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A Week On The Wrist チューダー ペラゴスを1週間徹底レビュー

HODINKEE史上最も問い合わせの多い時計、チタニウム製ダイバーズウォッチ“ペラゴス”の、チューダーにまつわる話、夢のような着け心地についてお届けする。

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※本記事は2013年2月に執筆された本国版の翻訳です。 

チューダーのペラゴスについて話そう。2012年3月のバーゼルワールドで初めて見て以来、長い間手に取ってみたいと時計だ待ちわびた時計だ。そして、私が住む国ではチューダーは販売されていないという事実にもかかわらず(2013年当時)、この時計を詳しくレビューする必要があると強く感じていた。ご存知のように、HODINKEE読者から、チューダーについてもっと知りたいという声が年々高まってきている。ペラゴスとヴィンテージからインスパイアされたブラックベイの両方に関して、数え切れないほどのメールやツイート、メッセージを受け取っているので、できる限り情報を集めてみた。難しい話は抜きにして、今回お届けするア・ウィーク・オン・ザ・リストの記事の主役は、チューダー ペラゴス だ。


まず、チューダーとは?

 現代のチューダーの話をする前に、20世紀のチューダーの話をしよう。 モントル・チューダーSAはロレックスが所有する企業である。それも創業からずっと。 しかし、それはロレックスとチューダーが同一企業であることを意味しているのではなく(法的にはそうかもしれないが)、ハンス・ウィルスドルフが1946年3月6日にチューダーを創業したとき、堅牢でユニークなだけでなく魅力的な製品を生み出すために、独自のアイデンティティをもつ必要があると考えていたそうだ。チューダーの初期モデルは、既にロレックスの防水ケースとして実績のあったオイスターという名称で販売されていた。 1952年、チューダーは“オイスタープリンス”ラインを発表し、これが何世代にもわたってコレクションの基礎となった。

私は数年前から、販売代理店がロレックスとは異なる価格帯で販売できるような時計、それもロレックスで定評のある信頼性を獲得するような時計を作りたいと考えていました。

– ハンス・ウィルスドルフ、ロレックス創設者

 ウィルスドルフはチューダー オイスタープリンスの立ち上げに伴い、販売プロモーションに注力し始め、当時のチューダーが「我々の(ロレックス)販売代理店がロレックスとは異なる価格帯で販売することができる」立ち位置ながら、チューダーには誇るべき世界初の技術、科学調査の歴史(1952年には30本のチューダーの時計がイギリス海軍と共に、グリーンランドへの科学調査に参加した)、そして熱心なコレクターが存在する。しかし、広告においてもチューダーがロレックスよりも親しみやすい存在であることが重要だった。ロレックスの広告で富裕層の紳士がゴルフをしたり馬に乗ったりしていたとしたら、チューダーの広告では道路や鉱山の現場で働く男性が描かれていた。

 鉱山の採掘現場で働く男性がチューダーを身に着けていると考えると、少し馬鹿げているように思えるが、1950年代から60年代には、全ての男性が機械式時計を身に着けていたため、チューダーは非常に現実的で、非常に手頃な選択肢であったことを忘れてはならない。

 では、当時のチューダーとロレックスの時計との違いは何だったのだろうか? チューダーのケースやブレスレットは、ロレックスのものと全く同じだった。 実際、唯一の違いは、特に初期において、ロレックス製ムーブメントではなくETA社のムーブメントを採用したことと主張できる。チューダーの時計は、1990年代までロレックス社の刻印入りケース、ブレスレット、リューズを備えていた。

初期チューダーのオイスタープリンス、アンティコルム提供。

 しかし、チューダーとロレックスは、モデル名も含め多くの共通点をもっていたため、チューダーがロレックスに代わる廉価モデルとみなされることは難しかった。彼らはロレックスのディーラーを通じて独占的に販売され、独自のアイデンティティをほとんどなかったのだ。

 2000年頃、ロレックスは米国からチューダーを撤退させることにした。彼らは販売店のネットワークから売れ残りの在庫を全て買い戻し、それ以来、米国市場にはチューダーの存在が完全に消滅した。

