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In-Depth ニバダ グレンヒェン “ポール・ニューマン”リミテッドエディション - 頭痛のタネのないヴィンテージ

流行は再び巡る。

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我々がヴィンテージウォッチに真に求めるものは何だろうか? それは「良い時計」であることだ。もちろん、誰もが良い時計を求めるが、それだけではない。我々は何かとのつながりを感じたいのだ。過去と、おそらくは存在しなかった理想的な過去とのつながりを。良い思い出だったと思いたい。ヴィンテージウォッチを手にすることで、個人的な黄金時代とのちょっとした魔法のようなつながりを想像したいのだ。

ヴィンテージウォッチの基本的な問題点は、多くの重要な点において、今後起こりうるたくさんの頭痛の種があるということだ。パティーナの魅力的で年季の入った夜光は、実は時間の傷を覆うかさぶたであり、目を凝らして見ると剥がれ落ちそうだ。ムーブメントは順調に動いているように見えるが(“昔のように良く作られてはいない!”)、実のところ、主ゼンマイが固まっているのはあなたよりも年老いているからであり、冬眠中のヒキガエルと同じくらいのエネルギーしか生み出していない。ゼンマイが動いているのは、オイルが長い間ベトついたまま放置されていただけでなく、実際は完全に乾いてしまっているからで、軸からたくさんの金属が削り取られて最後に停止するまでは順調に動いているように見えるだけだ。

黄金時代のムーブメントが現代の時計に:バルジュー 23 VZを搭載したニバダ グレンヒェンの“ポール・ニューマン”。

なぜ“フォティーナ”があるか知りたいだろうか? それが理由だ。現実的にヴィンテージウォッチを集めるということは―もちろん時計としてよりも資産としての興味が強い場合は別として―絶滅危惧種である独立系時計メーカーとの関係を意味するという事実を理解し、受け入れなければならない。

しかしながら、ある人たちがこの問題を慎重に検討した結果、答え - 少なくともそのひとつ - は、現代にヴィンテージウォッチを作ることだと考えた。ちゃんとしたものを作りたければ、その外観を再現するだけでなく、ムーブメントにもヴィンテージのものを使わなければならないということだ。

パンダダイヤルとリバースパンダダイヤル。それぞれ25本ずつの限定品。

例えば航空母艦で米海軍がライバルにもっているような予算上の優位性があれば、ヴィンテージムーブメントを細部に至るまで作り直すことができるだろう。それが熱狂的な愛好家が望んでいることだ。最近では、オメガがその最も顕著な例だった。Cal.321は二度と復活しないということに、5711を5万本分賭けてもいいと思ったが、ここにきてこうなった

これには莫大なお金がかかる。大企業のような予算がない場合は別の選択肢がある。ニューオールドストックのヴィンテージムーブメントを見つけてそれを修理し、頭痛ではなく喜びの種にするのだ。ヴィンテージ調のケースとダイヤルに収めて、上手くいくように祈ろう。

このようにして、ニバダ グレンヒェンのバルジュー23 VZ “ポール・ニューマン”リミテッドエディションはできあがった。これは非常に面白い時計だと思っているし、5350ドル(約59万円)という価格よりもはるかに価値がある時計だと思う。

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ここからが本題だ。これらの時計は、シンガー社がロレックスのために作った、いわゆる“エキゾチックダイヤル”を再現しているため、“ポール・ニューマン”リミテッドエディションと称され(ほかの人ならシンガーのエキゾチックダイヤルのクロノグラフを、手ごろなブランドからずっと安い値段で手に入れることができる)、パンダダイヤルとリバースパンダダイヤルがある。これらは基本的にニバダのクロノマスター クロノグラフだが、ポール・ニューマンのエキゾチックダイヤルを備えており、最も重要なのは分解、整備、注油、ケーシングがなされたヴィンテージのバルジュー23 VZムーブメントを搭載していることなのだ。

バルジュー23は約60年にわたって生産された。

バルジュー23 VZは、スイスで生まれた最も有名で最も評価の高いクロノグラフキャリバーの一つで、1916年から1974年という信じられないほどの長期にわたり製造され、その後より振動数の高いCal.236に置き換えられた(1万8000振動/時に対し、Cal.236は2万1600振動/時である)。バルジュー23 VZにはさまざまなバリエーションがあり、そのなかには有名なバルジュー 72(12時間積算計を追加)や、私の個人的なお気に入りであるバルジュー 88(ムーンフェイズのついたコンプリートカレンダー)があった。バルジュー 23 VZの長い製造期間は、基本設計の堅牢性、信頼性、および精度の証であり、また世界で最も美しいクラシックなコラムホイールクロノグラフムーブメントの一つであることも忘れてはならない。

ニバダには50個のムーブメントがあり、25本ずつ2種類のリミテッドエディションが発売される。バルジュー 72は、実際にエキゾチックダイヤルのポール・ニューマン デイトナに使用されていたもので、ちょっとした歴史の記念になる。ニバダはエキゾチックダイヤルにも対応していて、ヴィンテージウォッチ愛好家の脳幹を刺激するような四角いインデックスと面白い小さなインダイヤルがついている。

こういったものが好きなら、この種のものを選んで間違いはないと思う。これはやや特殊な層に向けてアピールするものだ。まず、財布に6桁ドルの余裕があること。次に、一般的な意味でヴィンテージウォッチの愛好家である必要がある。そして、シンガー社のエキゾチックダイヤルを、その独自の美的価値において好きでなければならない(発売当時はトップ10入りする人気ではなかったが)。さらに、シンガーのエキゾチックダイヤルとポール・ニューマン デイトナとのつながりに興味をもち、5500ドルを時計購入の大海原に投じても構わないことだ。

この時点で、おそらくそんなに多くの人はいないだろうが、その人たちは自分が何を得ようとしているかをよく知っていて、ヴィンテージのクロノグラフムーブメントに実際に触れるという体験を大切にしている。そして、これらの時計がヴィンテージムーブメントを搭載したエキゾチックダイヤルのクロノグラフであり、実際にポール・ニューマン デイトナではないということは、これらの時計に興味をもつ人にとって大きなプラスになるだろう。矛盾したパラダイスなのだ。

ニバダ グレンヒェンは25本ずつ限定生産をする。Cal.1861搭載のスピードマスターが出回っている間はそれでいいというのであれば話は別だが、6000ドル以下で手巻きのクロノグラフが手に入るというのはほかでは考えられない。ヴィンテージを買って信頼性に賭けてみるか、この時計を買って現状ムーブメントのベターな信頼性と将来の修理の可能性を選ぶか、だ。少なくとも修理代は節約できるかもしれない。

ニバダ グレンヒェン “ポール・ニューマンリミテッドエディション クロノマスター パンダ:ケースは38mm × 12.65mm、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げの316Lステンレススティール。ラグ幅、20mm/16mm。アルミニウム製インサート付きノークリックベゼル。ダイヤルはスーパールミノバを使用したダブルプリント。ムーブメントはバルジュー社製Cal.23 VZ、29.50mm × 5.85mm、17石、1万8000振動/時、水平クラッチ、コラムホイール制御による2レジスタークロノグラフ、手巻き。パンダダイヤルが25本、リバースパンダダイヤルが25本の限定生産。価格は5350ドル(約59万円)。詳細はNivadaGrenchenOfficial.comをクリック。