう考えるのも無理はない。ミシェル・ナバス(Michel Navas)氏とエンリコ・バルバジーニ(Enrico Barbasini)氏によるハイコンセプトムーブメント製造会社、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが、少量生産のハイコンプリケーションを中心に、ジェラルド・ジェンタブランドを復活させるとした。ありがたいことに未亡人のイヴリン・ジェンタ氏のもと、実現しなかった数百のデザインを含む、夫のアーカイブへのアクセスを全面的に許可したことで再始動が実現した。
80年代から90年代にかけて、ナバス氏とバルバジーニ氏はジェンタに協力し、彼の最も複雑な時計のいくつかを開発した。ジェラルド・ジェンタブランドは2000年からブルガリの所有となり、そして2011年にLVMHに買収されている。ジェラルド・ジェンタブランドとしては昨年12月にミッキーマウスウォッチを発売するなど、不定期で時計を発表してきたのだが、この度ハイコンプリケーションに特化したブランドとして生まれ変わる。
ここ数年、どこでも聴こえてくるエド・シーランのシングルよりも彼のデザインは遍在しているため、皆さんもよくご存じのことだろう。彼が最初にブレイクを果たしたのは、ユニバーサル・ジュネーブのポールルーターである。ポールルーター・デイトは台形デザインの日付窓が特徴であり、彼のキャリアを特徴づける、幾何学的なきらめきさを形やデザインに絶妙に施しているのがとても気に入っている。次に登場したのが、1959年に発売されたオメガ コンステレーションコレクションだ。
ジェラルド・ジェンタ。
彼を定義付けるデザイン、つまりここ数年の時計業界を席巻している高級スポーツウォッチは、1970年代に生まれたものだ。まず1972年に、オーデマ ピゲのロイヤル オークが誕生(なんと彼はひと晩でこの時計をデザインしている)。そしてその後、パテック フィリップのノーチラスが登場した。さらにIWCのインヂュニア、ブルガリ・ブルガリ、カルティエ「パシャ」などがある。
しかし彼は常に独立性を大切にしている真のデザイナーでもあったため、1969年に自身の名を冠した会社を設立した。時計職人のピエール・ミッシェル・ゴレイ(Pierre-Michel Golay)とともに、クォーツショック後のハイコンプリケーションの製造をリードしてきた。それがジェンタというブランドなのだ。八角形やレトログラードのようなデザインは個性を放ちつつも革新的で、近年コレクターから注目を集めている。ブランドが手がけた最も有名な複雑時計は、5年の開発期間を経て1994年に発表されたグラン・ソヌリだろう。
1980年代には、ウォルト・ディズニー・カンパニーからキャラクターウォッチ(あのミッキーマウスウォッチのように)の製造ライセンスを取得している。それからジェンタは無類のVIPクライアントを獲得し、華美で装飾的で、そして突飛な依頼をこなすようになっていく。ジェラルド・ジェンタ・ヘリテージ・アソシエーションが言っていたように、当時、究極の腕時計を手に入れるのであれば、ジェンタのグラン・ソヌリが当てはまるのだった。彼が手がけた代表的なデザインの時計の文字盤には、ほかのブランドの名前が書かれているかもしれないが、ジェラルド・ジェンタのマークの下にあるこれらのデザインであれば、史上最も偉大な時計デザイナーである彼の心を自由に見ることができる。
1996年、アジアのリテーラーであるアワーグラスが、ジェラルド・ジェンタの株式の過半数を購入し、後に2000年にブルガリへ買収されることになる。この話はラ・ファブリク・デュ・タンサポートのもと最近復活を果たし、初のトゥールビヨン スースクリプションを発表したダニエル・ロートのストーリーと同じように聞こえることは間違いない。
これらはLVMHのCEOであるベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏の息子で24歳のジャン・アルノー(Jean Arnault)氏による取り組みだ。若き日のアルノー氏は2021年にルイ・ヴィトンの時計部門に入社するなど、彼自身が本物の時計好きであることがわかる。フィナンシャル・タイムズ紙は先週、アルノー氏とイヴリン・ジェンタ氏のインタビュー記事を掲載した。ジェンタ夫人に、ジェンタブランド復活の可能性を打診する彼の姿は、ジェンタのレガシーに対する彼の敬意を物語っているようだった。ジェンタ夫人もまた、亡き夫の遺志を継ぐことに注力しており、最近ではジェラルド・ジェンタ・ヘリテージ・アソシエーションを立ち上げている。
ジェラルド・ジェンタ レトログラード。Image: Courtesy of Rago
「ジェラルドを忘れてほしくなかった」と、彼女はフィナンシャル・タイムズ紙で語っている。「だけどノーチラスとロイヤル オークだけで記憶されることは望んでいません。彼はそれ以上の存在なんです」
今回復活を果たしたジェラルド・ジェンタが、今後も持続的な力を持つためには、リメイクや復刻(すでに十分な数の復刻モデルがある)だけでなく、それ以上のことをしなければならないだろう。そのためにはジェンタというデザイナーが持つ本来の精神を注ぎ込んで、まったく別の存在として際立たせる必要がある。チームリーダーはそれを理解しているようで、オマージュではなく、もしまだジェンタが生きていたら今頃つくっていたであろう時計をつくりたいと考えているようだ。ダニエル・ロートの戦略を参考にした場合、ジェンタのグラン・ソヌリを現代風にアレンジしたモデルが、ブランド復活後の最初の時計になるかもしれない。
ジェラルド・ジェンタによる新しい時計のさらなる詳細は今年中に発表され、さらに来年には最初の時計が発売される予定だ。もしダニエル・ロートが復活したときのような展開であれば(そのように思うが)、価格はゆうに8桁に達することだろう。
ジェラルド・ジェンタの再始動については、geraldgenta.comを定期的にチェックしてほしい。
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ジェラルド・ジェンタはLVMHグループの一員です。LVMHラグジュアリーベンチャーズはHODINKEEの少数株主ですが、編集の独立性は完全に保たれています。
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