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知っておくべき旧モデル

 しかし、チューダーがロレックスと過去を共有していたからといって、その歴史の中には信じられないほどクールでコレクション性の高いモデルが存在しないわけではない-多くのチューダーの時計は独自の物語をもっているのだ。 以下のセレクションは、私が最も魅力的だと思うヴィンテージ・チューダーの中から個人的に選んだものだ。また、ヴィンテージ・ロレックスの世界とヴィンテージ・チューダーの世界が完全に切り離された、収集上のルールが存在することに注意しよう。例えば、ギルトダイヤルと尖ったリューズガードのチューダー サブ(マリーナー)は、それがないものよりも遥かに価値が高いとみなされる。ビッグクラウンのチューダーサブは、ビッグクラウンのロレックス サブ(マリーナー)ほどの高価格帯ではないが、希少価値の極めて高い時計として扱われるはずだ。トロピカルダイヤルのチューダーは、現時点でもかなり人気が高く、価格は跳ね上がるだろう。 ダイヤル種類の詳細については割愛するが、ヴィンテージ・チューダーの世界に足を踏み入れようとする読者は押さえておく必要があり、転職の面接の話のネタにチューダーの歴史的リファレンスが出たとしても、役立つ情報だ。

1. レンジャー。これはチューダー版エクスプローラーと考えることにしよう。 エクスプローラーIと同じ3、6、9、ダイヤルレイアウトを共有し、真っ当な価格のロレックス エクスプローラーRef.1016マットダイヤルの約半分の価格で、非常に多くの仕様を共有している。 もちろんスネークヘッドの針は、外観の印象を大きく変えてはいるが。

2. アドバイザー。私の好きなコンプリケーション(複雑機構)のひとつだ―1957年に発売されたアドバイザーは、ロレックスファミリー唯一のアラーム機能を備えた時計だった(現在でもそうである)。 アドバイザーは、ヘリテージアドバイザーとして2011年に復刻されたが、初代の個体と共通する仕様はわずかだ。

3. スノーフレーク サブマリーナー。時計オタクは、その心臓部に汎用ムーブメントを載せたチューダー サブマリーナーを貶すかもしれないが、デザインにみる目のある人は"すごい、この素晴らしい短針の先を見て!"と言うだろう。 1970年代から80年代初頭までの長い期間 、チューダー  サブマリーナーは、スノーフレーク型の針を搭載していた。この特徴的な外観は、スノーフレーク サブマリーナーをカルトクラシックの座に昇格させており、ほとんどのヴィンテージ・ロレックスの本格的なコレクターは、少なくとも1本のスノーフレークを所有している―なぜって、まあ、それは実にクールだからだ。また、このモデルは一般的なRef.5513/1680に比べて手頃だ。デイトなしのスノーフレークは、デイト付きに比べて極めてレアで、これらの価格は上昇し始めている。それでも、このモデルは超クールな存在であり、ペラゴス(本記事でレビュー対象モデル―この時点でそうは思えないかもしれないが、辿りつくことを約束しよう)とブラックベイの両モデルは共に、スノーフレーク針を採用している点が実にクールだ。

4.ミリタリー官給品のサブマリーナー全て。ほとんどのHODINKEE読者は、おそらくロレックスのミリサブ(ミリタリーサブ)に精通しているだろう。これらは、英国MOD(国防省)に発注され、ミルスペックを満たすために、極めて細かい点に至るまで(剣型の針、目盛りが周回するベゼル、固定バネ棒ラグ、サークルTダイヤルなど)変更が施された。市販されることがなかったことから、コレクター界に流通している個体は非常に貴重だ。また、1964年頃から1966年頃までのアメリカ海軍、アルゼンチン空軍、そして最も有名なのはフランス海軍、マリーンナショナーレ(MN)など、世界の名だたる軍組織でも採用されていた。MNは60年代後半から80年代初頭にかけてチューダー サブを大量購入していた。彼らはブレスレットなしで購入し、これらの時計は市販されている仕様と同じだった。兵士に支給されると、"MN"の後に年号が刻印される。ここではその一つを紹介した。MNは軍専属の時計メーカーを所有していたので、多くのダイヤル、針、ベゼルが交換され、"フランケンサブ"と呼ばれる多くの正規品が製造された。つまり、MNのサブは、判別する手立てが裏蓋のエングレービング以外にないため、偽物が多いことで悪名高い。

5.手巻きムーブメントを搭載した全クロノグラフ:1970年代に最もクールなクロノグラフを製造していたメーカーを私に尋ねれば、私は躊躇することなく、チューダーと答えるだろう(続いて、ホイヤーとロレックスを挙げる)。1970年代のチューダーの手巻きクロノグラフは、ひたすら素晴らしい外観を備えていた- 明るい色を自在に採用するのは、ロレックス(Ref.1655 "オレンジ針"に加護あれ)では決して見ることができないだろう。全モデルに2レジスターと6時位置のデイト表示のバルジュー社製Cal.7734ムーブメントを採用していた。Cal.72はCal.7734の改良版だったが、ロレックスとチューダーのムーブメントの違いは、クロノグラフでは他より少なかったかもしれず、当時のロレックスがデイトナに改良されたCal.72を採用していたことを忘れてはならない。最も魅力的なチューダー クロノグラフは、2010年に発表されたヘリテージ クロノグラフのインスピレーションとなったRef.7031“ホームベース”だ。 私はかつてチューダー Ref.7159 “モンテカルロ ”を所有していたが、それは私が手放して後悔している唯一の時計だ。


チューダーの復活、2010年頃

 そしてチューダー ヘリテージ クロノといえば…

 私はしばらくの間、時計ジャンルに特化して取材してきた。購買層としての私の経験や時計ジャーナリストとしてのキャリアの中で、2010年のチューダー ヘリテージ クロノを超えるほど、予想外に歓迎されたリリースはなかった―しかし、これはあくまで購買層としての観点だ。技術的な観点では、このモデルは特別な時計ではなかった―内部には、ETA 2892の上にデュボア・デプラ社製クロノグラフモジュールが配された。しかし、この時計をここまで偉大なものにしたのは、誰もが予想していなかったことである。率直に言うと、その時点で誰もがチューダーから何かがリリースされるとは考えていなかったことだった。そしてチューダーが最も得意とすること、つまり、リーズナブルな価格でベーシックな良い時計を提供しながら、信じられないほど先見の明のあるデザインであったことこそ、この時計を偉大な存在としたのだった。

 鮮やかなオレンジ色のクロノグラフ針や盾を象ったアワーマーカーなど、20世紀の偉大なクロノグラフデザインの一つに敬意を表したヘリテージ クロノは、Ref.7031 “ホームベース”から40年後に発表された。それは漆黒の回転ベゼル、および6時位置のデイト表示(今作でサイクロップレンズはないが)を特徴とした。

 さらには、マルチカラーのナイロンストラップが付属していた(もちろん今でも付いてくる)。人によっては、このようなストラップをオマケにすることは大したことではないと思うかもしれないが ― 結局のところ、オンラインで NATOストラップを10ドル以下で購入することができる。このストラップが象徴するものは、規模の大きい時計会社が市井の時計愛好家がやっていたこと、本当に望んでいたことに注意を払っていたことが十分明らかになった初めての瞬間だったことだ。そして、このナイロンの切れ端を素晴らしいオイスターブレスレットと一緒に提供することは、カルト的アイテムの認知度を広い層に拡散することとなった(以前なら、道行く人々の90%がNATOのストラップの時計を見たことがないと答えるとあえて断言しよう)。
 それも、彼らなりのやり方でである―チューダーのナイロンストラップは、NATOストラップとはまるで異なり、シャネルからバチカンまで一流顧客向けにストラップやリボンを生産しているフランスの伝説的な工場で作られている。バネ棒用のホールが2つ縫い付けられた、重ね折りする必要のない一枚物のストラップだ。

 ヘリテージ クロノの発表は、世界中の時計ファンに衝撃を与え、突然、世界中の熟練の時計コレクターたちがこぞって4000ドルのETAベースのチューダーを切望するようになった。 2009年、チューダーのマネージングディレクターに就任したフィリップ・ペヴェレッリと、2007年にクリエイティブディレクターに就任したダヴィデ・チェラートの2人を高く評価したいと思うが、この2年間で2人のことを多少なりとも知る中で、彼らは本当に「話のわかる」人たちだと思っている。彼らは耳を傾け、注意を払い、ロレックスとチューダーが共有してきた素晴らしい歴史を尊重しながら、物事を前進させていく時計を作っているからだ。

 さらに詳しく知りたい方は、チューダーの重要な日付を簡単に下の年表にまとめてみた(日本語訳は記事文末を参照)。

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ペラゴスを1週間着用する

 2012年はチューダーにとってダイバーズウォッチの当たり年だった。ヴィンテージウォッチからインスピレーションを得たヘリテージ ブラックベイモデルと、このペラゴスを発表し、ラインナップを一新したのだ。私はロレックスのダイバーズウォッチが大好きだ。その証拠に1972年製のロレックス Ref.5512、1962年製のロレックス Ref.5508、1974年製のチューダー スノーフレークの3本を所有している。私は、これまでに作られた全てのロレックスとチューダーのダイバーズウォッチの、様々な時代の個体を着用してきたので、私自身精通している分野でもある。しかし、私の好みはヴィンテージものに偏っているので、ペラゴスがよくできた製品であることはわかっていたが、私にとってのチューダーのダイバーズになるのはブラックベイだと思っていた。この先入観が見事に裏切られたのは、ペラゴスがクリーム色のパティーナのような暖かみのある色合いやカラフルなベゼルをもたないにもかかわらず、信じられないほどよく練られた造形、多くの"便利な機能"、そして紛れもなくツールウォッチとしての真の目的を備えていたからである。

ケース

 まずはケースの話をしよう。この時計は直径42mmのチタン製ケースを纏う。そう、チタンだ。これは、この信じられないほど軽量で耐久性のある素材から作られたロレックスファミリー初の時計だ。チタン製サブマリーナーやチューダーの既存モデルのどれかにチタン素材を採用する代わりに、チューダーに全く新しいリファレンスを創設することは理にかなっている。

 このケースは、本当に素敵なマット地にサテン仕上げが施され、想像を超えることに、豪華な面取り加工まで施されている。この面取りは確かに機械加工だが、気にする必要はないだろう。現代のツールウォッチのどの価格帯でも、これほど高い加工品質を拝むのは極めて稀であり、まして50万円以下で販売されている時計でそれが実現されているのは、実に素晴らしいことなのだ。

 チューダーロゴが彫り込まれたリューズは、先の尖ったクラウンガードによって保護されており、マット仕上げは擦り傷が目立ちにくい。直径42mmのサイズは、この時計に完璧なサイズ感を与えていると私は確信しているが、それは私が使い慣れたサブマリーナーよりも少し厚い印象だ。そのことがペラゴスの着用性を損なうかもしれないと私は懸念したが、それは杞憂に終わった。実際には、いとも簡単に私の袖口の下に収めることができ、オメガ、IWC、タグ・ホイヤーあたりのダイバーズウォッチと比較しても、その実力は申し分ない―おまけに500mもの防水性能を誇るのだ。

 ケースの左側には、ヘリウムエスケープバルブ(HEV)がある。当編集部メンバーのヒートンはこの機能の必要性について疑問を呈しているが、この時計には必然性のある機能だ。ロレックスがHEVの開発に貢献したことを忘れてはならない。もしペラゴスがチューダーの本格的なダイバーズウォッチであるならば、その歴史的信用を裏付けるためにも、ペラゴスに搭載されてしかるべきなのだ。

ダイヤル

 ペラゴスは、アワーマーカーとして12時位置に三角形、6時位置と9時位置に長い長方形を配する他、正方形を採用している。3時位置にはサイクロップレンズのないデイト表示がある。 本モデルとヘリテージ クロノがデイト表示上にトレードマークのサイクロップレンズを採用していない事実に基づき、チューダーはそのデザイン意匠を長兄にのみ相続させることに決めたと、私はあえてここで断言する。

 ダイヤルのどこにも "Pelagos"の表記が見当たらない。同じことが、ヘリテージ ブラックベイとクロノに当てはまる一方で、アドバイザーは確かに6時位置に "Advisor"の表記がある。全てのロレックスは、ダイヤル上にモデル名を表記することがお決まりとなっているが、このモデルにおいては、無表記はむしろ歓迎される。その代わりに "ROTER SELF-WINDING(ローター自動巻き)"の表記を見ることができる。少々余計な表記に見えるかもしれないが、初期のチューダー製ダイバーズウォッチに存在したダイヤル表記とわかれば納得だろう。

 このチューダーのダイヤルの最も素晴らしい特徴のひとつは、ダイヤルとフランジの一体化だ。ダイヤルの代わりにミニッツマーカーが表示されているだけでなく、各アワーマーカーがフランジに内接しているように見えることで、ダイヤルの立体感向上に貢献している。

 ペラゴス(それと、ヘリテージ ブラックベイ)の針は、往年のスノーフレークへのオマージュとして、夜光を放つスノーフレーク針を採用した。ペラゴスのダイヤルの発光は、信じられないほど強烈で、青みがかった光を放つ。

ベゼル

 ペラゴスのベゼル自体がかなり面白い。現代のサブマリーナーのベゼルのように、セラミック製だ。しかし、チューダーの場合、マットなセラミックインサートなので、ほとんど気づくことはないだろう。夜光塗料はセラミックの数字や目盛りに直接注入されている。12時の位置にあるのは、私によるペラゴスへの最もオタクっぽい批判の対象となるものだ。そこにあるのは、逆三角形の中に切り取られた円、つまりフェイクパール(人工真珠)のようなものだ。初めて見たときは、本当に気に入らなかった。私が思ったのは、真珠が好きだろうがなかろうが、人工真珠はダサいということだ(余談:将来的に私は真珠への偏愛についての記事を書きたいが、サイトのトラフィックに計り知れない急降下をもたらす懸念がある)。 

 私はバーゼルワールドで人工真珠をなぜ採用したかダビデに尋ねたが、彼の答えは合理的だった。天然真珠は割れ欠けしやすい(私自身確かに腑に落ちる部分ではある)が、視認性のために三角形の中に焦点を設けることこそが重要であったため(耐久性の高い人工真珠を採用した)―結局のところ、ペラゴスは、本格派ダイバーのための真のツールウォッチであることを意味しているのだ。その理由に異議を唱えることはできなかったが、私の美的感性には合わなかった。しかし、ペラゴスを着用して1週間後には、すぐにその違和感を克服し、今ではほとんど気にならなくなった。

 ベゼルは、カリッと美しく音を立て回転するが、ブレは全くない。

ブレスレット

 ペラゴスに付属しているブレスレットは、期待通り、最高につくりが良く、身に着けやすく、快適である。それはロレックスのオイスターブレスレットのように見えるが、総マット仕上げが施されている。お気づきかもしれないが、このブレスレットの特別なところは、革新的なクラスプにある。

 この新しい "フローティング "クラスプ機構は、ブレスレットが着用者の動きに合わせて伸縮可能だ。理論的には、これはダイバーのために設計されたもので、手首が水圧によって膨張したり収縮したり変化するのに対応する。実際には、それは日常的な着用を極めて快適にする― 特に手首を曲げたとき、あるいは、12時間ぶっ続けでコンピュータに向かって時計のレビューをキーボードに打ち込んでいるような場面で、だ。私が何を言っているか正確に伝わるよう動画をチェックして欲しい。

 スティールとチタンのブレスレットに加え、ペラゴスにはさらに、2本のラバーストラップが付属している―標準的な長さの1本とダイビングスーツの上から着用するために延長された1本だ。これは、チューダーの人々が「話のわかる」仲間であることを改めて証明している。ほとんどのダイバーはラバーストラップの時計を身に着けることを好むので、パッケージに含まれない理由はない。


オン・ザ・リスト

 ペラゴスは手首に装着しても、圧倒的ではないものの、存在感があり、目立つ。繰り返すが、私が使っている時計は、ダイバーズウォッチでもほとんどが39mmか40mmだ。42mmは私にとってバカでかいというほどではないが、着けた初日は自分の手首を見て「これはちょっと大きいな」と思わずにはいられなかった。しかし、500m防水ダイバーズを着けていることをすっかり忘れていたことに気がつくと、その印象もすぐに薄れた。

 私が本当に言いたいのは、この時計はチタン製のため十分軽く、ほとんど気づかなかったほどケースが薄いということだ(身に着けていることを忘れるにはあまりに巨大な、IWC アクアタイマー・クロノグラフとは異なる―私は1本所有しているのでよく知っている)。ペラゴスは、私の袖口の下に簡単に収めることができた―これは良い意味で私の予想を裏切った点だ。着けていることを忘れてしまうような時計は、優れたツールウォッチの証なのだ。


現在のチューダーと今後の展望

 チューダー ペラゴスは、優れたツールウォッチだ。おそらく、この価格帯では最高の時計のひとつだろう。実際、私は50万円以下で、500m防水を備えたダイバー用のより良い時計を列挙できる自信がもてない。ペラゴスのスイスでの小売価格は4100スイスフランだ。確かに、本機はETA社製自動巻きムーブメントを搭載しているが、1960年代と70年代のチューダー サブを含む多くのダイバーズウォッチもそうであった。

 私の元には既にETAムーブメントを搭載する廉価な他社製ダイバーズがあると、不平を言う否定派の声が届いている。しかし、ただのETAダイバーズよりも多くのものをチューダー版では手に入れることができる。非常に綿密に設計され、自然に着けることができ、どのような場面でも使用に耐え得る完全スイス製パッケージの、徹底して機能的なツールウォッチを入手できるのだ(この価格帯では多くの競合他社の時計でこれに比肩することはない)。よりスタイリッシュなダイバーズウォッチをお探しの方には、ブラックベイがお勧めだが、毎日身に着けて楽しみ、気にせずに過ごせる時計をお探しの方には、チューダー ペラゴスが断然お勧めだ。

 私の意見では、ペラゴスは、本物のダイバーズとツールウォッチの愛好家の両方が、再びチューダーに興奮するきっかけとなる時計だと思っている。ブラックベイとは全く異なる購買層にアピールでき、それこそがチューダーの2012年のダイバーズウォッチの素晴らしい点だと私は感じている。また、同社は、実際にロレックスを身に着けていなくても、歴史と美学を含む多くの共通の魅力を提供する点で、 "アンチ・ロレックス "と言って良い立ち位置にある。一部の人々には、それは歓迎すべき点である。

 現状、悪いニュースもある。ペラゴス、そして実際には全体のチューダーラインは、2013年2月現在、米国では販売されていない(編注:チューダーは2013年8月に米国の販売を再開した)。前述したように、ブランドが今ほど強くなかった2000年代初頭からこのような状態が続いている。

 まとめると、私はチューダーのペラゴスに夢中になった。ブラックベイも大好きで、近々レビューしたいと思っている。私は、これらの2本の時計に加え、ヘリテージ クロノを20世紀の偉大なスポーツウォッチに敬意を抱く人々に向けた非常にクールな時計だと思っている―とりわけこの価格帯において。今後ブラックベイをレビューした後で、夏用の時計としてチューダーのダイバーズウォッチを購入するつもりだ。私がその決断を下したときには、あらためて報告したいと思う。

チューダー ペラゴスの詳細についてはこちらから。

 また、サンプルのペラゴスを提供してくれたWatchonistaの友人にも感謝したい。この特集ページでは、我々のレビューをはじめ、いくつかのレビューを読むことができる。

また、ページの一番上にあるペラゴスの動画レビューもお見逃しなく。

チューダー年表(1926年~2012年)

1926年…商標“チューダー”をスイスの時計メーカー“ヴーヴ・ド・フィリップ・ヒューター”がハンス・ウィルスドルフの代理として取得。

1936年…ハンス・ウィルスドルフ本人が商標“チューダー”を取得

1946年…“モントル・チューダーSA”がジュネーブにて3月6日に設立

1947年…チューダー オイスター モデルの発表

1948年…初のチューダー専用広告の展開

1952年…チューダー オイスター  プリンスコレクションの発表

1957年…チューダー アドバイザーの発表

1964年…米国海軍向けにチューダー プリンス サブマリーナーを製造(2年間限定)

1969年…チューダー プリンス サブマリーナーとプリンス  デイデイトの発表

1970年…チューダー オイスター  デイト クロノグラフの発表

1971~1977年…チューダー オイスター  デイト クロノグラフ(手巻)の製造期間

1977年~1996年…チューダー オイスター  デイト クロノグラフ(自動巻)の製造期間

1991年…チューダー モナーク コレクションの発表

1996年~2006年…チューダー プリンス  デイト クロノグラフ(自動巻)の製造期間

1999年…チューダー ハイドロノートの発表

2007年…チューダーブランドのグローバル再参入

2009年…新ライン:ハイドロノート:ハイドロノートⅡ、ハイドロノート1200、グラマー、グランツアーの発表。キャンペーンのテーマ「パフォーマンスを追求するデザイン。エレガンスを極める技術」

2009年~2011年…ポルシェとのモータースポーツにおける“タイミング・パートナー”としてのコラボレーション

2010年…チューダー ヘリテージ クロノとグラマー ダブルデイトの発表

2011年…チューダー  ヘリテージ アドバイザーとファイストライダー クロノグラフ、フライバック・クロノグラフを搭載した新グランツアーのプレゼンテーション。クレア・ド・ロゼの発表。キャンペンテーマ:「Watch your style」

2011年…ドゥカティとの“タイミング・パートナー”としてのコラボレーションの開始

2012年…チューダー  ヘリテージ ブラックベイとペラゴスのプレゼンテーション